Episode255 三番目の警告
敵の魔力切れを誘うのが唯一の攻略法だ。
日が経てば経つにつれ、エンペドの魔力が回復して勝率は下がっていく。
それなら始めから時間は残されてなかった。
最後の作戦会議をした。
会議といっても決行するのは俺一人だから知恵を絞ってもらうだけになる。
だが、"一人で戦う"というのは気楽でもあり、作戦も山ほど捻り出せる。
元より単独行動は俺の得意分野だ。
知恵を捻り、活用できそうな戦術を試した。
必要な道具から先に作製に着手してもらう。
僅かな時間で絞り出したものなんて、大したものではないかもしれない。
でも今は藁にも縋る思いだ。
使えるものは何でも使え。
「時間魔法ってのは術者に制限はないのか?」
サラマンドがボルカニック・ボルガの本体である筒をこね回しながら尋ねた。
「そうだな……触れたものは魔法を共有することになる。向こうからの攻撃が当たったら否が応でも気づくはずだ」
「ふむ。知らないうちに死ぬことは無いか」
「まぁ即死したら、そういうこともあるけど」
「そういう事なら首は死守しないといけない」
時間魔法で自由を奪い、首を刎ねる……。
エンペドだったらやりかねない。
鎧は必須だろう。
特に右腕と左足以外の生身の部分は。
防具は急いでグノーメに造ってもらってる。
数時間で造れる物なんてたかが知れてるが。
まぁ、無いよりマシだ。
サラマンドはボルカニック・ボルガに魔力を通して剣の刀身を作り上げると、すぱりと自らの手首を斬りつけた。
どくどくと鮮血が溢れ出る。
それを投げ出されていた皿に落とした。
「何してんだ!?」
「竜の血は傷の治りを早くする。毒気を払う浄化の作用があるんだ。致命傷を負ったら飲むといい」
俗に云う、回復薬みたいなものか。
背後からグサリとやられても、これをガブ飲みして傷を治せる――のか?
傷の治りが早くなるってどの程度だろう。
「一気飲みはお勧めしない」
「どうして?」
「中毒になる。竜の血が傷口から浸食して硬質化する。鱗みたいになるんだ」
「竜の鱗……かっこよさそうだな」
「何言ってるんだ。体が動かなくなるぞ」
皮膚の伸縮性がなくなるって事か。
ふーむ……。案外それも作戦に使えるかも。
何はともあれ回復薬として持っていこう。
運が良ければ時間魔法一回分は対処できる。
刺されたらエンペドを掴み、静止した時間を共有する。こっちが先に死なないように火竜の血を飲み続けるとか……。
名付けて『肉を切らせて骨を断つ』作戦。
けっこう際どい作戦になる。
それに急所を狙われたら終わりだ。
分かりやすいくらい"此処を狙ってください"と、無防備な箇所を体の何処かに空けておいた方がいいだろうか。
…
屋外に出てみる。
防具作成も順調に進んでいた。
順調に……と言っていいのか。
グノーメが汗を拭い、満足げにそれを眺めた。
「……これはいったい」
「短時間じゃこんなもんしか出来ねえぞ」
「上出来だと思います」
「思ってないな?」
「まぁ、ただの鉄板にしか見えませんから」
地面に投げ出されたのは鉄の盾。
と言うのもお世辞に聞こえる、ただの鉄板。
「こいつは土魔法の『伸縮』が付与された魔道具だぞ。これに使う素材集めに時間を取られた。見た目はアレだが……まぁ実用性特化だと思ってくれ」
「伸縮? 何ができるんですか」
「直径と厚みを変えられる」
「それだけ!?」
グノーメは不機嫌そうな顔した。
馬鹿にされたと思ったらしい。
「大事なことだ。盾ってのは用途によってデカさや厚さを変えて造るもんだからよ。この盾は一枚でどんな状況でも対応できる優れモノだぜ」
「はぁ……無いよりマシですが」
「信じてねぇようだな」
グノーメは伸縮の盾を取り、手に嵌めた。
魔力を込めて、可変の精度を試している。
そして遠くに待機していたリアを呼びつけた。
リアは遠くから小さな魔力剣を生成して構える。
魔力不足でも『心象抽出』なら余裕あるらしい。
「よし、こい!」
グノーメは伸縮の盾を極限まで広げ、薄く広く展開した。
リアはそこに無数の魔力剣を飛ばした。
甲高い音を響かせ、剣の弾幕をすべて防いだ。
「次はアレをやれ!」
リアはグノーメの合図で魔弓を生成した。
あれは『魔砲銃』だ。
遠距離射撃に特化した攻城の魔弾。
それを構えて赤黒い魔弾を唸らせる。
グノーメは盾を極限まで分厚くさせた。
同時に、盾の範囲は小さくなった。
「行きますよ」
最大出力ではないとはいえ『魔砲銃』は城一つ吹き飛ばせるほどの威力を孕んだ神性の魔弾だ。
それを真っ向から食らったら……。
リアは弓弦を放し、魔弾は真っ直ぐグノーメの構える伸縮の盾を打ち抜いた。
ギィィインと音を立てて盾と弾が押し合う。
しばらく拮抗し合った両者。
後方へ押され、地面に踏ん張った跡をつけたグノーメだが、それでも魔弾を止めて防ぎ切った。
「すごい……」
「ほらな。威力のある攻撃を防ぐ時には盾を厚くして、五月雨の攻撃には盾の直径を拡げる。これだけでも十分実用性が跳ね上がるぞ」
「ありがとうございます!」
無いよりマシとか言って申し訳なかった。
やはりグノーメは様付けが相応しい。
知恵と才能のある賢者様だと思う。
盾以外にも防具をお願いしていた。
所在を尋ねるとアンダインとティマイオス、ケアが持ち出し中だそうだ。
頸当て、胸当て、腰当てはケアが。
左腕用の篭手をアンダインとティマイオスが。
二人が遅れて防具を持ってきた。
何か加工してきたそうだ。
アンダインは意気揚々と篭手を見せた。
それは篭手というよりもグローブと言った方が正しいかもしれない。
「篭手の中にアクアラム・ボルガを忍ばせた」
「ボルガを忍ばせた?」
「応さ。エンペドとは魔力を削り合う持久戦に持ち込むのじゃろう? 『氷の杖』はそれのみでも水や氷を操るが、魔力消耗を減らす恩寵の杖としても功を奏する。魔術を放つときには必ず是を通すことで、その体の魔力をなるべく節約できる故な」
それで篭手に忍ばせたのか。
魔法を放つのは基本的に"手"からだ。
どんな魔法を使うにしても、アクアラム・ボルガを通して使えば、魔力もほぼ無尽蔵になる。
「私のケラウノス・ボルガも同じですわ」
ケラウノス・ボルガも篭手に組み込んだらしい。
よく見るとグノーブ状の鉄篭手の、手首に当たる部分から二本の硝子の筒が後ろに向けて突き出している。
この二本がボルガ二つか。
懐かしい。『スレッドフィスト』を思い出す。
「ロクリさんはどういう意図で?」
「ケラウノスは雷槍ですが、私はこれを電磁の網として防衛手段に活用してましたの。……まぁ、反魔力属性には役立たないかもしれませんが、何かの飛び道具から身を守る結界程度にはなるでしょう」
それはかなり活用の余地はある。
盾で防ぎ切れない攻撃を魔法防御で防げる。
電撃のシールドを周囲に展開か……。
ロマン溢れるな。
盾や篭手は見た目が武骨なものになりそうだ。
でも性能は自信もっていい。
なんたって、これらの素材は『アラクネ』にも使われていた超合金。半魔造体の強力な打撃にも耐えるということは、俺とグノーメとの砂上戦で実証済みだった。
「ジェイクさん……私の弓は、もしかしたら役に立たないかもしれませんが、それでも良かったらぜひ持っていってください」
高性能の盾と篭手を手に入れて興奮していたところ、シルフィード様が控えめな様子でエアリアル・ボルガを差し出した。
痛めて包帯を巻いた手が痛々しい。
エンペドにやられたそうだ。
「シルフィード様……」
言いたいことは分かる。
俺は弓を扱ったことはない。
エアリアル・ボルガが必中の弓でも、戦いの中で、俺がもたもたしながら弓を構えていたら、隙だらけで不覚を取るだろう。
「これは運命樹の枝からエトナさんと二人で選んで創りました。妖精王や亡くなったクレアティオの民の形見のようなものです」
「そんな大事な物だったんですか」
エアリアル・ボルガには未来でも助けられた。
作製の経緯までは知らなかった。
「仇を取って欲しいとは言いません。ただ、貴方がエンペドを倒す勇姿を、この形見に焼き付けてほしい。だから持っていってほしいんです」
「もちろんです」
差し出された運命樹の枝を握りしめた。
俺自身がエンペドに一矢報いる。
ピンチの時、風弓に込められた想いが何かの形で守ってくれるかもしれない。
○
そのさらに数時間後、ケアが戻ってきた。
いや、リピカと言うべきか。
リアと二人で大きな胸当てや腰当て、頸当てを家に運び込んだ。
「何してたんだよ」
「こちらも鎧に魔改造を加えてました」
魔改造。
二人が有する、所謂"神の力"が宿ったのか。
そんなこと言われると期待してしまう。
でも、鎧には手が加えられた様子がない。
盾や篭手のような浪漫溢れる秘密兵器が隠されているようには見えなかった。
「外側じゃないです。"内側"です」
指摘されて、胸当てや腰当ての内側に回る。
そこは俺自身が体を接する部分だ。
超合金で出来た綺麗な板金の内側。
そこに『魔族文字』が刻印されている。
それはもう、びっしりと。
隙間がないほどに歪な黒の塗装が施されていた。
「これは……」
まるでこれは『アーカーシャの系譜』だ。
牛皮紙に書いたのではなく、鎧に刻んだのか。
「イザイア。私からは三つ、エンペドとの戦いで心得ておいてほしいことを助言しておくわ」
まだ整理できない段階でケアが話を進めた。
禍々しい鎧の内部から目を反らしてケアに向き直った。
何か言いたげだ。
悲哀に満ちたような、寂しげな青い目。
なんだろう。そんな目を向けられると、まるで弔われる死者になった気分だ。
「一つは、貴方にはエンペドを殺せないという事」
これから戦いに向かうのに酷い言い様だ。
確かに勝てる見込みは限りなく低い。
それでも、これだけ前向きに頑張ってる。
冒頭から否定されても士気が下がるだけだ。
「倒すつもりでやるよ」
「それはもちろん。私も応援している」
「じゃあ、何でそんなこと言うんだよ」
「今のエンペドは誰にも殺せない。不死身なの」
「ああ――」
それは考えないようにしていた。
目を背けていた事実だ。
半分、神となったエンペドは不死身なのだ。
以前の俺がそうだったように。
年老いることも死ぬこともない。
魔力を切れさせるとしても、それは一時的な弱体化を誘うだけであって殺すことにはならない。
俺の場合は『指輪』がイザイアの魂を引き剥がす鍵だった。
でもエンペドにはそんな弱点はない。
鎖がなくとも安定した魂。不死身の肉体。
腕を切り離しても再生する。
体を切り裂いても修復する。
文字通り、完全体というやつだ。
「まずこの一つを念頭に入れておきなさい」
「それ、死を覚悟しとけと言ってるのと同じだぞ」
「いいから続きを聞いて」
はい。――大人しく返事をした。
何かもう、気が動転して頭が整理できない。
本当に無謀なことをしている気がする。
いや事実、そうなんだ。俺は無謀だ。
「二つ目は、一つ目を前提とした上での提案よ」
「あぁ、そういう話の運びか。お前らしいな」
ケアは厭らしい会話の仕方をする。
もう長い付き合いだ。大目に見よう。
「……こほん。提案というのはこの鎧のこと。此処には『アーカーシャの系譜』とまったく同じく、対オルドリッジの血筋に効果を発揮する『吸血』の呪いが付与されている」
「それを俺が着ても大丈夫なのか?」
「おそらく"エンペド・リッジ"なら効果はない。その聖典はあくまで虚数魔力の封印用だもの」
恐る恐る、胸当てに少しだけ手を触れてみたが何も起こらなかった。手で持ち上げて、胸部に当ててみたが、それでも反応はなかった。
「まさか、これを使ってエンペドを封印しろと」
「その通り。倒せないなら封印すればいいの」
いざというときは鎧ごと捨て身の攻撃をしかけ、エンペドに抱き着くとか。触れれば忽ち呪いが効力を発揮してエンペドの魔力を吸い上げる。
名付けて『関節絞め技』作戦。
これまた際どい作戦だ。
「でも封印というと嫌な予感がするな」
後々封印が解かれて邪神復活とか。
そういうことはよくある話だ。
「仕方ないじゃない。臭いものには蓋をする。殺せないものには封印をする。そういうものよ」
「俺としては此処でスッキリさせたいが」
こんな因縁は最後にしたい。
その為にもあんな奴は抹殺しておくべきだ。
神を凌駕した時を駆ける悪魔を、封印だけして放置するというのは後味が悪いものだろう。
昔、子どもの頃に色んな物語を読み漁ったものだが、それ系の末路を辿った英雄叙述詩は必ず後で敵が復活してくるのが典型パターンだ。
「それで三つ目の助言ってのは?」
「三つ目は……これは助言というより、リア・アルターの懸念材料と、私が導き出した最悪を合わせた上での警告なのだけど」
「なんだよ。この後に及んでまた嫌な話か」
悪い話と良い話をして、さらに悪い話。
ケアの性格の悪さが滲み出ている。
ケアは家の奥へ歩き、俺とリアを導いた。
そこに一つの鏡台が置かれている。
この家の元住人は金持ちだったのか、この時代の鏡面技術にしてはお見事だと評されるほど、綺麗な鏡だった。
「イザイア――今の自分を見てみなさい」
「うん?」
鏡を覗き込む。
目が覚めたときに、既に確認はした。
これはエンペド・リッジのもの。
元の俺と全く同じ顔立ちだった。
違いといえば、頭の傷隠しの為の黒いバンダナや四肢の機械部品の存在。
剥き出しの鉄骨や歯車が悲壮に満ちている。
以前の半魔造体以上に人間をやめたような風貌をしていた。
「貴方は一度、この姿を見たことがあるはず」
「当然だ。自分自身の生き写しなんだから」
「違うわ。その腕や足……そんな風に人間の体と人工物が融合した誰かを昔どこかで見たでしょう」
どこかで見たことが?
あっただろうか。全然覚えていない。
「私は根源から派生した魔の起源そのものです」
ケアは突然口調を変えて、そう言った。
その言葉で遠い記憶がフラッシュバックする。
古代遺跡から地中深くに落ちた魔法学生三人。
巨大な木乃伊と樹形図が描かれた壁面。
棺の中から『聖典』を見つけ出した。
棺には聖典と一緒に変テコな遺体もあった。
「ああ……あああ……」
思い出した。
俺がまだイザイア・オルドリッジだった頃。
アーカーシャの聖典を発見した。
友達のリンダやミーシャと一緒に。
そのときにこんな姿をした遺体を見た。右腕や足が滅茶苦茶に歪んで歯車だらけの機械の体を持った亡骸だった。
こんな骨格をしていた気がする。
あれは俺……いや、エンペドだったのか。
「ま、待て。エンペドはアザリーグラードの迷宮に封印されていたはずだ。確か、アンファンが封印を解いて『エンペドの亡骸』と戦った記憶がある」
あの迷宮都市での戦いは忘れない。
アンファンがユースティンを助けた。
そのときに『抜け殻』らしき何かがアンファンを取り込んで復活した。それをシアと一緒にエアリアル・ボルガの力を借りて倒したのだ。
「アザレアの地に埋まった遺体は貴方のものよ」
「え……あ……!?」
「歪んだ亡骸を覚えているでしょう。それはジェイクとしてこの時代で生きた半魔造体の抜け殻だということ。沈む前、既に奇形化は始まっていたわ」
なんて誤認識だ。
あれは俺だったのか。
ガラ遺跡の地下深くで埋葬されていた襤褸の木乃伊こそ、俺の魂を容れたエンペドの肉体だった。
「当時、女神であった私にも分からなかった。ガラ遺跡になぜエンペドが埋葬されたのか。アザレアで悪名を轟かせたはずの男の遺体が、なぜ遥か遠くの地で神殿に埋葬されたのか、その理由が……」
でも、その答えに行き着いた。
中身がエンペドではなく俺だったから。
全ての謎が繋がり、
「そこでリア・アルターの懸念材料よ」
「懸念材料って……?」
一つの結論に至る。
リアは俺を悲しそうな目で見つめていた。
何故、そんな瞳を向ける。
まるで今生の別れを惜しむみたいだ。
「もうお父さんは未来に帰れません」
「…………」
リアがその事実を告げた。
いや、定められた運命を告げた。
ガラ遺跡の神殿に埋葬された亡骸を発見した時から判明していた運命。
「その体ではリゾーマタ・ボルガを通れない」
リアは既に泣きそうだ。俺だって悲しい。
エンペドの体に魂を移植された以上、虚数魔力もなく、時間旅行も叶わない。
だから未来に帰る手段も断たれた。
冷静に考えてみればそうだ。
それが二つの事実から導き出せる答えだ
俺は此処で死んで、神殿に埋葬される。
じゃあ、シアにももう会えない、のか。
そんな……あんまりだ……。
無理して明るく振舞っていたが、限界だ。
なんでこんな悲運ばかりなんだ。
心が挫けそうになる。
情けないほどに涙が零れ始めた。
「イザイア」
「な、んだよ……」
「まだ三つ目の助言をしてないわ」
「……三つ目は今の警告じゃないのかよ。俺がどんなに頑張っても此処で死ぬ運命だって。未来にも帰れず、シアにももう二度と会えないんだって」
「三つ目は、これらの現状を踏まえても"まだ諦めるな"っていう警告よ」
「は……」
やっぱりこいつは性格が悪い。
「何か希望はあるのか」
「あるわ。成功する可能性は極めて低いけど」
「教えてくれ。今までも何度だって奇跡は起こしてきた」
「それは――――」
○
進めば進むほど、砂塵が舞い上がる。
崩壊したアザレアの街を疾走する。
アザレアの花々が無惨にも土を被っていた。
そのままハンドルを切って森へ突入。
凄まじい機動力だ。
土偶『アーセナル・ボルガ』が魅せる最速の世界は、俺の闘志ごと加速させてくれる気がした。
体中には超合金の鎧。左手には伸縮の盾。
篭手には『アクアラム・ボルガ』と『ケラウノス・ボルガ』を。
腰には『ボルカニック・ボルガ』を。
背中には『エアリアル・ボルガ』を。
ボルガ・シリーズ全てを携え、単騎で挑む。
もう迷いは吹っ切った。
やがて森を抜けて海岸に辿り着く。
「銀盤生成!」
アクアラム・ボルガで海岸の表面を凍らせる。
かつてイリカイ川を渡る手段にも使った。
その銀盤の上をアーセナル・ボルガで駆けた。
乗り上げた海岸の表面から銀盤に変えていき、俺が過ぎ去ると、また元の海面に戻っていく。
これで真っ先に大陸を横断できる。
奴らにも追いつけるだろう。
港からは既に船が出たという話だ。
何人もの兵士も一緒に乗り合わせていたという情報も仕入れている。それはきっとエンペドやエトナとマウナを乗せた船だ。
――先のことを考えたらキリがない。
いつだって俺は絶望の中でも戦い続けた。
ただ、ひたすら真っ直ぐに。
だから今度こそ、あいつをぶっ倒す。
最強不滅で、完全体で、不死身の敵でも。
自分自身を倒せない限り、俺はいつまでも報われない。
最後くらい、自分の為に戦ってやろう。
4月完結が間に合いませんでした。申し訳ありません。
GW中に必ず完結させます。ご容赦ください。




