Episode101 確かな痕跡
オルドリッジ祝典から二日後。シア・ランドール視点。
おはようございます、シア・ランドールです。
ここはソルテールの人気宿コンラン亭。
前泊のお客さんや、わざわざ朝ごはんを食べに来るお客さんが多くて、早朝から大忙しです。私はそこで給仕係として、エプロンをしながらお食事の配膳をしています。こないだから始めたこの仕事も、だいぶ慣れてきました。
「シアさん、ぼーっとしてないで。さぁさぁ、運んでくださいませ」
「すみません」
ぼーっとしていたらホール長のナンシーさんに注意されてしまいました。ナンシーさんはこの宿の看板娘さん。お歳はいくつか知りませんけど、綺麗な人です。ウェーブがかったブロンドの髪を後ろでまとめて、清楚さを示している。でもその自然にまとまった髪型がゴージャスに見えるので、エプロンさえしてなければどこかの国の王妃様と間違われるくらい。
私たち給仕係の間でも、憧れの存在です。
「………」
慣れてきたというのは嘘でした。
もしかすると、慣れてきたからこそ、こうやってぼーっとしてしまうのかも。
ここ数日、こんな感じです。
自分の生活に何かが欠けてしまったような?
そんな無気力な感じ。
私はカウンターに並べられた料理皿やパンをトレイに乗せて、注文したお客さんのもとへ運んでいった。注文したのは新聞記事に目を通している長い髪の学者風の男の人だ。この人はお休みの日にはこうして朝から律儀に朝食を食べにくる常連さんだった。
「あら、ドウェインさん」
「……おはよう、シアくん」
私に一瞥くれると、すぐまた新聞に目を向けた。
「今日は魔法学校はお休みでしたっけ?」
確か魔法学校のお休みは一週間に一回だけだった気がします。確かドウェインさんが前回この店にきたのは三日ほど前。ということはまだ次のお休みに入っていないはずですが……。
「うーん、実は臨時休業に入ってしまってね」
「臨時休業、ですか?」
私が首を傾げると、ドウェインさんは読んでいた新聞を広げて指で指し示した。
「ほら、これ。"バーウィッチの筆頭貴族オルドリッジの祝事、大惨事に"」
「……?」
その記事を覗き見る。
一昨日行われた"オルドリッジ祝典"。バーウィッチに名を連ねる貴族をお呼び立てして、長男の成人祝いをしたとのこと。しかし、その夜、祝典の最中に犬型の黒い魔物の襲撃を受け、晴れやかな舞台は一変して大惨事に。幸いにも死者は演奏隊のリーダー1名のみ。関係性は不明だが、当主イザイアも同日未明に死亡したという情報があり。皮肉にも祝典はオルドリッジの当主継承式に成り代わってしまった………と。
オルドリッジ……?
"―――俺は………オルドリッジのパーティーへ行こうと思ってる"
「………いっ!」
バチンと、頭で何かが弾けるような痛みが走った。
「大丈夫かい?」
「は、はい……」
ドウェインさんは私の様子を心配して顔を覗きこんできた。実際にかなり痛いけど、お客さんに気を遣わせるほど野暮な店員じゃない。
「この黒い魔物というものの正体がわかってなくて、まだどこからともなく発生する可能性があるらしいんだ。さすがにリナリーちゃんみたいに遠くから一人で通ってる子も学校にはいるからねぇ。危険がある以上は休校という措置を取るしかないよ」
黒い魔物。
魔物や魔族のような魔性のモノは色合いで判断されることが多い。"赤"は火や攻撃性を有することが多く、青は水や温厚さの象徴。そして黒は闇や悪性、危険性を示している。
そのような魔物が野放しになっていれば、大事を取るのも当然と言えば当然ですね。ソルテールも、実際のところ貿易街バーウィッチからそんなに離れていないので、この辺の街の人も注意が必要になるでしょう。
のんびりした性格のこの町の人たちはそれほど気にしてないかもしれないけれど。
「それよりシアくん、実はお願いがあるんだけど……!」
ドウェインさんは調子を変えて、両手を合わせて頭をこれでもかというくらい下げてきた。これはいつもの下りだ。何をお願いされるかは分かっています。
「……なんでしょう」
「ナンシーさんをここに呼んできてくれないかっ」
この人がここへ来るといつもこれです。というより、私がここで働き始める前からずっとナンシーさん狙いでこの宿屋に通っていると、アルフレッドさんから教えてもらった事があります。学校の教師になられてからは頻度は減ったとはいえ、それでもお休みの日にわざわざ足を運ぶのはこのためだと聞いています。
「……はーい」
私は生返事をして厨房へと戻ろうとした。
ナンシーさんはあまりに綺麗なので、ドウェインさんに限らず、こうしてお客さんからナンパされる事がよくあるそうです。その対応マニュアルみたいなものも、実は従業員の間では浸透していました。
1.まず、「呼んできます」と誠意あるお返事をします。
2.厨房へ戻ります。
3.ナンシーさんに報告します。
4.お客さんに「ナンシーはただいま多忙を極めており、対応できません」と伝えます。
これだけ。
これの後、しばらくナンシーさんは厨房で休憩に入り、お客さんが引くまで身を隠します。あまりにしつこい場合には料理長のフィリップさんをお呼びすることになるそうですが、ガタイの良いフィリップさんに声をかけられても宿屋に留まったお客さんはこれまでいないそう。
ナンシーさん的には仕事にならなくて困ってるみたいですが、フィリップさんは娘さんが稼ぎ頭になってくれてご満悦。これはこれでいいと思っているみたいです。
私が厨房へと向かっている最中、ドウェインさんは席を立ってもう一度、私を呼び止めた。
「ま、待ってくれ、シアくんっ!」
「はい?」
「キミがまた戻ってきたとき、ナンシーさんは手を離せないって言い出す事は分かっている」
さすが常連さん。
「さっきも言ったけど僕は今、学校が休みで落ち着いてるんだ……これを機会に、ナンシーさんに僕の本気さを伝えたい」
「はぁ……」
それは十分伝わっていると思いますけど……。
時間さえあればいつも来店して会いに来てくれるお客さんなんて中々いない。それがもう随分前から続いているなら、ナンシーさんだって気づいているでしょう。それでも相手にしてもらえないなら諦めるべきじゃないかなと私は思います。
でも、よくよく考えたら、ナンシーさんも罪な人です。相手にするつもりがないなら、最初からきっぱりお断りのお返事でもすればいいのに。それとも、他の要因でお返事できてないだけなのでしょうか。
ナンシーさんは人格者だというのは間違いない。
自分のことを想ってくれる男性に、失礼な態度は取らないはず。
まさか……ナンシーさんもドウェインさんのことを……?
うーん、考えれば考えるほどわかりません。
大人の恋愛事情というやつですね。
「シアくんだってこれまで好きな男の子くらいいた事があるだろう? その時の気持ちを思い出して、僕のためにも……頼むっ!」
「………」
はて、好きな異性ですか。
生まれてこの方、独りで生きてきたものですから、そんな感情を持ち合わせたことはありません。
幼少の頃から両親に振り回されて仲の良い同世代の友達もいなかった。
冒険者になったときも野良パーティーメインで結局、最後まで―――。
「私にはよく分かりません」
○
コンラン亭での仕事は朝が一番忙しいです。朝食サービスのラッシュの時間帯を過ぎ去れば一息つけます。夜の時間帯はまた別の給仕係の人が当番で入るので、私は午後には解放されます。
仮住まいさせてもらってるリベルタの邸までの帰り道。
私は朝にドウェインさんから言われた言葉を思い出しては何か引っかかりを感じていました。
モヤモヤします。
―――好きな男の子くらいいた事があるだろう?
うーん。
いた事があったでしょうか。よくよく記憶を辿ろうとしても霞がかかったように思い出すことができません。
ぼんやりした気持ちのまま帰宅してる最中、そういえば今日のお夕飯の当番は私だったと思い出しました。料理は何にしようかと考える必要はないです。私が当番のときは、だいたい皆さん鳥料理を期待していますから。
リベルタの邸まで一旦戻って、愛用のロングボウを取ってまた外へ。
狩りのやり方は一通り、父から教えてもらっている。もちろん陸生動物も狩れるけど、鳥を射ち落せるのはあの家で私だけなので、必然的に鳥料理を希望されるのでした。
草原へと出て、周囲を見回す。
まだ日差しは差し込んでいるのに、空気は冷え切っていた。
もう冬の季節が近い。
私はすーっと息を深く吸って、ゆっくり吐き出した。
深呼吸して精神を集中する。
精神を研ぎ澄まして、感覚を極限まで周囲の大気へと傾ける。
それを操るようなイメージを思い浮かべた。
ふわりと私の周辺を囲うように、風が円を描いて小麦色の草の絨毯を揺らした。
その風が私の体を押し上げて、私は宙に浮きはじめる。
取り纏う風は、私流の武装です。
空圧制御――なんと私はこの力を使って、空を飛ぶことができます。
最初は使い方を分かっていなかったけど、最近は練習を重ねてけっこう高くまで飛べるようになりました。風の賢者シルフィード様に託されたこの力は古代のエルフが使っていた魔法らしいのですが、風魔法は廃れてしまったとのこと。使いこなせばこんなに便利なのに、とても残念。
ある程度の高さまで浮かび上がり、私は空中でロングボウを構えた。
狙うは、夕暮れ時を優雅に飛び交う野鳥。
浮遊しながら弓矢を放つのは当初は至難の業でした。弓は本来、自身を定点として固定しない限り、対象となる固定標的や移動標的への狙いを定めることは極めて困難になります。ふわふわ浮いている状態なんかで狙いを定められるはずがないですから。
――となると、それを可能とするのもまた、風の力。
狙撃が難しければ、元より狙いなど定めなければいい話。
私は空へと飛び上がったまま、纏った風に勢いをつけてブーストをかけた。
風を操って、背後に大気を放出する。
スピードがついて、空を高速で翔け抜ける。空中を動き回るのは元から慣れています。アザリーグラードに住んでいた頃から"ヒガサ・ボルガ"の飛翔機能でよく空を飛んでいましたので。
夕暮れ空を優雅に飛ぶ野鳥まで接近し、弓矢を放つ。
狙いのつけどころもなく放たれたその矢には、空圧制御で風の効果を付与しています。エアリアル・ボルガからヒントを受け、射出後でも弓矢の方向変換をすることも空圧制御の力で出来ると閃いたのがきっかけです。エアリアル・ボルガは必中の弓矢ですが、私の放つ風の矢は必中とまではいかずとも、風で軌道をコントロールすることで命中率を高めることに成功したのです。
風の矢は、私の意志で軌道を曲げながら野鳥へと迫った。
気づいた野鳥も逃げ惑うように空を飛び回る。しかし、高速で迫る風の矢から逃れるわけもなく、あっさりと胴体を貫かれて落ちていった。それを私は空を翔けて空中で捕獲し、三羽ほどの食材の確保に成功した。
六人分なら三羽で十分でしょう。
この通り。
鳥を射ち落すなんて、もう慣れたものです。
地上から狙撃するより空中での狩りの方が簡単になってしまいました。
…
そして夕食のお時間。
私は盛り付けた料理皿をそれぞれテーブルに並べていった。
「わーい、今日はシアちゃんのローストチキンだ」
支度を手伝ってくださったリンジーさんが早速テーブルについた。ローストチキンと言ってもただのチキンレッグと手羽先を丸焼きにして割り振っただけですけど。私が当番のときはいつもこれで許してもらえるので楽なものです。
アルフレッドさんとリナリーさん、そして火竜の化身サラちゃんもそれぞれテーブルについたとき、違和感に気づく。全員が揃ってダイニングテーブルに座った時、一つだけ空席ができたのです。
私の隣の席に、未だ誰も座っていない。
「おい、一人分多くねぇか?」
その違和感を口にしたのはアルフレッドさんだった。
私もリンジーさんも、そう言われて初めてはっとなる。
「……? 私は確かに六人分用意したはずですけど」
「六人? この家には五人しかいねぇぞ」
アルフレッドさん、リンジーさん、リナリーさん。
そして、私とサラちゃん?
よくよく数えてみたら五人でした。
何故、私は六人だと思い込んでいたのでしょう。
「大丈夫か、シア。疲れてんのか?」
「………」
あれ、確かもう一人いた気がします。
五人なんてその程度の人数じゃなかったような。それに、この家に私とサラちゃん以外この三人しかいないのであれば、何故私たちがここに住んでいるか分かりません。アルフレッドさんとリンジーさんは夫婦です。リナリーさんはその娘さん。
私は、この家族とはまったく関係のない、ただの冒険者?
サラちゃんはリベルタに因縁があると言ってましたけど、どこに住んでいたかまでは知らなかったはず。確か、住みつくようになったときもペットとして私が連れてきただけです。
この家に住みついた経緯がどうだったか思い出せない。
そんな昔から住んでいるわけではないはずなのに。
「あれー? 私も気づかなかったな。うーん、いつも六人分用意してたような気がするよ」
「リンジーも気味悪いこと言うなよっ」
夫婦の会話を聞き流して、私は考え込んでいた。
そういえば、この家に来る前はアザリーグラードにいました。
私はなぜアザリーグラードを離れたのでしょう。
「ふっふっふ、シア……俺様が教えてやろう」
今まで黙って聞いていたサラちゃんが喋りだした。トカゲの姿をしているから態度がデカくても可愛らしい。サラちゃんはこう見えて元賢者様だ。こういうときにヒントをくれる存在です。
「この残りの一人分はな、俺様のものよ!」
「は? テメェはまた何言ってやがんだ」
アルフレッドさんがフォークを突き立てて睨みを利かせる。
「俺様はこの家では守り神だ。その神に、二人分の飯を供えるのは当然のことだろうが!」
「んなわけあるかよっ! テメェはペットなんだからむしろ残飯でも処理してやがれ!」
「あぁ!? 残飯処理はお前の仕事だ、アルフレッド!」
「なんだテメェ! またぶん殴られてぇのかっ!」
「上等だ。蓄えたこの俺様の火の力、全部お前にぶつけてやろう!」
そう言うとサラちゃんはテーブルから軽く飛び降りて、人の姿へと変化した。全身火で覆われたかと思ったら一瞬で女の子の姿になる。そして振り向いて、拳を構えた。
「こらこら、ご飯の席で喧嘩なんてしないのっ!」
リンジーさんがそこに仲裁に入る。
またいつもの調子です。
いつもの調子。
そのはずなのに、何かが足りない気がします。
それこそ、気のせいというやつですか。
でも私がこの家に住むようになった経緯は一体……。
うーん……。
"―――シアもソルテールに来てくれるのか?"
「っ………!?」
まただ。
また何か思い出しかけたと思ったら、頭痛に遮られました。
今、聞き覚えのない男性の声が一瞬頭をよぎった気がする。
「大丈夫? シアちゃん……体調が悪いなら早く休んだ方が……」
リンジーさんが声をかけてくれました。確かにこの突然やってくる頭痛のことを考えたら、体調は悪い方なのかも。
「はい……すみません」
私は椅子を引いて立ち上がり、夕飯もそのままにふらふらと自室へ戻ることにした。どうも朝から頭が痛い。これは明日にでも熱でも出しそうな予感がする。そんな私の様子を、一触即発状態だったアルフレッドさんとサラちゃんは黙って見送った。リナリーさんは気にせずローストチキンに齧り付いている。
「おい、シアのやつ、大丈夫なのか」
「んー、まぁ最近寒くなってきたしね~……」
階段を昇っている最中、背後から心配の声が聞こえた。
私以外は至って普通だ。
頭痛を訴える様子もない。
なぜ?
この違和感は間違いない。
何か大事なことを忘れてしまっているような気がします。
でも、周囲はそれほど気にしてない。
私がおかしいのか、それとも周りがおかしいのか。
◆
―――好き……だから。
誰かが私を抱き留める。
不安感に苛まれて震える体。
それを包み込んでくれる男の人がいた。
その体に包まれている間、私は安心した。
今まで独りだったけれど。
この人が傍にいてくれれば、私は独りじゃない。
鏡に映れば、そこにいるのは"孤独の海に浮かぶ月"。
それを照らす太陽のような温かい人が確かにいた。
そのゆっくりとした鼓動、体温、力強い抱擁。
―――シアのことが好きだからこうしてる……多分。
私も好きでした。
―――俺はこの先どんな事があってもシアだけは……。
あぁ、私はこんなに愛されていた。
幸せです。
◆
「………」
強い夜風が吹き込んだ。
ガタガタと震える窓と、吹き込む風の音で目が覚めた。
今は何時だろうか。
夕食も食べれずに、自室で倒れるように寝込んでしまっていた。
夢を見ていた。
幸せな夢だ。
……夢は、夢でしかないけれど。
「寒い……」
布団に包まってもなお、寒い。
もう夜中にもなれば尚更だ。
私は意を決して寝台の布団から這い出た。
換気のために開けっ放しにしていた窓を閉めにいく。
閉じられると同時に、部屋が深夜の静けさに包まれる。
なんでしょう、この虚しさは。
私はもっと満たされていた。
それこそ夢の中の私のように。
誰かに守られて、包まれていたはず。
だというのに……。
まだ寒気は続いていた。
どこからか冷ややかな風が漂っているような気がする。
窓はすべて閉めたはず。
じゃあ、この寒気はどこから?
自分の部屋を見渡す。
壁にかけられたロングボウ。
机。椅子。ベッド。他にこれといった物がない。
ただ、一つ……机の上、そこに一際目を引くものが置かれていた。
青白く光る花飾り。
その"花"からは青白い小さな光の粒が煌めいていた。
青い氷の魔力を宿した魔道具だ。暗闇でもほんのり綺麗な光を放つので、夜間灯として使うのに丁度よく、そのまま置いていた。夏はひんやり涼しいけれど、冬場ならそれこそ寒くて使いものにならない魔道具。
――――魔道具"Cold Sculpture"
「これもそろそろ収納しないとです……まったく、こんなものを……」
よく渡してくれたものですね、あの人も。
「……!」
近寄ってその結晶を摘まんだとき、私は確かに気がついた。
気のせいなんかではなかった。
"―――ありがとうございませ"
"―――いや、こちらこそだ!"
いた……。
間違いなく、私には……私には……大好きだった人が……。
この氷の結晶が何よりの証拠。
「………あぁ……」
どうして忘れていたんだろう。
一体いつから……。
私はその瞬間、この魔道具が本当に大事な、"その彼"の痕跡に思えた。
指先が震える。
ほろりほろりと、涙さえ流れ出た。
その涙は、忘れていた自分自身に対する悔しさによるもの。
震えながらもしっかりと握りしめ、その冷たくも温かい結晶を胸で包み込む。
その彼の名前は……名前はなんだったか……。
だめ、思い出せない。
でも、その違和感は確信に変わる。
"―――それは他の人にはない特別な感情だと思う"
好きな人がいた。
そしていつも傍にいた。
どこに行ってしまったんでしょう。
"―――そういう次元の、好きっていう感情だ"
強く抱き締めれば抱き締めるほどに浮かぶ、彼からの泡沫の言葉。
あぁ……氷で出来た彫刻なのに……。
こんなにも温かいのはなぜですか。
次回は明後日(2015/11/3)が祝日のため、1話分更新できそうです。




