昔々あるところに_006
昔々あるところにモグさんという貧しい青年がおりました。
モグさんはひなぴょんという真っ白いウサギを飼っていました。
モグさんはひなぴょんのために道すがら雑草を引っこ抜いたり、
近所の八百屋で、入らなくなった野菜くずをもらってきたりして与えておりました。
ペット用にラビットフードなるモノが売られていることは知っていましたが、
それを一度もひなぴょんに食べさせることはできませんでした。
買うお金がなかったからです。
ある日、モグさんは駅前で「
ウサギワンダーランドでラビットフード無料進呈」
ののぼりを目にしました。それはウサギキャラ、ぴょんすけのキャンペーンでした。
モグさんが、会場に行くと「ウサギのぬいぐるみを着て、ぴょんすけになりきった方にもれなくラビットフード無料進呈です」と言われました。
見ると、何体かのぬいぐるみぴょんすけが、子供たちの間で飛び跳ねていました。
『よし、ひなぴょんのためにぼくもやってみよう……』
モグさんは、ぬいぐるみを着て、ウサギの群れにまじって飛び跳ねました。
「もぐさん、ありがとうございます。見事ぴょんすけになりきっていただけました。
ラビットフードを差し上げます」
係の人にそう言われ、とてもおなかのすいていたもぐさんは
ぱくぱくむしゃむしゃ、ぼりぼりがりがり
とラビットフードを全部食べてしまいました。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ