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魔力の系譜 ~名も無き英雄~  作者: 胡麻かるび
第2幕 第1場 ―記憶探し―
54/322

Episode45 アザリーグラードの迷宮


 タウラスとの待ち合わせ場所までたどり着いた。待ち合わせ場所というのは地下迷宮への入り口になっている冒険者ギルドだ。


 ―――アザリーグラードの迷宮。

 巷では大迷宮と言われている。ダンジョンはどこにでもあるが、これほど地下深くまで続いているダンジョンはない。

 聞く話によると最下層が何層かも正確にはわかってない。ただ分かっているのは、最下層には「神秘の力」が眠っていて、それを手に入れたものは"世界を変えられる"らしい。

 なんで誰も手に入れた事がないのに、そんなことが分かっているのか?

 はて、俺にも分からん。

 シアがそう言ってた。


 あとこの迷宮には、他のダンジョンとの違いが3つある。

 一つは、地下へ進めば進むほど魔物は強くなるということ。

 一つは、この迷宮に住む魔物はその皮や骨などの素材自体が魔力を持っていて金になるってところ。

 最後に、この迷宮は日々構造が変化していて、攻略方法が安定しないということだ。

 そのせいで最下層までたどり着けたパーティーは未だにいない。

 その反面、常に新しい魔物が現れ続けるから新鮮味がある。

 だからこの迷宮でしか取れない素材が山ほどある、というわけだ。

 ちなみに魔族と魔物の違いだけど、魔物はモンスター。

 魔族は人種の一つ。

 俺は化け物じゃない。ちゃんとした人だ。


 冒険者ギルドは建物まるまる迷宮の入口を覆って管理している。

 まぁこの方が効率が良いんだろう。

 クエストを引き受けて、そのまますぐ迷宮へ入っていける。さらには野良パーティーを組む冒険者が多いから、手軽に手続きして迷宮に入り、脱出後にはすぐ解散という流れが簡単にできるようになっていた。

 俺はシアと二人で、待ち合わせの時間よりも早めに着いていた。


 冒険者ギルドの中はかなり賑わっている。

 受付のカウンターが何か所も並んでいて、そこに並んで立つギルドの事務職員の人もベストやジャケットに身を包み、小奇麗な正装姿だった。

 受付には何種類かある。

 冒険者パーティー新規登録の受付カウンター。

 クエスト受注カウンター。

 その他諸々。


「すごいな」

「冒険者の街の冒険者ギルドですから」


 それもそうか。

 言わば聖地ってやつだ。


「野良パーティーの場合、その場でパーティー登録するのでメンバー全員の情報を用紙に書かなければいけません。これはけっこう時間のロスなので、早めに来て自分たちの記入を済ませておくとリーダーの印象がいいです」


 なるほど。

 この子、世渡り上手なんだな。

 シアは、すみませんとカウンターに背を伸ばして受付に声をかけ、パーティー登録の用紙をもらってきた。今日の彼女は髪を後ろで高い位置で一つにまとめてポニーテールにしている。天使がさらにワンランク上の天使になった。俺が見惚れているのも気にせず、シアは用紙を記入台に乗せて俺に羽根ペンを渡してきた。


「字は書けますか?」

「俺の知ってる字でいいなら」


 用紙はリーダー欄、メンバー欄に分かれている。


 =====================

 パーティー名|

 リーダー名 |

 メンバー1 |        (   )

 メンバー2 |シア・ランドール(弓師 )

 メンバー3 |  ロスト   (拳闘士)

 メンバー4 |        (   )

   …

   …

 =====================


 こんな感じだ。

 括弧内に職業を書くらしい。野良の場合はパーティー名を無記名で出せば、勝手に受付の人が野良と判断してくれるようだ。


「ロストさんの場合、その化け物じみた能力は隠す方向でいきます」

「うん」

「なので極力、派手に戦わないでください」

「はぁ? せっかくダンジョンに入るのに黙って見てろって?」


 シアは用紙の括弧の部分をトントンと指差して、俺の方を見た。


「今回ロストさんは拳闘士という設定ですね」

「そうだ」

「拳闘士は1対1の戦闘が得意なので、リーダーからは特に連携を指示されることが少ないです」


 あ、それいいな。

 フリーで動けるなんて気楽な職業じゃないか。


「ですが、連携が取れない人という印象を与えがちなので野良では毛嫌いされます」


 命のやり取りをしてる中で協調性がない奴が紛れこんでいたら……。

 まぁ確かに嫌だな。ってことはシアが俺を拳闘士だと紹介したのは、タウラスの顔色を見て拳闘士でも誘い入れてくれると思ったからか。さらには実際の潜入時にあまり注目されないポジションを確立するために?

 気転が利くな。

 ご両親はさぞ頭の回転の速い人だったんだろう。


「シアはなにをするんだ?」

「私は弓師なのでサポーターでしょう。主にフリーの敵へ牽制してヘイト管理します」


 これから必要になりそうだ。

 役割はしっかり覚えておこう。

 近接で戦う戦士は、アタッカーやタンクとして立ち回るケースが多い。生命力と筋力、敏捷のバランスを見て、殲滅役か壁役かに分かれる。

 弓師はアタッカーかサポーター。サポーターはいわば足止めや複数の敵の誘導役。

 魔術師は得意とする魔法によって違うが、アタッカーかバッファーかヒーラーといった感じだ。



     ○



 そんなこんなでタウラスとも合流して、他にもあらかじめ誘われていた4人ぐらいのメンバーが加わった。合計7人の野良パーティーを組み、さっそく迷宮に潜ることになった。かなりの大人数だ。

 パーティー構成はタウラスがタンク役でリーダー。

 それからアタッカーの剣士1人、斧術士1人、魔術師1人。

 ヒーラーの魔術師1人。

 シアがサポーター兼ヒーラー。俺も一応アタッカーということだが、シアの忠告通り、なるべく戦わないように緩く立ち回ることにする。


 パーティー登録にはマナグラムが必要だった。クエスト受注やパーティー登録にはこのマナグラムの情報が個人情報として扱われるらしい。俺のマナグラムを受け取った受付の女の人がステータスを見てぎょっとしていた。

 やっぱりこの反応は俺のステータスの異常性が窺い知れる……。



     …



 いざ、潜入!

 迷宮内部の1層、2層は大したことなかった。

 出てくる敵もネズミやコウモリのモンスター。

 数も少ない。ここら辺に関してはメンバーもそれぞれ適当に葬り、数の暴力でさくさくと進んでいった。俺が初迷宮という感動を噛みしめる間もない。

 3層も簡単であることには変わりなかったが、この辺からヒト型の敵が現れ始めた。ゴブリンやコボルトだ。棍棒やら武骨な剣を扱うゴブリンもいて、集団で無闇に襲うというより戦術が試される。アタッカーの面々は、何度かゴブリンを斬りつけて余裕で勝利を納めていた。

 

「ふん、準備運動にもなりゃしねえや」


 大きな斧を持った斧術士が、悪態をつく。

 一息ついたのか、肩に斧をかけて唾を吐きつけた。

 でも、なんていうかすっごく低レベルに見える。後方からいろんな人たちの戦いをぼーっと眺めていたが、迫力もないし、スピード感もない。

 タウラスの戦い方もすごく普通。

 教本通りの剣術って感じ。

 まるでゴブリンとチャンバラごっこでもしてるみたいだった。


「タウラス、こんなに連れてくる必要あったのか?」

「スケルトンの数が多いらしいからな。スピードあげるにはメンバー揃えた方がいいと思ったんだ」

「まぁリーダーがそう言うなら別に文句はねえがよ。ずいぶん手持ち無沙汰なやつがいるようだ」


 斧術士のおっさんは後方にいる俺やシア、もう一人のヒーラー魔術師の方をちらりと見た。お前らは要らないと、視線で語っている。

 まぁそうだろうよ。

 俺も迷宮がこんな余裕だとは思ってなかった。

 完全に人員が余っているのは間違いない。


「今回の取り分は均等で約束してる。不服なら隅っこで休んでてもいいぜ」


 タウラスはそんな威圧してくる斧術士に対しても飄々として答えていた。


「けっ、せっかく来てんだ。俺は戦いてえ」

「なら頼む。あんたが暴れてくれりゃ俺たちも楽できる」

「……しゃあねぇなぁ」


 文句を垂れていたおっさんだったが、おだてられて気分がよくなったのか頭をぽりぽりと掻いて再び歩き始めた。怖そうな人だけど内面は良い人そうだ。



     …



 それから4層、5層と進んでいって、ゴブリンだけじゃなくてスケルトンも現われはじめた。その名の通り、骸骨のモンスターだが、剣を振るうやつもいれば弓を射るスケルトンもいた。

 さらには敵の数も多くなってきている。

 パーティー7人に対して敵が10体~14体くらい湧いてくる。この辺りからそれぞれの役回りが必要になってきた。傷を負うアタッカーも増えて、ヒーラー役の2人が魔力を少しずつ消費し始めた。殲滅スピードが落ちているんだろう。

 俺もとりあえずタイマンの戦いに参加してみた。

 スケルトンが剣を振るうので、ひょいと躱して剥き出しの肋骨に右腕で殴ってみた。―――すると、一発でスケルトンがバフンと骨粉撒き散らして爆散した。骨が一瞬にして骨粉に変わる感じ。

 なんだこれ、めちゃくちゃ楽しいぞ。


 周囲のメンバーを見てみたが、スケルトンとの攻防に苦戦して他の戦闘に注目する余裕はなさそうだった。

 俺は調子に乗り出した。

 とことことスケルトンに近づいて殴る。

 ばふんと骨粉に変わる骨。

 それを何回も繰り返す。

 ご覧ください、奥様。

 これが噂の新型骨粉製造機ね。

 農作物の肥料に、これは一家に一台欠かせませんね~。

 でもお高いんでしょう?

 いえいえ、それがなんと購入量は無料。

 衣食住の提供をするだけで、いつでも骨を骨粉にしてしまいます。

 こんなキャッチーな宣伝で俺の衣食住も確保できるのでは……。


 ――――突然、ギン、と空気を切り裂くような音が横切る。

 わくわくしながら何体目かのスケルトンに近寄った時のことだ。

 いきなりかまいたちにでも襲われたみたいに、強烈な突風のような何かが目の前を通り過ぎていった感じだ。正体は見えなかった。それで気づいたときには、目の前のスケルトンの胴体部分がばらばらに砕けて一撃で絶命していた。突風がやってきた方向を向くと、そこには弓を左手に握りしめて、じとーっとした目で機嫌悪そうに睨むシアの姿があった。

 なんだ今の?

 シアが弓矢でも放ったのか?

 矢なんて一本も見えなかったけど。


 戦闘がひと段落ついて、俺はシアの方に近づいた。


「なぁ、さっきのは―――」

「ロストさん、派手に戦うのは無しでお願いします」

「は、はい」


 なぜか恐怖心を感じて素直に返事をしてしまった。

 怒ってんのか?

 ……多分、彼女なりの忠告かな。

 あれはちょっと派手でしたよ、みたいな。

 確かに1人で何匹も倒してたら目立つか。

 ありがたく忠告は受け取っておこう。



     …



 そしていよいよ6階層。

 別段、5層と変わった様子はない。

 出てくるのはスケルトンだけだ。

 俺は大人しく1体か2体倒す程度で我慢した。

 しかもゆっくりだ。

 ゆっくり倒す。

 ガラス細工に触るようにそっと敵の攻撃を受け止める。

 シアにまた忠告されたら今度こそ怒らせてしまいそうだし。


 退屈なので、こっそりと自分自身の能力を試してみることにした。森のベヒーモスを葬ったときに自然にできたあの剣の生成術。スケルトンが持つ剣を見ながら、ダンジョンの地面から"同じ剣"を作り出してみた。

 形は一緒だが、スケルトンが持つ錆びた鉄製の剣と違って、土製で赤黒い線が刀身に張り巡らされている。

 完全に一緒にすることはできないみたいだが、形を真似て作ることはできるらしい。複製するような感覚だ。見たものを頭でイメージし、地面にその剣が埋まっているイメージを強める。そうすると何か力が集まって生成されるみたいだ。


 それを振るって、スケルトンと戦ってみた。

 一回試しに剣同士を突きあわせてみたら、剣を握るスケルトンの右手が吹っ飛んだ。俺のこの能力には爆破機能でもついてるんだろうか?


 ―――ギンッ、とまたしても"あの突風"が吹き抜けた。

 同じ光景にデジャブが走る。

 しかも今度はスケルトンに向けてじゃない。

 俺の作り上げたその剣自体に、その突風はぶち当たった。


「うおっ!」


 何かが俺の土製の剣に突き刺さり、ばちばちと音を立てて俺の土剣はボロボロと崩れ去った。それと同時にその"何か"は、ぶわっと風を巻き起こして姿を現した。

 それは一本の矢だった。

 何の変哲もないただの矢。

 シアの方を見る。

 今度は不機嫌そうな顔、なんてもんじゃない。

 明らかに怒りの表情を向けている。

 こんな剣一本にすら矢を命中させる技術。

 すわ怖ろしい。

 まぁ、それはさておき―――。


「シア」

「ロストさんっ、あなたは拳闘士なんですから剣は禁止ですっ」


 小声ながらもちょっと息を乱して俺に怒りを向けるシア。

 普段、冷静な子がこう珍しく感情を見せると可愛いもんだな。


「それより今の矢は?」

「なんのことでしょうか?」

「弾道が見えなかった」

「それは気のせいというやつです」

「いや、気のせいじゃない」

「速すぎて見えなかっただけでは?」

「刺さった直後も見えてなかったぞ」

「………」


 シアは観念したのか、言い返すことはなかった。


「あとで教えます」


 それだけ言うと、先行くパーティーの後をとことこと追いかけて行ってしまった。

 不可視の矢。

 ……なにかの魔法か?



     …

  


 クエストはスケルトンの亜種「メタルスケルトン」の骨50本、頭蓋骨25個の収集だ。メタルスケルトンってのは最近出没したらしいが、その骨は普通の骨とは少し違って雷魔法の魔力を宿していて利用価値が高いとか。

 6層の入り組んだ奥地まで辿りついたとき、目の前にメタルスケルトンの大群が現れた。優に三十体くらいはいるだろう。


「こいつらだ! 狩るぞ!」

「おうよ!」


 リーダーのタウラスが先陣を切り、そこからアタッカーの剣士たちが続いた。勇ましい戦士たちが駆ける。

 でもなんというかこう、絞まりがないんだよな。

 だらだら駆け寄って戦い始める感じ。

 レベルが低いように感じるのはそういうところだろうか。

 さらにメタルスケルトンの剣技はスケルトンよりも数段格上だった。

 一体倒すまでにけっこう時間がかかりそうだ。

 あとアタッカーの魔術師も長々と詠唱してから炎魔法やら氷魔法やらを放つわりには、大したダメージを与えられていない。数が多いだけにかなり苦戦している。

 一体を狩るのに時間が掛かっていて、余ったメタルスケルトンが複数で一人の冒険者に襲い掛からんとしている所だった。


「シア、これってけっこうまずいんじゃないのか?」

「まずいですね」

「パーティー側がやられる、ってことは?」

「ありえます」


 戦力バランス的に三十体のメタルスケルトンを駆逐できるほどの状態じゃなかった。意気込んでいた斧使いのおっさんも、メタルスケルトンに振り回した斧を止められていた。


「どうする?」

「まぁ見ていてください」


 おや、頼もしい少女だ。


「ちょっといいですか?」

「はい?」


 シアは近くにいたヒーラーの魔法使いに声をかけた。

 この魔法使いも女の子らしい。

 この子も若そうだ。背丈も小さいし、童顔。心配そうにパーティーの成り行きを見守りながら、懸命にヒーリングをかけ続けていた。


「私は一時、アタッカーになります。ヒールは間に合いそうですか?」

「はい……なんとか」

「すみません。魔力が足りないときはこれを使ってください」


 シアはその子に魔力ポーションを二本くらい渡した。

 それでこっちに戻ってくると、普通に弓矢を構え始めた。


「ロストさん」

「なんですか、シアさん」

「私には空圧制御という能力があります」


 そういえばマナグラムを見せてもらったときにそんな能力が載ってたような気がするな。


「私は大して優れた弓師じゃありませんが、その特異な能力で弓師としての特性を引き伸ばしてます」


 シアは地面すれすれまで腰を低く落とし、ぎりぎりと弓弦を引いて狙いを定めている。その周囲に風が寄り集まってきた。その風はシアの構える矢に集まって、纏わりついた。

 徐々にその風も強さが増し、気流が邪魔をして矢が見えなくなっていく。


「このように矢を見えなくすることもできます」


 それがさっきの不可視の矢の正体か。


「あとは空気を圧縮することで威力も上げられます」


 森で初めて出逢ったとき、確かにこの子が放つ矢は凄まじい威力を持っていた。大砲でも打ち込まれたかと思うほどだ。

 その正体もこれか。

 ある程度、調整が完了したのか、弦から手を放して弓矢を放った。放たれた矢は強烈な音を立てながら、高速でフリーのメタルスケルトンを一撃で貫いた。一発で倒れるメタルスケルトン。


「おぉ! すごいなっ」


 シアはそれだけでは満足しなかった。それから何本も弓矢を構え直し、次々とメタルスケルトンを殲滅していく。

 シアが本気を出してから殲滅の速いこと速いこと。

 一体一体メタルスケルトンを駆逐しながらも、他のメンバーが苦戦している時は不可視の矢でメンバーに気づかれないようにサポートで矢を撃ち込んでいく。標的を何回も変えるなんて器用なものだ。

 俺のことを化け物呼ばわりした本人が、一番化け物じみた技量の持ち主だった。……むしろこの子一人で十分だったんじゃないか?



     ○



 さくさくとメタルスケルトン狩りは終わった。

 メンバーは予想以上の強敵に混乱していたせいか、シアがそのほとんどを駆逐していたという事実を知る事はなかった。みんなで力を合わせているうちに気づいたら事が終わっていた程度の感想だろう。


 迷宮を脱出し、リーダーがクエスト完了報告のために収集した素材を受付カウンターに渡してきた。報酬は1人当たり7000ソリド。金貨7枚である。確かに何だか物足りなさが残る……。

 俺なんか何もしてないからいいものの、斧術士のおっさんなんかクレームもんじゃないのか―――と思っておっさんを見てみたが、黙って報酬を受け取ってどこかへ行ってしまった。

 こんなもんだと納得しているのか。

 あるいは無事に帰ってこれたことに安堵しているのか。

 多分、後者かな。


「今日はありがとな。ちょっと人集めすぎて分け前が少なくなっちまったかな?」


 タウラスは俺とシアに最後声をかけにきてくれた。


「いえ、大金です」

「ははっ、そういってもらえるとリーダー役の俺も気が楽ってもんだ」


 タウラスはシアの返事を聞いて満足そうにニカっと笑っていた。本当に人当りの良さそうな人だ。さっきの斧使いのおっさんみたいな威圧感がないし。


「俺はよくシムノン亭の酒場にいるからまた気が向いたら声かけてくれ」

「はーい」


 そういうとタウラスも冒険者ギルドを出て行ってしまった。

 これにて野良パーティーは解散だ。

 あっさりしたものだ。

 後腐れない感じが気楽だな。


「どうでした?」


 シアに声をかけられる。


「まぁこんなもんかって感じ」


 今回の野良パーティーに俺の知り合いが紛れ込んでいる様子もなかった。レベルが低く感じられるってことは、もうちょっと上級者向けの野良パーティーに入り込んでもいいかな。

 そっちの方が知り合いもいるかもしれない。



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