Ëpisode161 拡大(case:ガレシア)
ボリスは宮殿の回廊を進む。
中庭を取り囲むように作られた石の回廊。
朝の日が差した庭とは対比的に、廊下では影が出来上がり、まるでボリスの腹や足先から垂れ堕ちる黒い魔力が全面を覆っていくようだった。
影は狼男のシルエットを映し出すように。
ボリスの本性を壁へと仄かに映し出していた。
「ぐぇっ……!」
「ぎ……ぐ……!」
壁際で等間隔に整列する王宮騎士団の白帯たちは、彼の通過と同時に短く悲鳴を上げていた。
黒い魔力が回廊を伝い、彼ら騎士たちを足元、背後などから順番に襲っていく。それに取り込まれた白帯たちは直前までの悲痛な表情が嘘のように無感情になる。
それは黒い魔力が彼らの精神を支配した証拠だった。
ボリスは、ただ一つの目的のために宮殿の者どもを徐々に仲間内へと引き込んでいっているのだ。
――ロストを殺すための舞台を整える。
――それが獣人族の誇りを取り戻す手段……。
まだ精神支配を受けていない白帯たちは遠くから不思議そうにその様子を眺める。今の短い悲鳴は何だったのだろう、と首を傾げながら。
通過しているのは王宮騎士団黒帯のナンバー2、ボリス。
不審者が怪しげなことをしている訳ではない。
いつも通りの上役が歩いている光景だった。
白帯の彼らが不思議がってお互いの顔を見合わせていると、そこに慌ただしく、騎士団長のアレクトゥス・マグリールが歩いてきた。
焦っているようだ。
苛立ちの表情を浮かべ、正面からゆったり歩くボリスと対峙した。
着崩した黒帯と整然とした黒帯が向かい合う。
「ボリス、昨日の偵察の報告がまだのようだが」
どうやらアレクトゥスが気にしていたのは、ボリス率いる偵察隊が川辺へ調査に向かった"不穏な気配"のことだった。
何の報告もないまま、日が明けてしまった。
前夜、宮殿の警備をしていた白帯の話によるとボリスは日暮れには戻り、そして彼が専属で仕えるアリアンロッド王女殿下の部屋へと入っていったと云う。
朝に早速、話を聞くために王女殿下の部屋を目指していた。
元々まとまりのない王宮騎士団の黒帯陣だ。
有事の事態でもこのように不適当な態度を向けてくることはあった。
「あぁ、そんなこともしてたっけな」
「ふざけるな。一番外敵の危険性を喚いていたのは貴様自身だと聞いて――」
刹那、ボリスが素早い動きで団長アレクトゥスの懐に飛び込む。
そして胸倉を掴んで体を引き寄せると、その唇に自身の唇を重ねて接吻した。
「むぐっ……!」
接吻した。
壁に整列する白帯たち、そしてアレクトゥスが引き連れてきた白帯たちも、揃ってその二人に仰天した。目を丸くして一体なにごとだと騒然とした。
すると、アレクトゥスの手先や足先からばちばちと紫電が走る。
赤い表皮が露わになり、その正体が明らかになった。
そこにいたのはガレシアだった。
王宮騎士団黒帯の赤魔族の女。
その能力は外見や仕草、声色まですべてを誰かに真似る『磨礪の幻影』。
ボリスは、対峙する相手がガレシアであることに当然気づいていた。
ガレシア自身もボリスが『悪魔の証明』によって自身の正体に気づいていると判っていた。
公務の都合で不在なアレクトゥスに代わり、ガレシアがこうして代役を務めていることは黒帯の間で認識されていることである。
周辺の白帯たちのみ知らない事だった。
「ちょ……! あんた、血迷ったの?!」
強引な口づけを強要してきた男を突き放し、ガレシアは湿った唇を拭った。
彼らの間に特別な関係はない。
体を密着させたことも今回が初めてである。
ガレシアがボリスを男として意識していたかどうかはさておき、また、彼女がもう百年近く生き続ける魔族であることもさておいて、自分が女であることを忘れるほどにしばらく男と関わりがなかったガレシアは、その醜聞的なボリスの行動に、つい狼狽した。
「あぁ――俺はいつも通りだねぇ」
周囲の白帯たちは騒然としている。
ガレシアも辱めを受けたような気になって顔が熱くなるのを感じ、もう一度服の袖で唇を強く拭った。今の仕打ちが自分の意思ではないと主張するために――。
「変わるのはお前の方だ」
「ぶ……ごふっ!」
ボリスの言葉の直後、ガレシアは咽返った。
喉の奥から何か煮えたぎるものを感じる。
口づけの衝撃で気づかなかったが、何かを口に入れられた。
「ぐっ……犬ころ、あんた何を――」
「良い気分だぜ? お前もこんな騎士団、不満だらけだったんじゃねーか。少し昔を思い出してみろ」
昔……?
ガレシアはふと何の話だと顔を歪めながら考えていた。
ボリスの余裕な表情。不敵な笑み。
彼が、彼よりはるかに長く生きるガレシアの過去など知るはずがない。
だが、その冷徹な灰色の眼光がすべてを見透かしているような気がして……。
口や目から溢れ垂れる黒いモノがガレシアの心を揺さぶった。
○
ガレシアは醜い自分に劣等感を感じていた。
擬態なんて能力は、使えば使うほど自分自身が分からなくなっていく。
醜い容姿よりもそうやって擬装し続ける浅ましい心が何より嫌いだった。
理想の自分の姿にいつでも成れるというのに普段から素の赤い肌の自分を曝け出しているのは、彼女がもう心が成熟しきった魔族だったから。
しかし、それ以上に――。
「メング王妃様」
ガレシアは側室の部屋に入った。
第二王妃メングは、ガレシアが仕える次男のオェングスや魔眼のモイラが仕える四男ボドブの母親だった。性格は狡猾で、王妃に成り上がったのも国王陛下をうまく誑かしたからだと囁かれている。
「あら、ガレシア。オェングスの様子はどうかしら」
「ええ、特に問題もなく、王子としてのお務めを果たしてますよ」
「あの子が王として選定されるためには貴方が必要なんですからね。しっかりやって頂戴」
メング王妃は立ち上がり、部屋の入口付近で立ち尽くす赤い魔族に近づいた。
そして、はいと言って手渡してきたのは化粧用の魔道具だった。光魔法が付与されたグリッターの白い粉。それは決して、ガレシアに対する労いで渡したものではない。
息子のオェングスの化粧のために渡したものである。
――メング王妃は美貌にこだわりがあった。
異常なまでに。
王の選定には美貌が必要なのだと信じて疑わないほどに。
曰く、色白で、生まれながらに純白な髪を持つラトヴィーユ陛下が『白の魔導書』に選ばれたのも美貌によるものだと主張していた。
そしてその白さにこそ選定の鍵があると本気で信じていた。
――"白"の魔導書なんだから白さが大事なのよ。
そんな馬鹿みたいな妄言でガレシアは王妃にお気に召された。
"あなた、その肌の色最高ね。白さを引き立てる最高の飾りになるわ"
王家に差し出されたガレシアに、メング王妃はそう言い放った。
ガレシアが初めてエリンドロワ王国に渡ったとき、変幻自在な魔族が現われたと懸賞金に賭けられた。元から人間族の国の礼儀など弁えていなかったガレシアは市民から傍若無人に見られていたのである。
その当時、王家にはちょうどオェングスという幼子がいた。
ガレシアを改心させ、専属騎士に仕立て上げたのはメング王妃その人である。
メング王妃はガレシアの騎士叙任式の際、条件を提示する。
無闇やたらに擬態能力は使わないこと。
オェングスに寄り添い、息子の色白さを引き立てること。
――気づけば、ガレシアは自分自身を取り戻していた。
王国へ渡ってからというもの、赤い肌の魔族がいると見世物のように扱われて心が荒んでいた。それからは擬態を繰り返して窃盗ばかりして本当の自分を見失っていたのだ。
だから己を取り戻させてくれたメング王妃には感謝していた。
「預かります。オェングス様には一国の主になって頂かなければなりませんものね」
しかし、よく思い返してみるとそれは単なる幻想だ。
言うことが日に日にエスカレートするメング王妃は、少し経ってボドブ王子殿下を出産した後、「専属騎士も白くないといけないんだわ」と騒ぐようになった。
そうしてボドブ殿下に就いた騎士はガレシアとは正反対な色白のモイラ・クォーツという女。
「その前に、メング王妃様」
「なによ、さっさとそれをオェングスのもとへ持っていきなさい」
「――私の赤い肌を褒めてくれてありがとうございます」
メング王妃は何のことかさっぱり記憶になかった。
当時、自分が何を言ってガレシアを王宮騎士団に迎え入れたのかさえ忘れている。
そして怪訝な表情を浮かべた。
「王妃様もいかがでしょう、試しに?」
「は――――」
赤い魔族はニタっと笑う。
口の奥は真っ黒だった。
瘴気がその口元から滲み出て湯気のように浮かび上がる。
ガレシアは腰に携えた曲剣のうちの一本を素早い動きで振り上げた。
「ぎぇえええっ!」
切り裂かれた腕から鮮血が飛び散る。
王妃の白い肌に飛沫し、真っ赤に染まり上がった。
「なっ……なな、なんで……だ、誰かっ……」
尻餅をついたメング王妃は這いつくばって部屋の外を目指した。
しかし、その背にガレシアは躊躇せずに曲剣を振り下ろす。
「がっ―――!」
深々と刺さって王妃は血反吐を吐き散らす。
絨毯が赤く染まり、這う王妃自身も赤く、赤く染まっていった。
「どうかしら。赤い肌は最高でしょう? 綺麗でしょう? あは、あはははっ」
ガレシアは何度も背中に刃を突き立てる。
目を丸く見開き、昂揚していた。
とち狂った王妃の言葉を信じてこれまで醜い自分を晒していた。晒し続けていた。『白の魔導書』による選定なんて関係ない。自分が選ばれたのは、ただ単に王妃の気まぐれだったのだと知ってからも忠誠を続けていた。
そこに共感なんて、お恵みなんて何処にもなかった。
だから赤い肌がどれだけ美しいものなのか、魔族の美意識に白さの追及なんて存在しないのだと言うことを知ってほしい、否、知るべきだ。この王妃は息子を国王へと導くために様々な文化、風土を学ばせる教育の一環として赤い肌の魔族の生態がどうであるかを、そしてその種族では白さにこだわりなどなく、ありのままで生きているのだということを理解させなければ――擬態能力が必要な場面はあくまで戦場にしかないのだということを知らしめなければならないのだ。憎い。そうだ、私はこの王妃が憎い。世間を教えてあげなければという親切心が湧き出るほどに憎かった。
そう思い、ガレシアは親切心で一心不乱に刃を突き立てた。
王妃はやがて動かなくなり、大量の鮮血で体中を真っ赤に染めていた。
「赤い王妃様も素敵ですよ、あは……」
騒ぎを聞きつけ、部屋に王宮騎士団の白帯たちがやってきた。
扉を開き、数人の騎士が動かなくなった第二王妃を眺める。
「ガレシア様……」
「あぁ、あなたたち。余興に付き合ってくれないかしら」
歪んだ表情もすぐに元に戻り、ガレシアは冷淡に言い放った。
駆けつけた白帯も無表情なままだ。
そして極めて業務的に返事をする。
「かしこまりました、ガレシア様」
○
オェングス王子は母親のことを溺愛している。
大切に育ててくれていると感じていたから。そして母親のメングの願いが自分こそがこの国の王になることであると知っていた。だから帝王学、王政学もしっかり学んできたし、王としての器も身に着けようと毅然とした態度で日々過ごしていた。
最近、末子のエススなどという父親の隠し子が発覚したが、王女らしさの微塵も感じられない無礼な態度に呆れていた。
やはり次期国王は自分がならなければならないと決意を新たにしていた最中である。
しかしそんな折、突然にもメング王妃から呼び出しがあった。
不思議に思って王宮騎士団を通じてガレシアを同伴させようとしたものの、既にガレシアは王妃のもとに居ると白帯の男から告げられる。
おかしい……。
ガレシアはオェングス王子が外出したり、宮殿内を移動するときには必ず同行していた。それが母親の言いつけであったし、ガレシアもそれを自覚していたはずだ――にも関わらず、既にメング王妃のもとに居るというのは不思議な話だった。
もしそのような状況であれば、メング王妃がガレシアを叱りつけるはずだからだ。それほどまでにオェングス王子にガレシアを同行させることに拘っていた。
側室の部屋に辿り着く。
「母様……オェングスです。参りました」
「入って頂戴」
母親の声を確認し、オェングス王子は入室する。
そこには普段と変わらない母親がいた。少し顎をあげて人を蔑むような視線を送るメング王妃。それは王妃としての立居振舞であるとオェングス王子も誇らしく思っていた。
「どうかされたのですか、母様……」
オェングス王子は部屋の異臭に気づいていた。
それは今まで嗅いだこともないような生臭さだった。宮廷教師のもとで必死に勉強し続けた王子が一度も嗅ぐ機会のなかった異臭。
それを敏感に感じとって不安そうな目を向ける。
「――ガレシアのことだけど」
「はい?」
「信頼し合うべきパートナーとして、今日は貴方への白粉も特別なものを用意しようと思ったのよ」
「どういうことです?」
「いいからこちらへ来なさい」
嫌な予感を感じていた。
そこにいるのは確かに母親のはずだ。
しかしこれは親子の間柄での勘なのか、そこにいるのは母親ではないまた別の何かのようなものを感じる。姿形、服装、そして声、仕草などすべてが本人そのものであるのに……。
疑念を抱いたまま、しかしてオェングス王子は近づいた。
近づいてしまった。
「手を出して」
「……?」
手のひらを差し出す。
何か特別なものをプレゼントしてくれるのだろうか。
不安は強かったが、何か取られるわけでもなく、貰えるものならば貰っても問題はないだろう、と未熟な発想で差し出した。
そして手のひらに押し付けられたのは、柔らかくも温かい、ぬめっとした感触のものだった。
メング王妃から渡されて手のひらで転がされ、ぐちゃぐちゃに広げられていく。
「か、母様……なんですか、これは一体……痛っ、痛いです」
力が籠っていく。
ぐちゃぐちゃに塗りたくられた手のひらの異物は真っ赤なものだった。
そして生臭い。異臭の源だった。
「さぁ、それをこう。こうするの。こうやって顔に塗るのよ」
腕を力任せに握られ、手のひらを顔の近くへと持っていかれる。オェングスは抵抗しようとしたが、あまりの力に手のひらの異物が顔に当たってしまった。
赤いぬめりが顔に広げられていく。
「母様、やめてください。これは一体なんです、やめ……」
明らかに白粉などではない。
化粧ではなく、特殊な調味料か動物の糞かとさえ思った。
母親の狂気の様子に異常を感じ取ったオェングス王子は後ずさりした。逃げ出そうと後退するも、腕を引っ張られて部屋の奥へと連れられた。
「それはね、これよ。赤い化粧道具も必要になるでしょう。あなたの専属騎士はガレシアなんだから。ガレシアの赤い肌に合わせてあなたも赤くなるべきなのよ。ほら、これよ。これを見てみなさい。赤いでしょう。私も赤化粧に手をつけてみたの。きっと素敵よ。ほら、これを見なさい」
部屋の奥、高級なソファの上に寝そべっている何かがいた。
そこにいたのはメング王妃だった。
メング王妃が絶命している。
腹を裂かれ、中から赤いものが色々と飛び散っている。全身真っ赤に染まっていた。
「う、うあああああっ!! 母様!?」
悲鳴をあげるオェングス王子殿下を見下ろすもう一人のメング王妃。擬態が解かれ、その正体がガレシアであったことにオェングスは気づく。
「うぁああ!?」
「貴方の顔、素敵よ。それは王妃様の肝。嬉しいでしょう? 大好きなお母さんの肝でお化粧できたのよ」
ガレシアは微笑んだ。
さぞ嬉しそうに。
こうして親子揃って美の追求に貢献できたことが何より嬉しかった。
それからあまりに喚き続けるオェングスの相手が面倒臭くなり、興醒めしたガレシアは曲剣で軽く王子の頸を斬りつけて殺した。
あっさりと。
絶叫して死に絶えたオェングス王子を親切に母親の隣に並べてあげる。
「余興は終わりね」
遊びきった玩具を放置する子どものような有様。
ガレシアは血染めの部屋を後にした。
○
着実に、黒い魔力が王都中を汚染していくのを感じ取る。
ラインガルドは街壁の門でニヤりと笑った。
王宮騎士団の半分ほど、そして黒帯のボリス、ガレシアの二人をこちら側へ引き入れた。
あとの主要勢力は地獄耳と魔眼の二人。
予定通りに進んでいた。
ラインガルドは街の中へ悠然と歩いていく。
久しぶりに舗装された石畳の道を踏めたことに喜びを感じた。
頻りに行き交う馬車の数々。
普段なら鬱陶しいとさえ思う光景も心地良かった。
その中に一台、一際騒々しく王城へと向けて走っていく馬車がある。
馭者と目が合った。
馭者はラインガルドの不審な様子に一瞬、意識を傾けた。
しかし、今はそれよりも急いで城へ戻る必要がある。
すぐ目を逸らし、王城を目指した。
有事の事態だ。
一体、王都で何が起こっているのか理解できなかった。
しかし、確実に何かが起きている……。
その証拠に、街中からは悲鳴が上がって所々で暴動が起きていた。
それらは騎士団が到着する前に鎮静化してしまい、当事者たちからは「何も起こってませんよ」と白を切られるのだ。
そしてまた別の場所で暴動が起こり、また鎮静化して――と言った具合でおかしな現象が勃発している。市民は何を見て、何に対して悲鳴を上げ、そしてなぜ何事もなかったかのように日常に戻るのか……。
馬車を操縦していたのは王宮騎士団長、アレクトゥス・マグリール。
後ろに第一王子オグマ・モリガン・ド・エリンドロワを乗せて王城を目指す。万が一、最悪の事態が王宮内で起こっていた場合、国王陛下の身の安全が危ぶまれる。
昨日調査に向かわせたボリスの報告も気になっていた。
偵察へ出かけたきり、彼も行方不明になっている。
ガレシアに団長の代役を任せ、ボリスの所在を確認するように指示を出していたが、無事に二人とも合流し、情報を共有できているだろうか。
普段から反抗的な二人だが、アレクトゥスは信頼を置いていた。
何か異変があったときに一番に身を乗り出す二人組だからだ。
エスス王女殿下の脱走の際にも真っ先に行動してくれた。
モイラやリムは黒帯としての実力は目覚ましいが、内面で未熟な部分がある。
王都内での事件と、王子王女の護衛任務のどちらを優先すべきかを見極める判断力に欠いていた。
――頼れるとすれば、残りは怪力屋のカイウス・サウスバレット。
彼は一番年長者だが、逸れ者でこちらの指示通りに動いてくれない事が多い。
今回の異変は、これまで騎士団が経験したものの中で最大級だとアレクトゥスは予感していた。
だからこそ王宮騎士団の結束が必要になるはずだ。
こういった不測の事態で王宮が貶められるようなことがあれば、それはきっとアレクトゥスの日頃の怠慢のせいだという責任さえ感じている。
団結力のない騎士団を放置していたのは団長自身なのだから。




