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魔力の系譜 ~名も無き英雄~  作者: 胡麻かるび
第3幕 第4場 ―英雄の不在―
135/322

Episode108 屋敷制圧戦Ⅲ (vsトリスタン)


 リナリーはその光景を目の当たりにして、我慢ができなくなった。

 恐怖心を感じたかと問われれば、この意地っ張りな真紅の少女は大袈裟に首を振ることだろう。

 だが、五歳の女の子にとって対人戦を見るのは早すぎた。激突する熱気を帯びた肉弾戦は、日頃の朝の修練や町外れのダイアウルフ狩りとは訳が違う。

 そこには明確な意志を持った鬩ぎ合いがある。

 (しのぎ)を削る戦いなのだ。

 

 父親に咄嗟に蹴り飛ばされて身を守られたときも、その理不尽な暴力に震えあがった。

 母親からの抱擁がなければ立つことも儘ならないほどに。

 魔法学校ではのんびりとした先生だとしか思っていなかったドウェインでさえ闘志満々、徒手空拳にして力戦奮闘。リナリーの目から見れば、それは狂気の沙汰にも映った。加えて、母親でさえ見たこともない激しい魔法を放ち、敵陣を一掃するという始末。

 カレンの部下二人が目を離してる隙に、リナリーは逃げだした。

 屋敷付近から遠ざかり、庭園の方へと引き返す。

 生い茂った草花の茂みに隠れて一人、蹲った。


 目を閉じて、耳を塞いだ。

 戦いとは恐ろしい。狩られる可能性のある側に立って、初めて自分という存在の小ささを感じてしまった。何も見たくない。何も聞きたくない。リナリーは暗闇の中に閉じこもる。

 感じたこともないような息切れもする。眩暈もする。身体が冷たくなっていく。弱気になった心のまま、暗闇の中で考えを巡らせた。

 何故こんな目に遭ってしまったのだろう。

 何故こんな所にいるのだろう。

 早く家へ帰りたい。

 家に帰れば、守ってくれる人が……。



 ―――大丈夫だ、お兄ちゃんが守ってやる。絶対にな。



 いつしか聞いたその温かい声に、リナリーははっとなる。

 その声は誰のものだったか。ぼんやりとする頭では考えもまとまらない。でもリナリーは間違いなく、その背中を追いかけてここまできた。

 それだけは覚えていた。

 守ってくれる家族のような人がいた。

 朝も晩も、魔法学校まで送り迎えをしてくれた。

 リナリーはその人物をお兄ちゃんと呼んでいた。

 実はソルテールの物見櫓で初めて会ったあの日から、その彼が父親と母親の語る"名前のない英雄"なのだと気づいていた。両親ともその人物のことをよく話すため、リナリーは嫉妬のような感情を覚えていた。得意な魔法でからかおうと悪戯心が湧いたのはそのせいである。

 だけど、今は―――。



 目を開けた。

 勇気を振り絞り、庭園の茂みから顔を出して周囲の様子を見渡す。

 リナリーはそこでも壮絶な光景を目の当たりにした。


 左右対称に整備された庭園の中央。

 二分する通路の真ん中では、炎と闇の二者の衝突が続いていた。

 乱雑に振り回された炎の剣は真正面から黒い陽炎(かげろう)を叩き斬る。陽炎は消え、黒い粉粒だけを残してまた予測不能な所に突然発生する。

 異次元の戦い――それはアルフレッドとトリスタンの熾烈を極めた戦いだった。


 逃げ出したくはない、とリナリーは思った。

 せめて足手まといにだけはなりたくない。――――目元から大粒の涙を零しながら、覚束ない足取りで父親の戦いを見届けにいく。アルフレッドであれば「タイマンを邪魔すんじゃねぇよ」ともぶっきら棒に言うかもしれない。しかし、リナリーにとってその戦いを見届けること自体が、弱い自分を振り払う一つの方法に思えた。

 動悸に、そして呼吸苦。

 時間が経つとともにそれは激しくなっていく。

 感じたこともない不快感を抑えて、一歩一歩、しっかりと歩き出した。



     ○



 アルフレッドは剣士ではない。

 戦いの中で剣を振り回すことはあっても、それはあくまで"補助具"の一つとして捉えていた。剣術など学んでこなかったし、近距離で攻撃さえできれば刀剣だろうが鈍器だろうが関係のない話だと思っていたからだ。

 一方でトリスタンは剣一筋で生きてきた。

 その二人が剣の腕で競り合った時、どちらに軍配が上がるかは歴然としていた。


「うらぁぁあ!!」


 アルフレッドは走り出す。

 両手に握りしめる火剣ボルカニック・ボルガを高々と振り上げ、そして叩きつける。

 しかし何度振り下ろしたところで、その黒い騎士を捕えることができなかった。重みに掛けて厚い肉を両断する重厚な刀身では、この状況では不利に働いた。

 剣技などとは無関係の魔物―――それこそガラ遺跡で遭遇した"牛鬼"のような、単調な肉を斬りつけるのには適していた。一方で、速技と精度を極めた黒い騎士には一撃もくれてやることはできない。


「…………」


 アルフレッドが肩で息をし始める一方、攻撃を躱し続けるトリスタンは呼吸を乱すことはない。

 静かに佇み、その炎を象徴とする男の戦いぶりを冷静に眺めていた。

 傍から見れば、圧倒的に赤毛の戦士が不利だと思われるこの状況。

 ―――トリスタンはその状況に警戒していた。


 アルフレッドは痴態を晒すような事はしない男だ。

 "無謀のアルフレッド"と揶揄されてきた彼だが、そう呼ばれてきたのは勝利を確実に物にしてきたからである。振る舞う馬鹿も相手を油断させるためのもの。疲れ果てていたとすれば、それも彼自身の描いた筋書きの一つに過ぎない。

 相手の油断や慢心を誘い、絶対に勝てないと思われる敵からも勝利を奪い取る。

 その挑戦そのものが無謀なだけであり、結果は確実に作り出す。

 トリスタンはそんなやり口を重々理解していた。

 だからこそ、手の内が分かるまではこうして回避に徹していた。


「……はぁ……はぁ……ち、畜生が……」


 こうして悪態をつくその様子も演技かもしれない。

 ここぞという時に切り札を切る男―――アルフレッドはシュヴァリエ・ド・リベルタのリーダーだった。戦術も優れた彼だが、何よりも恐ろしいのはその戦略。馬鹿そうに見せて、実は知略家の一面もある。


「俺を罠に嵌めようとも無駄なことだ。お前の手の内は理解しているのだからな」

「………チッ……、だろうなぁ?」


 アルフレッドは不満げに舌打ちをすると、さっきまで上下に大きく揺らしていた肩を止めて、余裕綽々で、すくりと姿勢を直した。

 やはりな、とトリスタンは思った。


「言っただろう。心眼に見通せないものはない。お前の騙し討ちなど特に分かり易い」

「はっ、そうかよ…………生憎な、俺もテメェの相手をしてる時間なんかねぇんだよ」

「―――死に急ぐか。今の俺にはお前を斬り捨てることなど容易いが?」


 静かな庭園には風すら吹かない。

 土道で間合いをとって対峙し合う騎士二人はお互いを睨みあった。

 黒い騎士は警戒を解いて、攻撃の姿勢へ切り替えることにした。

 今の振る舞いで確信を得た。

 やはりこの男は警戒するに値しない。

 相変わらず、ハッタリやブラフで戦力を誤魔化している。

 見極める力量もないと分かれば、あとは全力で斬り捨てるのみ。


 トリスタンはこの戦場において初めて、剣を上段に構えた。

 脇をしめて、剣柄は胸元へ。

 切っ先を垂直に向ける。

 上段の構えは敵を両断するときの剣術の基本の構えである。

 中段の構えも下段の構えも、振り下ろすその構えの打撃力には敵わない。

 攻撃を重視した一手だ。

 その様子を見て、アルフレッドも待ってましたとばかりに火剣に炎を宿す。燃え盛る炎の刀身は、アルフレッドの心情を映し出すように、闘志の呻りを奏で始める。

 ようやく追い回すだけの戦いが終わる。一騎打ちができる、とアルフレッドは不敵な笑みを浮かべた。


「来いよ、暗殺者。テメェに"自由の騎士"の強さが何たるか、今一度叩き込んでやろうじゃねぇか」

「お前は元より、騎士(シュヴァリエ)を名乗るに相応しくない……詰めの甘さが何をもたらすか、まだ理解していないようだな」


 トリスタンはその燃え盛る闘志からアルフレッドの姿を心眼に写し取り、標的を見定めた。

 そして周囲に黒煙が漂い始める。

 あれは黒い魔力の粒子だ。魔力を溜めて攻撃力を高める。

 体格差で言えばアルフレッドのような偉丈夫に、トリスタンのような細身の剣士が敵うわけがない。その単純な腕力の差を埋めるものは、結局のところ魔法の力によるものだ。魔力が強ければ、いかに体格差があろうとも―――云ってしまえば、少年のような小さな体でも屈強の戦士に勝ちうる。

 魔法至上主義のこの世界において、それが使えるのならば利用しない手はないのだ。


「………ォォォ………!」


 刀身に纏うは闇の魔力。

 トリスタンは大地を踏みしめて、標的を真っ直ぐ心眼に見定めた。



「泡影に散れ――――秘剣 "ソニックアイ"」



 ―――――………!


 黒い騎士が視界から消える。

 だがその風圧が迫るのを、アルフレッドは感じた。


「………くっ!」


 駆ける騎士は疾風。振るう剣戟は迅雷。

 一秒の間に十の連撃を放つ秘剣ソニックアイだ。瞬きでもしようものなら、その間隙で対象を細切れに分割し、その身を散らすだろう。目で追うことは不可能とされる最速の剣技。

 さらに、今回トリスタンが放つ秘剣は、リベルタ時代に披露していたそれよりも切れ味が違う。黒い魔力を宿した刀身によって、肉を深々と抉り、骨を軽々と切断することも可能とする。

 ついにトリスタンはその剣技を放った。

 真っ当な人間であれば、瞬殺だ。



 ―――――ギィン、と鈍い音を立て、刀身の鉄が屑を散らす。


「……!?」


 驚愕はトリスタンのもの。

 ソニックアイの一撃目は空振りに終わり、二撃目の下段からの振り上げでその剣戟が防がれた。

 最速の剣技が躱され、そして防がれたのだ。



「手の内を見透かしてんのは、テメェだけじゃねぇ」



 その声はトリスタンの足元から届いた。

 黒い騎士は、その目下で動物のような低姿勢で覗きあげる視線に気づく。

 ―――彼は、元から地べたに這いつくばっていた。


 重厚で幅広な刀身のボルカニック・ボルガは地面に突き立てられている。

 この赤毛の剣士は己が得物を手放し、地面に突き刺して放置していたのだ。魔力纏着によって炎だけを纏わせ、あたかもアルフレッドが握りしめる剣から炎の闘志が発せられているかのように演出していた。

 トリスタンはこれまでのアルフレッドの攻撃の数々から、次第にボルカニック・ボルガの赤い魔力にしか集中していなかった。惰性的に続く火剣の攻撃が、トリスタンのその油断を生んだのである。挑発をかけてから、さらに刀身の炎を強めたのは気を逸らすためだったようだ。


()()だかなんだか知らねぇが、所詮はこんなもんか………覚悟しやがれ」


 アルフレッドは続けざまにトリスタンの足を蹴り払った。姿勢が維持できなくなった黒い騎士は転倒し、倒れる最中にその襟首を掴まれた。


「………っ!」

「剣技にかまけて"自由(リベルタ)"の戦いを忘れやがったか……ちょこまかと動き回るやつはこれで十分だぜ―――――おぉぉらぁあっ!」


 アルフレッドは、トリスタンの襟首を振り回して地面に叩きつける。

 地に背をつけたトリスタンの腹に、渾身の力で正拳を突き立てる。


「………ぐっ」


 いかに闇魔法の力によって肉体強化されていようとも、その重たい一撃には堪える。


「おらおらおら!!」


 アルフレッドは何度も殴りかかった。

 もうこうなれば彼のペースである。

 剣技を魅せ合う時間は終わり、泥だらけの喧嘩と化した。

 赤い戦士はその騎士の頬、顎、腹、至るところを、押し倒したまま殴り続ける。それは純粋な怒りの感情をぶつける行為。

 なぜ、娘を襲ったのか。

 黒い魔法に操られていようとも、トリスタンにはそれに屈しない鋼の意志があると信じていた。

 そんな苛立ちを、握り拳に溜めて叩き込む。

 気づけば、アルフレッドは目頭が熱くなるのを感じていた。

 間近に見るトリスタンの姿はリベルタ時代から何一つ変わっていない。

 信頼し合っていた友の姿だ。

 それを見て、さっさと正気に戻れと思った。

 情が過ぎり、攻撃の手が鈍る。


 ―――その隙を、トリスタンは見逃さなかった。



「………フレッド」

「あぁんっ!? …………ぐっ……!」


 アルフレッドの脇腹に突き立てられる黒い刀身。

 トリスタンの右手に掴まれた長刀が、無慈悲にも横から襲ったようだ。

 串刺しにされて、アルフレッドは痛烈な痛みを感じる。


「………く、トリ……スタン……」


 苦しみに悶えるアルフレッドを無下に蹴り上げ、黒い騎士は体を起こした。

 赤毛の戦士は地面に転がり、黒い騎士がそれを見下げた。

 そして吐き捨てるように言った。


「一つ、勘違いをしているようだが―――この場を守るのは俺の意志だ」

「……なに………」


 アルフレッドは脇腹を抑えて這いつくばるようにしてから腰を上げる。大量の血が吹き出て、その傷口に黒い魔力の残滓が漂う。

 呪いの効力を宿した傷口だ。

 黒い魔力は、浸食するように徐々にその傷口を広げていった。


「ここを守れと命じた主人(マスター)はもう死んだ」

「……あぁ?」

「だが、彼女が命を賭して守ったものがこの屋敷にある。俺は、それに忠義を尽くそうと決めたんだ。だからな、フレッド……俺とオルドリッジの人間に関係などはない。しかしお前たちがこの屋敷を壊そうというつもりなら、排除するのが俺の信条だ。それが彼女(グレイス)への、せめてもの手向け……」

「…………」


 アルフレッドはその言葉を聞き届けても、その意図をしばらく理解できなかった。だが、どうやらこうして戦っているトリスタンが正常そのものなのだと確信し、()()した。

 トリスタンは、己の意志でリナリーやアルフレッドを攻撃した。

 操られていたわけではない。

 それが分かったのなら……。


「へぇ、そうかよ……じゃあ、やっぱり俺たちは敵同士ってことじゃねぇか……」


 脇に広がる傷口の痛みを堪え、平然とアルフレッドは言い放った。

 不覚を取ったが、意志が固まればあとは信条をかけた根性の勝負だ。


「今まで手加減して悪かったな。だったら……全力でぶっ斃してやるぜ……」

「虚勢を張るのも立派だが、その呪いの傷は確実に広がっていくぞ」


 仕切り直しだ。

 トリスタンは片手に握りしめる長刀を高々と振りかざした。


「……ちっくしょうがっ!」


 次の瞬間には、大振りの鉄爪が振り下ろされ、先ほどまでアルフレッドが蹲っていた大地が抉り取られる。黒い残滓が塵のように沸き立ち、湯気のように消えた。

 アルフレッドは逃げ腰だった。

 脇腹の痛みで近接の殴り合いにも応じられない。

 あの暗黒の一閃をまともに受けたのなら、おそらく身体ごと両断されてしまうだろう。せめて得物がなければ、と焦って駆け寄ったのが火剣ボルカニック・ボルガのもとである。


 しかし、そこは既にトリスタンの間合い。

 アルフレッドがボルガの柄を握って迫る背後の騎士へと振り払ったのと、トリスタンが追撃の一手を振るったのは同時だった。

 ギィィン、と激しく両者の剣がぶつかる。その振動はボルガから腕へ、腕から胴体へと伝わり、アルフレッドの脇腹の傷に響いていく。


「……くっ……そ……!」


「砕けろ」


「おぉ……らぁぁあっ!!」


 火剣ごと後方へと弾かれた右腕を力任せに前に振り下ろし、トリスタンの一撃をまた弾く。

 次に響いた音は、これまでの金属の弾き合いの音ではなかった。

 乾いた音ともに、ボルカニック・ボルガの刀身が()()()。 

 赤い剣柄とグレートソードが二分され、大きく弧を描いて空を舞う。


「―――――っ!」


 刀身は宿した炎を散らし、無様に大地へと投げ出された。

 剣柄も頭上はるか高くへと飛び、どこかへ消えてしまう。

 武器が破壊された。

 それはアルフレッドの最期を意味していた。


「止めだ」


 トリスタンは切っ先を真っ直ぐに向け、中段の構えからその胴体を貫く。


「あぁぁぁぁぁぁあっ!!」


 穿たれたのは腹―――突き刺さっても尚、その黒い騎士の突進は止まらず、そのまま地面へと無様に突き落される。腹から背中を貫通した長刀。それを一気に引き抜かれ、アルフレッドは体に風穴が空いたのを感じた。

 大の字に倒れたまま、その黒い騎士を睨む。


「ぐ……ごふっ………っ!」


 身体は限界を迎えていた。

 アルフレッドは血反吐を吐き、頭から血の気が引いていくのを感じた。

 即死には至らなかったとはいえ、出血の量が多すぎる。

 風がより一層、冷たく吹きつける。

 手足も痺れて徐々に視界も眩んでくる。

 急速に闇の魔力が体を浸食していく。


「お前の無謀もそこまでだ。潔く引き返せば、死ぬこともなかったろうが……死に急いだものだ」


 トリスタンは身動きが取れなくなった彼のもとへゆっくりと歩み寄る。

 そして最期の一撃を与えようと、断頭の構えを取る。

 このまま苦しませて死なせるなど無慈悲な事はしない。

 トリスタンは最後の(よしみ)で、しっかり息の根を止めてやろうと考えた。


「…………ぅ………」


 しっかり狙いを定め、垂直に刀身を振り上げる。

 迷いがないと言えば嘘になる。

 だが、トリスタンにとって守るべきものは変わった。

 かつての仲間も、誓いが変われば敵となりうる事もあるだろう。

 覚悟を決めて、両腕に力を込めた。


 ―――………。



「だめぇぇえええええっ!」


 刹那、熱風が舞い上がる。

 庭園に響き渡るのは、幼い少女の声。

 炎の魔力放出により、庭園の草木が溶けていく。

 その爆炎の中心にいたのは真紅の髪の少女だった。

 炎に特化した特異能力者が、周囲の障害物を圧倒して戦場に君臨した。


「………リ……ナリー……?」


 アルフレッドは自身の娘の姿を見て驚愕した。

 優しい印象を思わせる母親譲りの翠緑色の瞳が、赤く変色していた。

 その瞳の変色は、赤毛の呪いの系譜である。

 そして手には火剣ボルカニック・ボルガの剣柄を握りしめている。

 それはただの赤い筒―――他のボルガ・シリーズと同じく、本体はその()にある。



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