Episode109 屋敷制圧戦Ⅳ (vsトリスタン)
アルフレッドは混濁する意識の中、冷静に頭が働かなかった。
目の前の黒衣の騎士が高々と長刀を振り上げ、死を覚悟したその瞬間。
突然、娘の叫び声が聞こえた。
「だめぇぇえええええっ!」
庭園の方を見やると、爆炎が舞い上がり、赤い炎が周囲を燃やし尽くした。
その中心にリナリーの姿が映る。リンジーに抱えられて屋敷の本館に向かったはずなのに何故、と一瞬思ったアルフレッドだったが、次に考えたのは娘の身の危険のことだった。
リナリーは五歳の少女だ。
体格がどうの以前に、まず戦い方も知らない。
毎日の朝の修練なんてお遊びの延長みたいなものだ。
炎魔法に異常に特化した能力を持つが、それを今放出したところでこの黒い騎士の瞬速の剣技の前には斬り伏せられてしまう事は自明の理だった。
現に、トリスタンは剣の構えを落としてその爆心地を眺めている。
その肢体をなぞるように、黒い魔力が湯気のように揺らめいている。
間違いなく、彼は殺気立っている。
「………さっさ、と……逃げ……やが………っ!」
喉が血反吐でつっかえて、うまく言葉を出せない。
声を発せようとする度に、腹に開いた風穴に激痛が奔る。
アルフレッドは体を捻り、俯せの体勢になった。
腕を這わせ、徐々にその小さな影に近づこうと力を振り絞る。
何としてでも守らなければ――――。
これまでも、命を賭けても仲間は守り抜いてきた。その自分が、こんなところで娘を見殺しにする事だけはあってはならない。どんなに傷だらけの体でも。
力任せに這いつくばる。
痛みなど捨て置け、と体に命じる。
だが、無情な黒い騎士はその真紅の少女を敵と見做し、事も無げに呟いた。
「子どもを斬るのは久しぶりだ」
「………やめろ……っ!」
トリスタンが疾風のように駆けた。
全力で相手にする必要がないと判断したのか、その動きは先ほどの戦闘よりも遅い。それが皮肉にも眩む視界の中でも確認できて、アルフレッドは地獄を見せられるような気分になった。
今から駆け出しても、思うように動かないこの体ではその背中に追いつくことはできない。
トリスタンは土道を低姿勢で駆け抜け、庭園の端へと到達した。
リナリーの魔力放出によって焼け爛れた庭園は土壌が抉り取られて悲惨な光景だ。
その荒廃した土壌に綺麗な幼い鮮血が爆ぜんとする。
アルフレッドは絶望した。
ここぞというときに限って、大切な存在を守れない不甲斐なさ。
それは五年前の焼き増しだ。
勝負事にはとりわけ強かったアルフレッドだが、その戦歴は攻めに特化した収奪の戦果。蛮勇は最後まで"守り"に弱く、詰めの甘さがここにきて悲惨な結果を生む。
―――カァン、と鉄が弾け合う音が庭園に響いた。
「………っ!?」
長刀を弾かれた黒衣の騎士は、驚きの声を上げる。
軽めの袈裟斬りで斬り捨てるつもりだったのに、その矮小な少女はその剣筋に応戦したのである。
―――片手に握りしめる"剣柄"だけで。
偶然だろうか、とトリスタンは訝しむ。
しかし、まぐれで弾き返せる剣筋ではない。
真っ当な刀剣であれば、然もありなんと言ったところではある。しかし、少女は握りしめる剣柄のほんのわずかな端の部分でそんな神業を披露してみせた。相当な年月の間、剣術だけを究めた武芸者なら可能かもしれない。
だが、リナリーはたったの五歳児。トリスタンも仲間の妊娠を知ってからの数え月で、この少女がだいたい何歳かは計り知ることができる。不可解だった。
おかしい。対象の幼さゆえに覚悟が鈍ったか――と考え直し、トリスタンは次の一手に出た。
弾かれた長刀を強く握り、勢いを殺さず。
お次は、体を一回転させて最速で振り回した。
少女の首を跳ねるため、水平に剣を回転斬りさせる。
―――リナリーはその真一文字の攻撃も、俯いて躱した。
やはり偶然じゃない。
少女は剣筋を見切っている。
「………?」
「もう……パパを……いじめないで……」
躱して俯いた姿勢のまま、少女が言葉を漏らす。
そして、幼く赤い瞳が黒い騎士を下から睨んだ。
目尻に涙を浮かべて。
その瞳の奥には、炎の影が揺らめいた。
剣柄を両手で握りしめて、少女はさらに赤い魔力を放出する。
「なにも……! 悪いことなんて、してないんだからぁーー!」
爆風が、真紅の少女を中心に吹き荒ぶ。
トリスタンは危険を感じて間合いを取った。
かなりの距離を空けて、その猛り狂う真紅の少女を見る。
「……なに?」
両手に握りしめる赤い剣柄に、その炎の渦が凝集していく。
柄の先端から伸びるのは高濃度の炎の塊だった。
ぶわりと広がっていた爆風が剣柄に吸われて固形化し、"その剣"を具現化させた。
赤い刀身。
鋭利な形状を成し、混じり気のない純正の赤い剣がその柄から現われた。
それは、童話や伝承で聞くような聖剣の面影さえある。
グレートソードのように、重厚でも幅広でもなく、炎を纏う剣でもない。
刀身自体が、純粋な炎の塊だった。
その剣を熟練の剣士のように構えると、リナリーは赤い髪を棚引かせて黒い騎士へと肉迫した。
五歳児と思えない素早い動きで、一気に間合いを詰める。
トリスタンも少女の咄嗟の踏み込みに対して、一手遅れをとった。
だが、一手どころか二手三手遅れたところで疾風迅雷の剣技の前では関係のない事。トリスタンはその赤い少女に応戦するため、剣を振るう。
―――しかし、そこから見せたリナリーの剣技は、恐ろしいほど卓越していた。
リナリーは剣を振り被った。
跳ねて、その黒い騎士の首元を斬りつけんと迫る。
その剣戟を弾かれたとすれば、体を後転させて、続くトリスタンの斬撃をひらりと躱す。
地に足を着けると、予備動作もなく低姿勢から剣を振り上げた。
その剣筋はぶれることもなく、速度も精度も目覚ましい。
少女は身軽さを重視した軽業の剣技と奇抜な動きで、トリスタンを翻弄する。
振り払われる赤い刀身は、ひ弱な腕がふるったものと思えないほどに重たい。
トリスタンはその勢いに応戦するのが苦しくなり、思わず体を後傾させた。
…
「……どうなってやがる………」
赤髪の少女の父親は、その在り得ない光景を見て困惑していた。
折れた愛剣が、娘の手元に。
そして新しい武器となってそこに出現した。
剣を生成しただけかと思えば、そこから繰り広げる剣技は黒騎士トリスタンのそれを上回る。
この戦況のすべてが理解できなかった。
「いいからお前はこっちにきやがれ」
突然、上着の襟を掴まれて引き摺られた。
アルフレッドは背後を見上げると、女体化した火竜サラマンドの姿が映った。
遠くまで引き摺られて、安全な場所へと連れてこられた。
「………なんでテメェが……! ぐっ……」
「バカ野郎が。そんな死に体で喋ってんじゃねぇ」
サラマンドが鋭利な爪で左手首を自傷すると、鮮血を垂らした。
その手首をアルフレッドに近づける。
「飲め。竜の血は退魔に特化した呪いの特効薬だ。闇の魔力を浄化して傷口の治りも早くする」
「………」
アルフレッドはサラマンドの左手首を握り、遠慮なくその血を啜った。
普段いがみ合う仲でも、こうして助けてもらえた事に恩義を感じずにはいられない。礼の一つでも言ってやろうと思ったアルフレッドだが、それよりも気になったのは娘のことである。守ってやらなければと思っていたか弱い存在が、自分が苦戦した黒い騎士を圧倒している。
「お前が手放したボルガをあの子に渡したのはこの俺様だ」
「あぁ……?」
「危なっかしいお前を遠巻きから見てウズウズしてたからな。戦いたいなら戦えって渡しちまった」
リナリーが握りしめる赤い剣柄―――ボルカニック・ボルガ。
トリスタンに破壊され、投げ出されたそれを探し出したのはサラマンドだった。
傑作が無下に扱われて苛々したサラマンドは、自ら火剣を駆使して闇の騎士を止めようと考えていたらしい。しかし、そこで視界に入ったのが庭園から父親を見守るリナリーの姿だった。火竜サラマンドは、リナリーならこの火剣の本領を発揮してくれると確信したのだ。
「いいか、アルフレッド。あれがボルカニック・ボルガの真髄よ」
リナリーの戦いぶりを見て、惚れ惚れするようにサラマンドは語りだした。
「剣ってのはな、剣士が持つから剣なんだ。お前みてえな三流が振り回した所でガラクタ程度にしかなりゃしねぇ」
"火剣ボルカニック・ボルガ"。
その性能は火を纏い、火を放つだけの剣ではない。
「……リナリーだって剣士じゃねぇよ……あいつはただの、うちの娘だ」
「普段はな。だがあの子は今、ボルガの力で剣士になった」
「……?」
「魔法兵器といっても火剣は火剣だ。その筒に魔力を宿したとき、剣術スキルを爆発的に向上させ、持ち手を《剣士》とする―――それがボルカニック・ボルガの能力だ」
かつて魔術師が敵に攻め込まれた時、緊急応戦する目的で、剣を具現化する魔法を編み出した。
《心象抽出》と云われる魔力による複製魔法だ。しかし、魔術師風情の生半可な剣術では熟練の剣士には遠く及ばず、お飾りにしかならなかった。
そこで火の賢者サラマンドが考案した魔法兵器こそが《火剣ボルカニック・ボルガ》。
"優れた剣は、持ち手の腕前も向上させる"。
―――それを"神秘の力"で可能とした神の剣だ。
さらに、ボルガの性能は持ち手の魔力に依存する。
魔力が強ければ強いほど、剣術向上の爆発力も凄まじい。
炎に特化したリナリーの特異魔力は、火剣の性能を最大まで引き出した。現状、その少女の剣術はマナグラム分類上「S+」となっている。それはこれ以上、極めようのないと評されるランクだ。
今のリナリーには、そこらの剣豪ですら太刀打ちが出来ないだろう。
経験をも凌駕して一気に能力を飛躍させた神の剣技が、黒い騎士に襲いかかる――――。
…
荒れ狂うのは、赤い髪に赤い瞳を宿した少女。
幼い肢体には似つかない剣技が繰り出される。
紅蓮の剣は一振りすれば炎が舞い上がる。
大きく大地を抉り取り、残された火の残滓が土壌に残される。
得体の知れない破壊力は、神秘の力の成せる業だった。
「くっ……」
トリスタンは寸前でその一撃を躱して、間合いを取った。
対峙する赤い剣士は、あまりにも矮小だ。
これまで戦ってきた赤い戦士とは、体格も、呼吸も、剣術まで異なる。
一度、見極める必要がある――――。
だが、リナリーはそんな隙さえ与えなかった。
低姿勢で踏み込み、トリスタンをも凌駕する速度で肉迫する。
やや蛇行気味に駆け抜ける小さな少女と、棚引く真紅の長い髪。
それは怒涛の勢いで流れ込む溶岩の濁流のようだった。
リナリーは、相手に十分な間合いなど取らせんと常に前傾に攻め込んだ。それは彼女が意図して動いているわけではない。剣術「S+」という剣術性能が勝手にそうさせる。どうして自らがこんな戦いを出来るのかと省みることもしない。
父親が殺されかけ、自分も存在が消えかけている。
そんな窮地の状況に陥って、うちなる闘争心が覚醒した。
瞳が赤に変色したのも、その"赤の系譜"が覚醒した証拠。
紅蓮の神剣が、小さな腕で下段から振り上げられる。
それに応じるように、トリスタンは漆黒の長刀を振り下ろした。
その反動は、単なる剣による弾き合いとは格が違う。魔力を宿した刀身同士がぶつかり合ったとき、その反動はお互いの魔力を直接削り取る。
漆黒の刀身から黒い魔力が、轟音とともに飛び散った。
「………っ……」
トリスタンは自身の剣の振りが鈍っていくのを感じていた。
それは紅蓮の剣によって闇の魔力が削り取られるからなのか、それとも――――。
「―――いや、迷いなどない」
トリスタンは頭を振る。
一撃でも喰らえば耐えきれないと判断して、これまで守りと回避に徹していた。しかし、このままではその劫火に叩き斬られるのも時間の問題だ。第一、ひと斬りで命を散らすのはこの少女も同じこと。ならばこそ、トリスタンも最速の剣技で迎え討とうと考えた。
今一度、間合いを取り、狂戦士のように戦場を駆け抜けるリナリーを心眼で見定めた。
少女に迷いはない。
一心不乱に間合いを詰めてくる。
その攻め入る隙をつき、得意とする秘剣をお見舞いしようと剣を構えた。
「秘剣――――ソニックアイ」
――――……。
黒い騎士はその場から消えた。黒い魔力の残滓だけを残して。
一度の踏込みで、迫る赤い戦士の懐へ飛び込み、剣戟を振り下ろす。
上段から下段へ振り下し、下段から中段へ振り上げ、中段から上段へ振り払う。
流れる剣技を、瞬き一つの間に披露する。
「……う……あぁぁーっ!!」
―――だが、それも咆哮とともにすべて弾かれる。
不意打ちの如く、小さな懐に飛び込んだのは黒い騎士だ。
間合いを詰められた赤い剣士もまた、神の剣を以て《ソニックアイ》を披露してみせた。
「………っ!」
これが卓越した剣士二人の戦い。
己が極めた剣技の競り合い。
トリスタンは、放った十連撃をすべて同じ技で弾かれたことに驚愕した。
その精神的な動揺は、リナリーが続いて言い放った言葉でさらに揺すぶられることとなる。
「もどってきてっ! わたしのっ……お兄ちゃんっ………!」
少女は渾身の力を込めて、ソニックアイの最後の一振りで黒い騎士の身体を剣戟ごと突き飛ばした。リナリーもまた、黒い騎士との戦いの中、その先に待つ"英雄"の背中を赤い瞳に写していたのだった。
黒い騎士は威圧に負けて体を後方へと引きずられる。
戦場と化した庭園の土壌に暗黒の刀身を突き立てながら勢いを殺す。
赤い戦士の叫びは、彼が決別したはずの過去を思い起こさせた。
――――兄ちゃーんっ! 俺も次の仕事には連れてってくれよ。
その懐かしい声が、頭に過ぎる。
もう二度と聞くことはできない弟の声だ。
子どもは背伸びをするものだ。
その背伸びを、トリスタンはうまく受け止めてやることができなかった。
その存在が、自身を過去に縛りつける。
いつまでも、いつまでも――――。
グレイス・グレイソンの闇魔法によって精神汚染に浸された時、トリスタンはその弟の存在を忘れる事ができた。それはトリスタンにとって、未来へと前進する救いの手のように思えた。
温情を捨て、暗殺者として主人に忠義を尽くす。
そう生きていれば、過去も忘れることができると思ったのだ。
「違う……俺は……俺は、今そこにある信念を……守り通す……!」
長刀を土壌から引き抜き、さらに闇の魔力を纏着させる。
そうやって自分自身を鼓舞させた。
過去は、過去でしかない。
今、ここでそれを清算する。
弟の影を斬り払い、前へと進まんと黒い騎士はこの暗黒の道を選んだ。
中段に構えた長刀の黒い魔力が凝集する。
刀身は漆黒を纏い、その禍々しさを引き立てる。
強度を増して、真紅の少女を斬り伏せんと力を蓄えた。
体中から湯気のよう沸き立つ闇の魔力も、同胞が最期に遺した未来へ進む力。
―――それを糧に、暗殺者は暗殺者らしく、人殺しの道を歩む……。
"暗殺者だろうがなんだろうが、ヒトは結局のところ感情なしには生きられないのよ"
しかし、何故だろうか……。
その同胞が遺した言葉は、彼が構えた漆黒の刃を差し止めた―――。
「―――えぇーーいっ!!」
リナリーはその隙を見逃さなかった。
跳ねるように、その男へ肉迫して炎の剣ボルカニック・ボルガを振り下ろす。
焔が猛々しく、その黒い騎士を覆い尽くした。
「……っ!」
袈裟方に振り下ろされた剣は、黒い騎士を斬り払った。烈火の炎はその胴体を焼き尽くし、闇の魔力を消し炭へと変えていく。しばらく剛炎がその場に舞い上がり、激しく一帯を燃え尽くす。
黒い騎士はその火剣を振り切った少女の姿に、"熱情"を垣間見た。
それは純粋な子どもだったら誰もが持ちうる無垢な感情。
トリスタンは子どもたちのそんな真っ直ぐさを守りたかったのだと思い出した。そして、それを守り通す事が弟を守れなかった自分が、何より一番大切にしていたもの。
―――あぁ、俺は……見失っていたのか。
…
その火炎旋風が消えた時、役目を終えた火剣の刀身は掻き消え、ただの赤い筒に戻った。それと同時にリナリーの瞳も、紅玉色から元の翠緑色へ戻る。
風が一陣吹き抜け―――カラン、と銀色の長刀がその場に落ちた。
剣士がその剣を落とす時、それは戦意を逸した合図である。
立ち尽くす騎士の黒衣は炎によって襤褸となっていた。
上半身は剥き出しになり、ほぼ上裸姿となっている。
その白い肢体には胸元に大きく開いた切り傷。
さらに黒々と焼け爛れる火傷が見て取れた。
重度の熱傷を負っているようだ。
そして、これまで彼の視界を覆っていた仮面は破壊されて剥がれ落ちた。
―――その"黒い仮面"が、彼の視野を狭くしていた正体そのものである。
「………泣いてるの?」
仮面が剥がれ落ち、彼の白濁した瞳が露わになる。
闇の魔法によって心眼スキルも強化され、その反動により瞳も濁った。
そんな視界の悪さでは大切なものを見失っても仕方がない。
その目から涙が零れ落ちていた。リナリーは、冷酷な騎士だったはずの彼が突如見せた感情に少し驚きながら、一歩歩み寄った。
泣いている人がいれば優しく声をかけてあげないといけない、と母親に教えられてきたからだ。
その教えの通り、少女は殺し合いを果たした相手にすら優しさを向けたのである。
そこにいたのは、トリスタンだ。
無愛想な表情をした、感情のなさそうな男。
その無愛想な男が涙だけを垂れ流している
「………待て」
片手を立てて、近寄るリナリーを制した。
その指に嵌められた銀製の指環が、きらりと光る。
「行け、リベルタの少女………良い剣筋だった……」
それだけ言うと、トリスタンは陽炎のように掠れ消えた。魔力の黒煙が漂って、それが霧散したかと思えば、騎士の影は何処にもなくなっていた。
リナリーは、騎士の見せた涙の意味が最後まで理解できなかった。
だが、その悲しそうな顔だけはいつまでも目に焼き付いた。
次回更新は来週の土日(2015/11/28~29)に二話ほどアップします。
吹っ飛ばされたシアは何やってんですかの回です。
一人称に戻ります。




