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魔力の系譜 ~名も無き英雄~  作者: 胡麻かるび
第2幕 第3場 ―神秘の力―
74/322

Episode61 お嬢様の襲来


     ◆



 迷宮都市アザリーグラードに初到着した。

 第一印象はスラム。

 行こうと思わなければ絶対にわたしのような貴族が立ち入ることはないだろう街だ。


 世界が違い過ぎてメイドと執事の護衛がなければ入ることすら勇気が要ると思う。

 でも、この街にジャックがいる。

 わたしのヒーローがここにいる。


 意を決してそのスラムな都市に入っていった。



 アザリーグラードはその街の構造自体が迷宮となってる。その街を、執事のダヴィが先陣をきって案内してくれた。彼はストライド家の使用人リーダーで、オールバックに整えた髪に清潔な服装で今でこそ執事然としているが、使用人となる前は国の兵団の戦士だ。

 その武勲の数々は凄まじい。

 そんな彼が前を歩いてくれるだけで安心感が増す。



     …



 アザリーグラードの中心地は冒険者ギルドにあった。

 まずそこに寄って情報収集をする。事前にその筋の専門家には連絡してある。ジャックの目撃情報を伝えてくれた情報屋だ。冒険者ギルドで合流し、直接話を聞くことになっていた。

 その人物の話によると、ジャックと思われる人物はいつからこの街にいたのかは正確に分かっていないようだ。冒険者が多く、様々な人種の雑踏が入り乱れるこの街では似たり寄ったりの戦士が多くいるから、誰も目に留めないのである。

 だが、大会で注目されたら話は別だ。

 情報屋がその素性や冒険者としての能力を嗅ぎまわる。


 ジャックの特異的なところはその右腕と剣術・格闘の速さにある。女神によって授与されたとされる魔力無効の右腕の力、トリスタンさんに鍛え込まれた速さに特化した暗殺剣、アルフレッドさんに鍛えられた鋭い弾丸の拳。

 誰がどう文句つけたって近接戦闘に特化した戦士(ソルジャー)だ。


 しかし情報屋も驚いているのはその性格らしい。


 その少年は特に凶暴性を見せることはない。普段は同世代の友達と一緒に遊んでいることが多い。さらにはマーケットで1人で買い物をし、くだらない魔道具の失敗作を買い込んでは無垢な赤子のように遊んでいる姿が目撃されているようだ。

 そして意外にも、魔術師でもないのに日中は本を読んでいることが多い。

 戦士としての能力が高いわりに、やっていることは非常に多趣味で、自由奔放だということだ。


 夜は毎晩のように「シムノン亭」という酒場に訪れて、何かに絶望したかのように落ち込んでいたり、気持ち悪いほど1人でニヤついていたり、歳相応の情緒不安定さを見せているらしい。しかし、人柄はいたって人畜無害。迷宮攻略の野良パーティーでは、圧倒的な力を見せつけるようなマナー違反をせず、敵の事より人の事ばかり気にして戦っている様子も見せるらしい。

 悪い評判は一切ないようである。


「どうですか、お嬢様?」

「……わたしの知るジャックとは少し違うところもあるけど、でもそれっぽいところもある」


 ダンジョンで人の事ばかり気にして戦っている、というところが特に……。

 楽園シアンズに捕まっていた子どもたちを助けにきたときも、誰一人だって傷つけないように振る舞っていた。

 ジャックは優しい子だった。

 誰のことだって傷つけようとはしない。

 何をするにしても悪意がない。

 その出生までは知らないけれど、きっと幼少期から愛情を注がれて育ったからなんだろうと、なんとなく感じていた。


「今でしたらあるいはマーケットで買い物をしている可能性もあります」


 隣に立つメイドのリオナがそう提案した。

 着いた初日にそんなに運よく見つかるとは思っていないけど、物は試しだ。

 マーケットなら冒険者ギルドからそれほど遠くないようだし、行ってみてもいいかもしれない。



     …



 そしてその彼を、わたしは偶然にもすぐに見つけてしまった。

 その偶然は運命にも感じた。

 マーケット通りの冒険者たちの雑踏。たくさんの人たちが行き交う中で、その人影を見つけたのは赤い糸の存在すら感じてしまう。バカバカしいかもしれないけど。


 彼は数年前よりだいぶ背が伸びている。まだまだ伸びそう……。

 黒い入れ墨を施したような右頬の赤黒い魔族の刻印。シンプルな軽装備は、以前ストライド家がテーラーメイドした鰐革の黒いスニーキングスーツと同じような嗜好を感じる。

 そして端正な顔立ちに優しそうな目。


 間違えるはずがない。


 ジャックだ!


 わたしのヒーローがそこにいる!



「見つけたぁーーーーーーーーーー!!!!」



 なりふり構わずに飛び込んだ。

 長い長いわたしの想いがついに報われたような気がした。

 手紙を何度も書いた。

 届きもしない手紙を何度もだ。

 その都度、想いは勝手に膨れ上がった。


 目の前の彼はなんだか唖然としている。

 むくりと上体を起こしてその優しい目で見つめてくれた。

 


「ジャックでしょ?! この顔とこの右腕、間違いないわっ」


 わたしは意気揚々と問い詰めた。

 もう逃がさないわよとばかりに。


「ジャックって……」


 でもなんだかその彼は、その名前にピンと来ていないようだった。



     ◆



 訳がわからない事態に陥っている。俺がジャックという平凡かつどこにでもいそうな名前であるということは最近嫌というほど分かった。

 それだけなら良い。だが、突如として現れたこの黒髪美少女アイリーン・ストライドは、なんと俺の元恋人だと言い張るのだ。


 マーケットの端の日陰で、その彼女とシア・ランドールは、俺を挟んで睨みを利かせあっていた。さらにはそのお嬢様の付き人なのか、2人の男女が傍らに佇んでいる。

 ユースティンはこの手のやりとりは嫌いなようで、ささっとどこかへ消え去ってしまった。


「ロストさんは11歳の頃からこの街で過ごしています。それ以前から"恋人"ですか?」


 変わらぬ無表情を続けているが、その言葉から威圧感を感じる。シア・ランドールはアイリーン・ストライドの主張に抗議した。きわめて冷静に、きわめて分析的に。


「だから、そのロストってのは誰よっ」

「貴方がさっきから引っ付いている人のことです」


 アイリーンは俺の腕に抱きついて離れようとしない。お気に入りのぬいぐるみを手に入れたお嬢様のように。その柔そうな体を俺は突き放すことができないでいた。


「ジャックはジャックなんだからっ」

「ロストさんはもうここ3年ほど、ロストさんですよ」

「……ていうか、貴方は何なの?!」


 2人の言い合いがエスカレートする度に、俺に抱きつくアイリーンの腕がどんどん強くなっていく。この子、見た目以上に力が強いみたいだ。


「私はロストさんと一緒にこの街で過ごしてます」

「恋人だって言いたいの?!」

「………その可能性は無きにしもあらず、というやつです」

「はぁ? なにそれ」


 女同士の言い合いというのは怖い。声の甲高さが徐々に上がるアイリーンに、俺は少し恐怖心を感じていた。俺やシア、ユースティンのように事勿(ことなか)れ主義の人間とはまた別の人種だ。目的や狙いに対する執念のようなものを感じる。貴族の血筋とはこういうものなのだろうか。


「子どものくせにマセたこと言わないで!」

「私はこう見えてもロストさんと同い年ですよ。エルフの血でそう見えないかもしれませんが」

「エルフだかなんだか知らないけど、ジャックはわたしのものなんだからっ」


 理屈と情熱のぶつけ合い。

 こうなるとシアが可哀想に思えてくる。このアイリーンと云う子には悪いけど、俺はルクール海岸に漂着する以前の記憶がない。だから、その前にどういう関係だったかよく分からないけど、滅茶苦茶な理屈なのはアイリーンの方だ。シアは感情を抑えて、至って冷静に会話しようと務めてくれている。


「その、アイリーン、さん……」

「え!?」


 アイリーンは驚きの声をあげる。俺の驚くほど他人行儀な様子にびっくりしたのかもしれない。


「悪いんだけど、俺は覚えてないんだ、何も。この街の前ではどう過ごしていたのか知らない」

「う……」

「気持ちは嬉しいけど……ちょっと整理したい」

「……わたしのことも覚えてないの?」

「……うん」


 アイリーンはそこで初めて俺の腕を離した。人肌の温もりが離れて、シアには悪いけどなんだか残念な気もした。


「アイリーンお嬢様」

「……なによ」


 そこで脇に控えていた付き人の女性がしょんぼりする彼女に声をかけた。


「混乱している方々に嘘を伝えるのはよくありませんよ」

「……ッ! リオナまでわたしを咎めるつもり?!」

「いえ、そのようなつもりはありません。ただジャック様は覚えがない、というより記憶を失っているように見えるのですが。違いますか?」


 メイド衣装に身を包んだそのリオナと呼ばれる付き人の女性もアイリーンと同様に黒髪の美人さんだったが、髪を後ろでに纏めていてアイリーンのような豪華さはない。

 その女性が俺と目を合わせて一度、ウィンクしてきた。

 私に任せてください、と言わんばかりに。

 堅そうな口調だが、融通が利きそうなタイプの人らしい。


「そうです。記憶が抜けてます」

「今はロスト様と名乗っているのでしたら、そう呼ばせて頂きますが……ロスト様もご自身の記憶を取り戻したいとは思いませんか?」

「そりゃあ、取り戻せるなら……」


 その返事を確認して、リオナさんはアイリーンに向き直る。


「ということですので、お嬢様と少し一緒に過ごせば記憶も戻ってくるかもしれませんよ。お嬢様、そう簡単に諦めてはいけません」


 ごもっとも。別にアイリーンを邪見に扱いたいわけじゃない。俺の以前のことを知っている人ならむしろウェルカムだ。


「そ、そうよねっ!」


 アイリーンはその提案を呑んで少し元気を取り戻したようだった。


「ただ、元恋人という嘘は少々どうかと……」

「う……うるさいわねっ」


 顔を真っ赤にして反発するアイリーン。やっぱり元恋人という宣言は嘘だったようだ。そりゃあ10歳程度で恋人もくそもないだろう。そこまで想ってくれるのは嬉しいけれど。

 にしても強欲無鉄砲なお嬢様キャラの登場か。悪い子じゃなさそうだけど、また俺の平穏は奪われそうな存在が一つ増えたわけだ。


「いいのっ! わたしはジャックにキスだってしたことがあるんだからっ……それだったら恋人って名乗っても不思議じゃないもん。頬っぺたに一回だけだけど」

「え?!」


 そう言ってアイリーンは再び俺の腕にしがみついてきた。シアの方を睨みながら。

 頬っぺたに一回キスだと……この薄くて柔らかそうな唇が……?

 どれだけ記憶喪失前の俺はフラグを立てていたんだ。しかし、その程度ならシアにとっては取るに足らない過去の出来事だろう。特に相手にするほどでもないライバル宣言。

 だけどシアにしては珍しく、それに対抗するように口を開いた。


「私は唇に直接したことがありますけどね」

「はぁ?!」

「えぇ?!」


 そんな話は俺自身、知らない。

 一体いつの事だ?!



     ○



 アンファンさんに無理やりお願いして、バイラ火山への遠征にはアイリーン一行も同行することになった。結局その3人も合わせて、8人の大所帯パーティーでの冒険になる。

 長旅の3日前だと言うのに、アイリーンが現われてからの3日間は騒々しいを通り越してむしろ楽しかった。



 その3日間のほとんどの間、アイリーンは俺に付きまとってきた。

 まず朝起きたら部屋でアイリーンに寝顔を見られる。なぜ俺の部屋にと思うのだが、最近宿の女将さんは俺のことを面白がって無慈悲に扱ってくる。そもそもプライバシーなんて無くなっていたのである。

 そして金の力でアイリーンは俺に高級料理店で朝から豪勢な飯を振る舞った。


「さぁ、食べて!」

「……あ、ありがとう」

「ふふ」


 健気だ。しかも美少女だ。文句のつけどころがないほどに。

 飯もうまい。



 次に朝のトレーニング。俺が傍らで筋トレと剣の複製トレーニングをしている様子を見て、アイリーンは機嫌良さそうに眺めるのである。


「集中できないんだけど……」

「ごめんなさいっ」


 アイリーンはそれでも遠くの茂みから俺に熱烈な視線を送ってきた。



 それからマーケットをざっくり見て回る間も後ろから付いてくる。しつこいけど悪い気はしない。俺が注意深くある商品を値踏みしている最中のことだ。


「わたしが買ってあげるわっ」

「いや、いい。ここはぼったくりだから」

「いくらでも出してあげるわよ!」

「ぼったくりの悪質店で買っちゃダメだよ」


 気持ちは嬉しいけど、ぼったくり商品を購入するというのは本当に緊急時に必要な品物を見つけたときだけにしている。ぼったくり価格で買ってしまうとマーケット内でそのアイテムの相場が上がってしまう。そうすると他の冒険者の迷惑に繋がる。商人は嬉しいかもしれないが、一部の人が買い占めるのは良くない。



 そして迷宮探索のために冒険者ギルドに向かう。

 するとアイリーンは「わたしも一度連れてって欲しい」と言い出した。たまには浅い階層でのんびり戦うのもいいかもしれない。適当にアイリーンを庇いながら達成できそうなクエストを受付けから受注してきてアイリーンとパーティーを組んだ。


「わたしたちって相性の良いパーティーじゃないかしら?」

「さぁ……初めて組んだからよく分からん……」


 そしてアイリーンと2人でダンジョンに篭ってみたが、なかなかに戦えるみたいだった。ゴブリンやゴボルト、スケルトン程度だったら問題なく倒している。しかも剣筋がなかなか良く、魔法についても射出力は意外に高い。

 この子、けっこう才能あるな。ただのお嬢様ってわけじゃなさそうだ。


「その剣術はどこで覚えたんだ?」

「わたし? お爺ちゃんに叩き込まれたの! お爺ちゃんのことも覚えてない? マーティーン・ストライドって言うんだけど」

「さぁ……でもお爺さんは相当の熟練者だったんだってのが見てて分かる」


 荒くれの冒険者なんかよりも剣筋にブレがない。敵を倒すことよりも、敵を斬ること自体に執念を費やしたような太刀筋だ。倒された敵の切断面を見ても綺麗にすっぱり切れている。

 そして魔法も威力は高い。魔法で作り出した1つ1つの結晶自体は決して大きくはないけど。きっと魔力放出スキルを持ち合わせているに違いない。


 何よりも不思議なのはその武器だ。この辺りで流通しているブロードソードやグラディウス、グレートソードのように真っ直ぐな厚みのある剣とは少し違う。ショーテルやサーベルのように湾曲しているが、だがそれら以上に鋭い。


「その剣は?」

「これは我が家の伝家の宝刀!」

「え?!」

「冗談よ、お爺ちゃんが屋敷の武器庫から見つけて研いでくれたの」


 あまり見慣れない武器だった。細長く反り返っているが、とても威圧感のある剣だ。柄や鞘も特徴的で、グリップ部分が只の革じゃなくて編み物が巻き付いている。



 それから迷宮攻略を進めて、剣術以上に驚いたのは軽いフットワークによるアイリーンの体術だった。殴りや蹴りはそれほど得意じゃなさそうだが、近接での敵の攻撃の受け流し方、掌底による叩きつけなど、やっぱり素人のものとは思えない機敏な動きを見せた。


「ジャック、どう?!」

「いやどうって言われても、普通に強いとしか」

「ほんと?! やったー」


 相変わらず顔が近い。この子は本当にパーソナルスペースが狭い。不愉快ではないけど萎縮してしまう。

 これは追い掛け回されるとしたら覚悟しとこう。

 予想以上に振り払うのは難しそうだ。



     …



 日が暮れて、シムノン亭に訪れた。アイリーンは高級料理店に行こうと提案してきたが、これだけは譲れない。もはや俺の第二故郷になっているシムノン亭を欠かすわけにはいかないのだ。


 アイリーンはスイングドアを勢いよく開けて入り、興味深々に店内を見回して入っていった。

 中にいる冒険者はその見慣れないお嬢様の姿に目をぱちくりさせている。


 その後に続いて入る俺の姿を見て「スピードスターって女癖悪かったか?」「待て、あるいは貴族に護衛として雇われたのかもしれねぇ」と。

 そんな好き勝手なことを言い合っていた。

 今日はカウンター席じゃなくてテーブル席に座らせてもらった。

 俺は適当にアイリーンの分のオススメメニューも注文した。なんだかシアが初めて俺をこの店に連れてきてくれた日のことも思い出す。そのときも先に慣れていたシアの方がこうやって注文してくれたものだ。


「ねぇ、いつソルテールに帰るの?」

「ソルテール?」

「えっ……あ、そっか。何も覚えてないんだっけ」


 アイリーンはお上品に片手で口に手をついた。こんな清楚で快活なお嬢様とどこで知り合ったんだろう。貴族ということだし、普通に過ごしていたら巡り合う事も無さそう。

 あるいは俺の出生と何か関係が?

 ちょっと気になっていることを聞いてみることにした。


「なぁ、俺の家族を知ってるか?」

「家族?」

「俺に肉親はいるのかどうか知りたくて……」


 目の前のお嬢様はそのクリっとした大きな瞳をもう一段大きく見開いて、きょとんとしていた。そのあと少し目を細めて、うーんと考え込み始めた。


「知らないなら大丈夫だからそんな考え込まなくていい!」

「昨日は彼女(づら)したのにごめんなさい。わたしが知ってるのはリベルタの人たちの事よっ!」

「リベルタ……?」


 リベルタとはどこかで聞いた事がある。

 周囲の冒険者たちは"リベルタ"というワードを聞いて俺たちの方を見ながらザワザワと騒いでいた。


「リベルタ……それって確かこの街でも有名な冒険者パーティーだったような」

「そうなの?! あんな親バカ夫婦が?!」


 アイリーンの口ぶりはリベルタのメンバーとの仲の良さを感じさせた。そのアイリーンの声の大きさが周りの冒険者たちを余計にざわつかせた。


「リベルタの人たちと仲が良いのか?」

「仲良いのかって………そもそもジャックはそのメンバーだったんだからっ! 仲が良かったのはジャックの方よ」

「えぇ?!」


 俺が伝説的パーティーの一員?!


「なんでそんな驚いてるの?!」


 固まった俺の様子を見てアイリーンが取り乱したようにテーブルに手をついて顔を近づけてきた。垂れた長い黒髪がテーブルに置いた俺の手の甲を少しなぞった。


「リベルタのメンバー……」


 そうか、そこに繋がってくるのか。アイリーンのおかげで、この強さの秘密や、たまに脳裡に浮かぶ勇ましい戦士や魔術師たちの姿の秘密に近づけた気がした。


 シュヴァリエ・ド・リベルタ。

 これから向かうバイラ火山のダンジョンを初踏破したという伝説的パーティーだ。

 頭の中で忠実にイメージできるボルカニック・ボルガという燃え盛る炎の剣。

 何故俺がそれをイメージできるのか、その秘密に一歩前進できた。



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