Intermission4 ミーシャⅠ
伝統的な――それこそ、そのルーツを辿れば千年の歴史を誇るオルドリッジ家。
魔術師としての特性が高く、その類い稀なる才能によって貴族としての地位を手に入れた。先代からエリンドロワ王国の西方バーウィッチ地方の貿易街バーウィッチにて当時は実効支配までしていた名高い家柄である。おそらく魔術に留まらず、商売手腕においても長けていた事が評され、このような街の統治を託されたのだろう。
古くからその地に住みつくオルドリッジ家のお屋敷は古めかしい。
その伝統的な屋敷に、たった今、新たな命の産声が響き渡った。
「ミーシャ様、おめでとうございますっ! 男の子です!」
「あぁ、私のはじめての……良かった……」
屋敷の三階の一室。
ミーシャが疲れ果てた顔で、しかし安堵と慈愛に満ちた表情で、はじめて産んだ我が子との対面を果たした。助産師をつとめたメイドがその長男を清潔な布で綺麗にふき取り、ミーシャのもとへとそっと寄り添わせた。
微笑ましい家族の姿だ。
『おめでとう、キミのお兄さん……今で言えばアイザイアの誕生かな?』
『………』
俺はそれを見守った。
浮遊した魂としてその光景を見守るメドナさんと俺。
確かに、母さん――ミーシャは悪いようにはされていない。貴族の奥様らしく高貴なお屋敷の、綺麗な世界で生きていた。
そして産声を聞きつけたエンペドが、その部屋へと訪れた。重苦しい顔つきで、ミーシャが休むベッドの隣まで歩み寄った。その表情は我が子の誕生を祝う父親の顔ではない。
「イザイ―――あなた、見てっ……私たちの子よ」
「ううむ」
額に汗を浮かべながら、ミーシャは我が子を優しく撫で、そしてその父親へと視線を向けた。貴族の妻として長男を無事に出産したことに、義務を果たせたという安堵感も含まれているかもしれない。でもその表情は、なにより初めて生まれてきた我が子の誕生を純粋に喜ぶ母親のそれだった。
それに対して小難しい顔を浮かべるエンペド。
「目鼻立ちがミーシャに似ておる」
「そう、かしら……? 初めての子は母親に似るって噂を聞いたことがありますわ」
「そうか……」
"イザイア"と呼ばれた男は父親らしからぬ表情で、それこそ詰まらなさそうにその母子を眺めた。
「長男は違ったか」
「え……? なにか?」
「いや、気にするでない。5歳になるまでは屋敷から出すな。そのときとなったら家庭教師を呼び、魔力鑑定をさせるのだ」
そう軽く言いあしらった後、イザイアは興味なさそうに踵を返して去っていった。
ミーシャは信じられないというような表情を浮かべ、困惑を隠しきれていない。周囲のメイドたちも、初めて見る我が子にこのような反応をする男を初めて見たのか、目を丸くさせていた。
「っ……そんな言い方……ま、待って」
「あとは任せた」
「待って……あなたの子よっ! 顔をもっと見なくていいの? な、名前も――」
「名前?」
素っ気なく部屋を出て行こうとしたイザイアは、名前と聞いて初めて立ち止まった。少し振り返り、顔を上げて何やら考え込む。名前のことなど今の今まで考えてもいなかったというような様子だ。本来、貴族においてその子の命名権は当主が有する。占術師の助言を借りる場合にも当主からの依頼でなければならないというのが通例であるらしい。
だからこそ、妻の臨月が近いのであれば、当主はあらかじめ子どもの名前というものを用意しておくのが普通だった。
だが、イザイアのその様子は、そういった常識からかけ離れた態度。
メイドたちからも奇異の目を向けられていた
「うーむ……そうさな。名前など、ころころ変えられてもこちらが面倒なだけだ……」
その呟きを聞き取れたものはその場にはいなかった。ミーシャも不安そうな目で夫の言葉を待ち侘びている。
「よし、ではその子の名もイザイアとする」
「それは……いったいどういう事?」
「アメリカでは子どもの名前にジュニアとつけ、親が死んだらその名を継がせるという慣例があった。その慣わしに準じよう」
今思いついた、と云わんばかりにイザイアは言い放った。
「あめりか……? どちらのお国の慣わしですか」
「深く考えなくともよい。偉大なイザイアの名を後世に伝えるためにも、私は子どもにもイザイアと名づけたいと考えたのだ。どうだ?」
「あなたがそういうのなら……。あまりそのような慣わしは聞いたことがないけれど」
ミーシャはそのイザイアの安直な、そしてふざけた様子に肩を落とした。お腹を痛めてようやく産んだ初めての子。しかも男の子だというのに、新しく名前すら付けられないとはどういう事だと不満の声をあげたそうに顔を顰めている。
「せめて愛称としてでも――――」
「なに? 私の考えに刃向うでない!!」
「……は、はい……! ご、ごめんなさい……」
ミーシャは明らかに萎縮していた。
記念すべき出産の日、母親になったばかりで不安定な状態だというのに、そんな無粋な態度で、しかも怒鳴られた。ミーシャ含めて、周囲のメイドたちもあまりの不自然さに混乱して身動き一つとれていない。イザイアは理不尽な怒りをぶつけた直後、すぐにその部屋を出て行ってしまった。
しばらく周囲に沈黙が走り、赤子の小さな鳴き声だけが響いていた。
『夫婦仲が冷めていったのはこの辺りからだ。結局のところ、エンペドは早いところ憑依先の子を産ませたかっただけのようだね。時間魔法が扱える才能を持ち、さらには魂の親和性が高い自分と瓜二つの子が―――』
メドナさんが、俺に対して冷静に声をかけてきた。俺は今見せられた"イザイア"の殻を被ったエンペドの様子に握り拳じゃ足りないくらいに腕がぶるぶると痙攣していた。諭すように、メドナさんはゆっくり喋っているけど、俺はというとちゃんと耳を傾ける余裕はない。
『こんなのが……家族なんて、言えるわけ……』
『歪だよね。でも、ミーシャはイザイアと結ばれる変わりに"未来"を奪われた―――つまり彼女にとってこの仕打ちは代償みたいなものさ』
『誰かと結ばれるのに、なんで代償なんて払わなきゃならないんだよッ!』
怒りのあまりにメドナさんに吠えかかる。
これはただの八つ当たりだ。
悪いのはエンペドとケアの二人。
この理不尽な過去を変えることはもう出来はしないんだ。
怒りに打ち震える俺の背中を、メドナさんは優しく撫でてくれた。
『………ふふ、良い怒りだ、ジャックくん。キミは正しい。その素直さはちゃんと母親の愛情のもとで育った証だよ』
そう言うとメドナさんは、もう片方の手を伸ばし、その手を止めた。
『さて、キミには彼女を助ける理由がある。こんな環境でも確かにキミを愛し続けた母親だ。その理由を確かめるためにも、キミが生まれてから家を追われるまでを、振り返ってほしいんだけど、いいかな?』
俺は一瞬固まった。
サードジュニアとして生まれてからの記憶……ぼんやりとしてだが、兄たちに虐げられた記憶しか残っていない。そして捨てられた。捨てられたときも家族なんかと顔を合わせはしなかった。使用人が乱暴に俺を引っ捕まえて縄で縛り、目を隠し、バーウィッチ郊外に投げ捨てられた記憶しかない。
死にもの狂いで街まで戻ったときにはほとんど力尽きて身動きも取れなかった。
そんな辛い過去をもう一度、目を背けずに見られるだろうか。
母親との思い出―――本を読んでもらった覚えはある。
でもどんな会話をしたのか、詳細には思い出せない。
『トラウマと向き合うのは怖いかい?』
『………』
母さんは俺を守ってくれた。
エンペドと闘っている最中さえも。
『いえ……』
幼少期―――それは人生を振り返ったときに楽しい思い出が浮かび上がってもいいような響きだが、俺の場合は真逆だった……。
そうして始まった俺という1人の人間の"物語"。歪んだ性格になっていても不思議じゃない。屋敷で受けた扱いは要らない子。実際は父親の新しい肉体を醸成するために作られた、仮初めの人生。
だったけれど―――。
「おー、よちよち。お父さんは機嫌が悪かったんでちゅかねー」
母さん……。
生まれたばかりの長男を優しく抱くミーシャ。
自分の過去と向き合わないといけない。
エンペドと闘う前から――それこそ最初から、俺は家族に対して逃げ腰だった。
心が既に負けていた。
その心と向き合わない限り、きっとエンペドにはまた負ける。
『お願いします』
『………』
メドナさんは俺の決意を真剣な表情で受け止め、軽く指をぱちんと鳴らした。そうして世界は明転する。
過去を清算しにいこう。
○
サードジュニアが産声を上げたとき、屋敷の人間は長男のときほど騒いではいなかった。
それよりも、長男が5歳となって初めて魔力の鑑定をした後日のことだったから、使用人たちの噂話もその話題で持ちきりだった。なんでも、長男の魔力は5歳児の段階で魔法大学に在籍する平均的な学生の魔力総量と大差なかったのだ。間違いなく、将来は有望だという話だ。
そんな浮かれた話で賑わう中、俺はひっそりとこの世に生を受けた。
イザイアは見回りがてらといった感じで、ふらふらと分娩直後のその部屋に入ってきた。
ミーシャも三度の出産経験で慣れた様子だった。どうせまたエンペドに素っ気ない態度で帰られるんだろうと予想しているようだ。夫が入ってきても冷めた態度で目線をそらした。
相反して、イザイアはその子の顔を見たときに目を見開く。
驚いたのか?
慌ててベッドに駆け寄って、その顔をまじまじと覗き見た。
「おぉ……こ・の・子・だ……!」
赤子の顔なんてほとんど一緒だ。だが、それでもイザイアはなにか感じるものがあったのか、長男、次男のときとはまったく違った反応を見せた。期待を込めた……ある意味、初めて見せた父親らしい反応だった。
「……?」
母さんもその態度に困惑を隠せない。
「よく産んでくれた。ミーシャ……ありがとう、ありがとう……」
ありがとう―――3人目の子どもを産んで初めて聞いたその言葉。今までの子と何が違うのか理解できないといった様子だ。ぼんやりとその父親の不可思議な様子を眺めて、母さんは何一つ喋らなかった。
…
結局その三番目の子にも名前はつけられなかった。
だが、ミーシャはそのイザイアの様子が変わったことに一縷の望みのようなものを感じた。自分が思い描いた理想の家族を今からでも作れるんじゃないかと……そういう願いを込めて、長男や次男以上にこの子を大切にしようと決意したようである。
『キミは生まれたばかりの頃は両親に……それこそエンペドからさえも大切にされていたようだよ』
確かに。
俺が生まれてからエンペドとミーシャのやりとりを場面ごとに追っていく。
そのほとんどで、毎回微笑ましい光景が続いていた。
幼い俺は虐待をされる様子もなく、母さんは俺にベッタリだ。
エンペドも頻りに俺の様子を見に来ては、母さんに子どもの様子を聞いていた。母さんも嬉々として俺の様子を報告する。今日は一日中笑っていた、泣いていた、おもちゃの棒を振り回していた、そんな他愛ない会話をして、自然と夫婦仲も取り戻せてきたように思える。
そうして1年経ち、俺も順調に育っていった。
エンペドが部屋から立ち去った後、母さんは自室の中でずっと俺に喋り掛けていた。
「あなたは私の希望よ。お父さん……ううん、ちょっと変になったイザイアくんと家族としてやり直すチャンスをくれた……。あなたのおかげ。愛してるわ」
そうして優しく額にキスをして、俺が寝静まるまでずっと見守っていた。
そこにいるのはただの親子。
幸せを噛みしめる母と、その腕に抱かれて寝る息子の心温まる光景だった。俺はそんな光景を目の当たりにしながら、これから始まる地獄の予見して、より一層不安が増した。
赤子の俺が寝静まった後、母さんは「そうだわ」と言ってある物を棚から取り出した。小型のガラス盤から垂れ下がるベルト。それを持って俺のもとへと……。
一般的に魔術師や冒険者の間で流通した魔力測定用の魔道具。
『マナグラム……!』
『彼女の不安要素が一つ浮上した瞬間だ』
その結果は、先を見なくても知っている。
俺の魔力は虚数の魔力……現状のマナグラムでは測定できない。
魔力ゼロという結果しか出てこないのだ。
「お父さんがあれだけ期待する子なんですもの。きっとお兄ちゃんたち以上に凄い魔法使いになるに違いないわ」
上機嫌に母さんは俺のお腹にそのベルトを巻きつけた。そうして青光りする文字盤を見て、母さんは声にならない悲鳴を小さくあげた。
「そ、そんな………!」
その結果を見て動揺が隠せていない。
魔力が無い。長男や次男が生まれたときすら無関心だった父親に、唯一愛された我が子。ようやく期待されて生まれてきたその子の身体に……魔力がない。
そんな事態、ミーシャには受け入れられるものではなかった。
「な、何かの間違いよね……」
母さんは落ち着き払ったように言いながらも、結果をもみ消すようにマナグラムは慌てて取り外した。
○
それから2年ほど時間を早送り。
母さんは諦めきれない様子で、半年に一回くらいのペースで俺にマナグラムを装着させて魔力を測定していた。だが結果は変わらない。いつまでもその数値はゼロのままだ。3歳となる頃には、長男、次男ともども魔法を使い始めていたのに対して、いつまでも魔力の面影すら感じ取れない。……焦るのも無理はなかった。
ようやく時間をかけて取り戻しかけていた家族の形……それがまたしても崩壊しかけている。
「なんてこと……」
「お母様、どうしたの?」
俺は3歳を迎えて普通に会話できるようになっていた。赤子のときはまだ何も思わなかったが、あらためて喋る自分を見返すと小恥ずかしさが込み上げてくる。
事情も分からない様子で、母さんの不審な態度に小首を傾げる俺。肩に巻かれたマナグラムを取り外されて、それが何なのかも分からずに茫然と眺めていた。
「な、なんでもないの……。気にしないでね」
そこに突然、部屋に入ってくるイザイア。
「サードジュニアの様子はどうだ?」
「お父様っ」
「おぉ~おぉ~、精悍に育ってきておる。さすが我が息子だ。成長が楽しみであるぞ」
母さんは、いけないと思ってマナグラムを後ろ手に隠した。
魔力ゼロという結果を見せてしまったら、イザイアに失望される。そしてまた閉ざされたこの屋敷の中、冷め冷めとした家族に舞い戻ってしまうのだ。
「なんだ、ミーシャ。どうかしたのか?」
「い、いえ、なんでもありませんわ……」
母さんは、訝しむイザイアの鋭い視線に思わず冷や汗を浮かべていた。
もうこの時から母さんのの中では戦いは始まっていたんだろう。
この時点でエンペドがマナグラムの結果についてどういう理解なのか知る術はない。だがこうして俺を守ろうとしてくれたんだ……。
「ところでミーシャ、使用人たちに命じてサードジュニア用に絵本を買ってきた。これをよく読み聞かせるように」
「あら―――」
珍しい、と言いかけてミーシャは口を噤んだ。
今のイザイアに皮肉を投げかけようものなら、怒鳴りつけられるにとどまらない。そんな恐怖感はまだ拭いきれてなかったようだ。
「これは……?」
「なに、魔術師として育てる上では道徳教育も必要だろう。これは古代の一流魔術師……いや、恐れ戦かれた魔術師が斃されたエピソードがまとめられた絵本だ」
「"アザリーグラードの迷宮"……ですか」
エンペド・リッジ――こいつ自身の物語だ。この絵本のことを俺は今でもしっかり覚えている。子どもの頃にいくらでも聞かされた。母さんはその絵本を受け取って父親から珍しく与えられたプレゼントに感極まった様子だ。
その絵本は俺の記憶に刷り込まれている。
結果的には、この絵本による影響も含めて、俺は冒険者として迷宮に挑むようになった。つまり、このエンペドからの贈り物は陰謀あってのもの。リゾーマタ・ボルガ奪還をより確実のものとするための布石の一つだ。――――だが、そんな狙いがあったなんて母さんに気づけるはずもない。
…
その日の晩から、母さんは純粋にその絵本を俺に読み聞かせてくれた。
ほぼ毎晩。
子ども用にしては大きすぎるその寝台に、幼児の俺は贅沢に踏ん反り返って、ふかふかの布団の中、母親の脇で絵本を眺めていた。
「―――昔々、アザレア王国は緑豊かな大地に囲まれていました」
そうして読み聞かせられる物語。三歳の俺は真剣な顔つきでその絵本を眺めていた。その先にどんな世界を思い描いていたか覚えてはいない。刷り込まれていくその物語に、只々夢中になっている。
すべて読み終わった時、俺は母さんに質問した。
「ねぇー、賢者さまにはどうやってなれるのっ?」
「え……賢者さま? そうね……」
賢者とは、魔術師の最高位の称号だ。
つまり、当代のイザイア・オルドリッジにも勝るとも劣らない、云ってしまえば、それすら飛び超えるような実力が必要となる。ミーシャはそれを知ってか知らぬか、俺の純真無垢なその問いにどう答えていいものかと困っている様子だった。
「たくさん勉強して……たくさん世界を知って……みんながあなたを認めてくれるようになったら……」
歯切れの悪いその返事に幼い俺は目を輝かせてこう言った。
「じゃあ、俺も賢者さまになる!」
「それは―――」
それは無理だと、この時点でミーシャだけが知っていた。
魔力のない子ども……つまり魔法を使うことができない。賢者になるどころか、その入り口にすら立つことは出来ないのだ。そんな息子の運命、将来を予見してミーシャは目元を震わせた。
「賢者さまになって、悪い魔法使いをたくさんやっつけるよっ」
「………」
ミーシャは何も言い返せない。
一番愛した息子の夢……それを応援したい気持ちと、どうしてこの子が魔力を持たずに生まれてきてしまったのかという理不尽な悔しさの中で、ミーシャは涙を流した。
「お母様ぁ……? なんで泣いてるの?」
「え……あ…………ごめん……なさい……ごめんなさいね」
「"えんぺど"が怖くなったの?」
幼い俺は自身の母親が泣く理由など知る由もない。自分の尺度で考えた結果、絵本に出てくる"エンペド"を、母親が怖がっていると判断したんだろう。
「大丈夫だよっ、お母様!」
幼い俺は布団のシーツで必死に手を伸ばし、母さんの目元を拭った。そして生意気に、どんな運命が自分に待っているかも知らずに無邪気に笑った。
「俺が、お母様のことを守る! えんぺどだってやっつけてやるんだ!」
『………』
この頃の方が、俺は―――。
「えぇ、そうね。あなたは強くなる……お母さんのことを守ってね。愛してるわ」
そうして母さんは幼い俺のことを抱きしめた。
額に軽くキスをして、頭を優しく撫でてくれた。
俺はそんな母さんの事が大好きだった。
子どもの頃からずっと……。
だから絶対に守ろうと決意した。
そう決意したことは、今でも忘れてなんかいない。
子どもは無邪気なものだ……。
まだ世界も、自分自身のことすら何も知らない。
ただ、その純粋な思いだけはホンモノだ。
今の今まで俺が忘れていた、家族に対する愛が確かにあった。
次回は明日(2015/11/1)の午前中までに更新します。
次で追憶編のようなものは終わりです。もう少しだけお付き合いください。




