Epilogue1 希望
世界は続いていく。過去から未来へ。
人類が積み上げた文明、技術……あるいは想いさえも、時には人々の心に残り、未来へと紡がれていくだろう。それが『系譜』というものだ。
しかし、系譜は不確かなモノであればあるほど忘れられてしまう。
――英雄なんて存在もまた然り。
歴史に名を刻まなければ、世界を救った存在など忘れ去られていく。
救われたという結果が残され、その実、誰が世界を救ったのか、国を救ったのか、人を救ったのか、その要因は結果の前に消え果てる。
時代とともに風化していく……。
だから、せめて僕たちの心には刻もう。
「騎士、ランスロット・ルイス=エヴァンス」
「ハッ!」
ラトヴィーユ国王陛下の号令に返事をし、王前へと歩み出た。
今日という日は僕の記念すべき第一歩の日だ。
その一歩を大切に、これから歩む道が正しく綺麗であるように、整然と前に踏み出した。膝を付き、赤い天鵞絨に跪く。
白い胴衣に銀の装甲が高潔さを誇張した。
「汝ランスロット・ルイス=エヴァンスは、旧王宮騎士団・大逆事件の折、王宮に謀叛を企てた旧王宮騎士団の黒帯騎士各位を退け、国の有事を救った。ひいては、次期女王エスス・タルトゥナ・ド・エリンドロワの誘拐をも阻止し、王家ならびに国民ともども、貴殿の素晴らしい武勲に感謝の意を示す。ここにその功績を讃え、勲章を親授する」
国章と救世の象徴『ゲーボ』の刻印が刻まれた白いメダルを与えられる。それを国王陛下から直々に与えられ、僕は胸元へと取りつけた。
そして一歩下がり、踵を返す。
王城に集った有権者、旧・王宮騎士団の面々が僕を見上げて姿勢を正した。
旧王宮騎士団黒帯のモイラさんもいる。
彼女も僕のあとに勲章を授けられる予定だ。
モイラさんは、同僚である黒帯騎士を退けた勇気や王家への忠誠が讃えられて勲章を授章することになった。
また、既に故人であるアレクトゥス・マグリール、カイウス・サウスバレットにも同様の勲章が授与される。彼らは事件の後、正気を取り戻したボリスの証言により、最期まで王家へ忠義を尽くしたことが判明している。
その様子を、娘であるアルバさんも王城に来て眺めていた。
アルバさんは引き続き、騎士団に在籍してお父さんを目指すのだそうだ。
戦いの後も、王都は大混乱を極めた。
建造物が破壊され尽くし、死者の数も相当数に及んでいる。
住居はほとんどなく、広大な敷地を有する王都といえど寝泊りする場所も少なく、働ける人も少ない状況で、再興には時間がかかった。
……あの戦いから既に三か月が経った。
不幸中の幸いといえば、魔術ギルドの職員の大多数が逃げ延び、王都に魔術師が揃っているということである。
魔法の力で、破壊された街の整地はすぐに終わった。
あとは再建がどれくらいかかるか、という話だ。
――結局、『白の魔導書』が亡くなった王族を蘇らせることはなかった。
奇跡が頻発することはない。
エススの願いが叶えられなかったが、それでも彼女はそれを受け入れて前に進むことにした。
僕に授けられた奇跡を垣間見ることが出来たからだ。
信じ貫いた王家の伝承をしかと見届け、その重さを噛みしめた。だから今、陛下の傍らに立つエススも強い眼差しを向けている。
こうして執り行われた叙勲式だが、王宮側の人間が少なく、寂しいものである。
王家が君臨する段上には、ラトヴィーユ陛下とエススとミディール王子の三名の王族しかいない。その周辺に臣下が何人かいるばかりで、叙勲式に参加している者も数えられる程度だ。
王都の惨劇を物語っていた。
「続けて、騎士叙任式を執り行う」
僕はまた、その段上へと昇った。
エススが正面に立ち、僕と向かい合う。
純白のドレスに身を包んで、魔法大学に通っていた頃の格好とは雲泥の差だが、僕と視線を交えたときに見せた笑顔は無邪気なまま……。エススもまた格好にとらわれない無垢な女の子なんだと感じて安堵する。
僕も笑ってみせた。
エススはラトヴィーユ陛下から儀礼用の剣を受け取る。
その前に跪き、頭を垂れた。
「ランスロット・ルイス=エヴァンス――汝、その身命を捧げ、我が命運を与ること、この剣に誓うか」
「誓います」
「ならば、汝の剣に我が身を託す。ここに契約を交わそう」
エススが僕の肩に剣の平を軽く三度打ち、それを両肩に続けた。
託身儀礼と誠実宣誓の完了だ。
僕もこの儀礼を受け、より一層身が引き締まった。
あの日に誓いは済ませたが、エススへこの身を賭すことを大衆の前で宣言したのだ。
今まで以上に自覚しなければならない。
勲章は……僕には相応しくないかもしれない。
でもエススの騎士は間違いなく僕にしか務まらないのだ。
名も無き英雄ではなく、ランスロット・ルイス=エヴァンスにしか――。
「……ボクのこと、ずっと守ってね」
少し近づいてエススが小声で耳打ちした。言われるまでもない事だが、本人から不意打ちのように言われると恥ずかしくて思わず顔が熱くなる。
○
馬車に乗り込むときに、思わず車体の扉を破壊してしまった。
がごんと大きな音を立てて、ものの見事に外れた。
「あっ!」
「あーあ……またやっちゃったね」
力加減が難しい。
あの戦いで何度も蘇ってからというもの、物が紙細工のように柔らかく感じられてしまって鉄製の扉すら容易く壊してしまう。
これのせいで生活には色々と不自由していた。
再建中の街の建物を壊してしまうことだけは避けたいので、常に力加減だけは意識しているが、たまに気を抜くとこうなる。
「ボクはこのままでいいよ」
「……申し訳ないです」
「座席があるだけで贅沢だ」
エススにそう言われても尚、申し訳なくなって頭を掻いた。
抱きかかえて彼女を馬車へ乗せ、僕がその横についた。
馭者も僕の破壊力に怯えて動揺している。
声をかけた時は呂律も回らないくらいに驚いていて、昔の僕を思い出した。
宮殿の庭から向かうのは王都西区のメルペック教会大聖堂だ。
叙任式を終えた後、騎士は教会へ向かい、大司教から特異能力の真名を授かる――というのが旧王宮騎士団の仕来たりだった。
でもそれは"旧"騎士団の仕来たりである。
そんなものは撤廃したし、特異能力があってもなくても、王家への忠誠心と勇気、賢明さ、礼儀がしっかりしていれば、騎士団に入隊できるようになった。
僕とエススがこれから聖堂を目指すのは、純粋に僕の力の秘密を教えてもらうためである。
そして、貰った勲章を"彼"へと届けに行くため。
道すがら、綺麗に整地された街をエススと二人で眺めた。
魔法の力とは恐ろしい。
戦士がどれだけ力を蓄えても、街中の瓦礫を一挙に撤廃するにはどれほどの時間がかかるだろうか。魔術であれば、風や水、火を操ってどうとでも出来る。
魔術の力の凄まじさ、利便性を感じて、あらためて僕ら騎士家系が無力であるということを思い知る。ましてや僕の怪物じみたパワーも魔法の力によるものだ。
ペレディル・パインロックもきっと悔しかったのだろう。
運命は戦士に厳しい。
パインロックだけじゃない――。
「――黒帯の皆も、」
エススも同じことを考えていたようだ。
王宮騎士団の黒帯は在り方が歪だった。
叛逆は許しがたいものだけど、国の力の象徴として王家に仕えさせていた存在だ。反旗を翻した引き金が"黒魔力"にあったとしても、きっと日頃の鬱憤は着々と溜まっていたに違いない。
「それぞれの想いを尊重してあげれば、こんなことにはならなかったのかな」
「……」
結果を振り返れば何とでも言える。
起こってしまったことを後悔するよりも、未来に向けて改善していく方がずっといい。僕はエススの問いに首だけ振って外の景色を眺めた。
○
「――『為すべき救国への収斂』」
頭上に浮かび上がった青白い文字を、大司教は読み上げた。
その神秘的な光景に唖然とする。
「それがあなたの能力の真名」
「どういう意味ですか?」
「死んでから潜在能力を覚醒させる力。死して尚、蘇る条件が揃った時、初めてあなたは強くなる」
「蘇る条件っていうのはもしかして……」
後方で僕に輝いた目を向けるエススに一瞥くれる。
「そう、『白の魔導書』は死者を蘇らせる。ルイス=エヴァンス家が代々受け継いだ特異能力は、王宮に忠を尽くし、その『白の魔導書』の恩恵に与って初めて発揮される。救国に特化した覚醒術よ」
「そ、そうだったのか。だからあの時も――」
死んでは蘇り、死んでは蘇り……。
『白の魔導書』には助けられたものだ。不滅そのものが特異能力かと思っていたが、僕の能力は生き返ることではなく、生き返れたら力が宿るタイプだったという事か。
「あなたは既に十二回の死を乗り越えている。その回数だけ術が乗算されると仮定すると……本気で殴れば、山の一つは木端微塵に出来るくらいのパワーはあるんじゃないかしら」
「えぇ……!」
ペレディルを倒したときも『黄昏の谷』にクレーターが出来た。
それはまた、なんて馬鹿げた力だ……。
「その成長力で今の倍の回数死ねば、星ごと破壊し尽くす力が宿るでしょうね」
「ひぃい」
「そうなる前に貴方を殺せる存在がいなくなるから大丈夫よ」
大司教リピカ・アストラル……平然と怖ろしいことを言う人だ。
きっと、僕の力には限界がないという事を言いたいのだろう。興味本位で聞き遂げた聖堂騎士団のパウラさんがひょっこり現れて、面白おかしそうに口を挟んだ。
「試して差し上げますわよ」
パウラさんはそう言って心象抽出で剣を造り出す。
僕を早速殺しましょう、というつもりらしい。
「やめなさい、パウラ……! この星の生命体が全滅するわ!」
「冗談ですわよ、冗談」
ほほほ、と高貴に笑い飛ばして引っ込んでいった。
そんな究極兵器のように怖れられても、僕自身には実感がない。
聖堂騎士のパウラさんも、この三か月の間は大聖堂の復興に従事してきたようだ。大司教のリピカ曰く、前までの横柄さが嘘のように、最近は教会に献身的だそうだ。
先ほどの軽口を叩くようにもなった。
ある存在と出会って別れたことと、その存在と大司教リピカが繋がっていることが判明したのがきっかけだというのだが、僕には何の事だかさっぱり分からなかった。
ただ言えることは、僕たちと同じようにパウラさんにも何かしら出会いがあり、此度の戦いで失ってしまった大切な存在がいたのだという事である。
僕らも当初の目的を果たそう……。
今日、教会にエススと二人で訪れたのはそっちが本題だ。
…
教会の司教座の奥には、地下聖堂へ続く階段がある。ここには封印指定とされる聖遺物が保管されていた。
それら聖遺物のうち、銀の円月輪の残骸の前に辿り着いた。
封印はされず、野放しの状態で台座に置かれている。
「シア……」
そこには僕らと同じく彼を悼む者がいた。
円月輪が置かれた台座の前で、懸命に祈りを捧げていた。
シアは少しお腹が大きくなっている。
誰の子だと聞かれても何も答えない。でも僕らと同じように、シアも"彼"の存在は覚えているようだ。きっとお腹の子も、その"彼"との間に出来た子なんだと僕もエススも気づいていた。
他の誰もが忘れ去ってしまっても、思い出を強く共有している僕らは忘れることはない。
「こんにちわなさい」
僕らに気づいて平然と挨拶をしてきた。
エススが返事をした。
「こんにちわ、シア……体調はどう?」
「あまり吐き気もなくなりました。快調です、多分」
「そう……苦しくなったら宮殿においでね。みんな歓迎するよ」
「はい。でも、ようやく長旅もできそうなので少し故郷へご挨拶にいこうかと――」
「そんな身重な体で?」
「ロ――――こほん……バーウィッチ地方のソルテールという町にお世話になった方々がいますから。官庁の治癒術師の方に同伴してもらう予定です」
大丈夫なのだろうか。
シア・ランドールは冷静そうに見えて意外と無茶する人間だ。でも僕らは彼女を尊重して、最大限の支援をしてあげることしかできない。
「それでは今日は失礼します。ランスロットさん、王宮騎士ご就任おめでとうございます」
「あ、うん……ありがとう。シアも気をつけて」
そうして彼女は地下聖堂を立ち去っていった。
女は強しと云うが、母はその倍強しだ。
赤子が生まれてきたら、宮殿側も総出で祝福しよう。
僕とエススは円月輪の前に立ち、シアと同じように祈りを捧げる。国王陛下から直々に授けられた勲章も、その隣に並べる形で台座に置いた。
あの日、この"門"を潜った男のことを思い出そうと記憶を巡らせる。
でも、顔も名前も、どんな様相だったのかさえも思い出せない。
……本人にとってどれだけ辛いことだろう。
この国を救った真の英雄のことを誰もが覚えていないのだ。
覚えていないどころではなく、救国の英雄は僕、ランスロット・ルイス=エヴァンスの活躍であると挿げ替えられ、伝えられている。
でも事実は異なる。
存在ごと犠牲になった真の英雄は、確かに――。
「確かに……いた……」
エススは涙をぼたぼたと流しながら呟いた。
「確かにいたんだ。でも君のことをボクは思い出すことが出来ない……悲しいなぁ……色々なことを教えてくれたのに、声もどんな声だったか忘れてしまった。ごめんなさい……ごめんなさい……。でも、君が言ってくれたように、後悔だけはしないよ。自分で決めたら後悔だけは……!」
エススに釣られ、僕も目頭が熱くなった。
救国の英雄は名を遺すことなく、人々に忘れられ、消えていった。
時が流れて風化すれば、きっと誰の心にも残らないだろう。
だからせめて僕の心には刻もう。
――『名も無き英雄』。
僕ではない別の誰かが、大逆事件を鎮めた。
彼には感謝しないといけない。
そして記録には残せなかったとしても、そんな男がいたんだという事実は、後世に語り継いでいきたい。
そのためにも、僕やエススが王国を立て直して未来へ繋げていくことが大事だ。
決意をあらたに世界を紡いでいこう。
「混沌の世界、混沌の時代を生き抜いた貴方たちは、きっと神の恩恵がなくても強く生きていける。それが、英雄が遺した最後の希望よ。しっかりやりなさい」
「はい……!」
大司教から託言を与えられ、エススと二人でしっかりと返事をした。
○
来たときと同じように、エススと二人で馬車に乗り込んで宮殿へと帰る。扉が破壊された馬車の中、エススは隣に座る僕に話しかけた。
「ランスロットも一度故郷に帰らないの?」
栄誉が与えられた者には、その猶予期間に帰省も認められる。
吉報を知らせに家族に会ってもいいということだ。
「故郷……」
北方クダヴェルにいる父ヴァンデロイには、既に伝わっているだろう。
きっとあの古びた屋敷で独り、喜びに浮かれて一人酒でもしているに違いない。騎士としての復活はルイス=エヴァンス家の悲願だからだ。
「僕はエススの専属騎士です。ここを離れたくありません」
「……!」
それを聞くと、エススは白い顔を真っ赤に染め上げて狼狽した。
その様子に、僕の自らの発言を振り返って恥ずかしくなる。
「あ、いや……そその、深い意味はないけどっ――――そ、それに北方は今、大変な事態ですから、本来の任務を離れて悠々自適に里帰りなどしたら、エススの面目も立ちませんよ」
そうだ。
北方クダヴェル地方のさらに北の国境は酷いことになっている。
旧王宮騎士団は解体され、騎士団は二分された。
『新王宮騎士団』と『北方十字軍』である。
新王宮騎士団の団長は僕に任命された。
次期女王を守る役目を仰せつかった僕こそ、王都全域や王宮の警備に適しているということでの大抜擢である。
しかし、真の戦士として実力が試されるのは『北方十字軍』の方だ。
実は、王都の内乱が諸外国に知れ渡り、エリンドロワの国力が落ちている事を機に、国境の北レナンサイル山脈を越えた地域――獣人族や巨人族が争う紛争地域の異民族が、王国への侵略活動を活発化させている。
その防衛戦に送られる遠征隊が『北方十字軍』である。
現在は友好国『ガルマニード公国』からも支援を募りながら侵略に備えていた。
……内乱の末、国防が揺らいでいるのだ。
叛逆の中心人物であった元黒帯騎士のボリスは『北方十字軍』に配属されることになった。
極刑を覚悟していたボリスだが、故アリアンロッド王女の私情や騎士に対する扱いが取り上げられ、情状酌量が認められた。他に余罪もなく、王族・騎士団員を実質殺害したのはガレシアということになっている。
ボリスは極刑を免れたのである。
しかし、彼にとって遠征隊への左遷は極刑に等しい。何故なら、紛争地帯で獣人族の犬部族を率いるリーダーがボリスの父親だという話だから。
獣人族にとって同族殺しは苦心忸怩たる行為だ。
きっと同族と戦い続けなければならない状況は、彼のプライドをずたずたに引き裂くだろう。
モイラさんも『北方十字軍』に志願した。
彼女は元より世界中を旅回る魔術ギルド調査員だった。魔眼の秘密を探るべく、遠征隊として戦地に向かい、世界の神秘を見て回りたいのだとか――。
元黒帯同士、気まずい雰囲気が流れないか心配だった。
そんなこんなで、かつて主戦力だった人物は戦争に赴いているのだ。王都再建の人材が足りてないのも事実であり、騎士である僕が里帰りをしている暇はない。
ちなみに元黒帯騎士関連の話のついでにリム・ブロワールの事だが、彼女も生きていた。
彼女は僕が教会大橋で打ち倒して川に転落したが、その後、下流の方で倒れているところを発見され、無事に保護された。
本人に記憶はなく、また言葉も発しなくなっていた。
さらにはあれほど容易に振り回していた大斧鉞は持ち上げることもできず、木刀一つ持ち上げる力も残されていないと云う……。
東方バーウィッチから治癒術師を招いてカウンセリングするそうだが、正式に心神喪失が認められれば、大橋での虐殺も不問に扱われる。事態が干戈騒乱の渦中だったことや、国王陛下も自責の念で、あまり元黒帯騎士を責められないようだった。
それもこれも、一連の騒動の『諸悪の根源』がはっきりしているからだ。
黒魔力――『ラインガルド』とも『エンペド』とも呼ばれており、その正体ははっきりしない。稀代の大魔術師と呼ばれたエンペド・リッジの妄念が誰かに憑りついたという説が有力だが、これから原因解明に向け、魔術ギルドと王宮が協力して調査していくのだそうだ。
そんな絶対悪を退き、また大昔の建国当時の雰囲気を取り戻した。
異民族の侵略や王都再建など、やることは山ほどあるものの、きっと以前よりも一致団結して、良い方向に王国は進んでいくだろう。
それこそ英雄が残してくれた希望だ。
「これから大変だね……」
エススが街で忙しなく働く市民を見て嘆いた。
それは国中のことを指している。
「大丈夫です。僕らには希望があります」
「ふふ、ボクにとっての希望はランスロットだよ」
「……っ! は、はい、頑張ります!」
馬車は宮殿へと戻り、また一日が過ぎ去ろうとしていた。
僕もまだまだ騎士団長としては未熟すぎる。でもエススの隣に居られるこの日々を大事にして、一日一日を頑張ろう。
Epilogue2へ続きます。




