第ニ話 6年前の仕事‐下
学校が忙しく、遅れました。今後も更新は、月一位になりそうです。
軽やかな音と共に、エレベーターの扉が開いていく。
現れたのは、黒い服を上下に着込み。黒光りするガントレットを身に付けた、10歳位の少年が一人。ただそれだけ。
他にも誰か居るのではないか?と思い、装備している銃器のAK47‐カラシニコフを構えながら、注意ぶかくエレベーターの内部を覗いて見て見るが、どうやら少年以外誰も乗ってないらしく少年が降りた後に扉を閉めて一階に降りていった。
やって来たのが10歳位の少年が一人なので若干警戒を解き、銃を下ろしながら少年に話を聞いてみる。
「……なんだ?坊主。何処から来た?」
「……………」
「……ちっ、無視かよ。なんなんだ?このガキ。…なあ、銀。こいつ何だと思う?」
いきなり話を振られた水瀬だが、ある程度聞かれる事を予想していたらしく。
「…さあな?ただ………ただの迷子って事はなさそうだ」
「だよな〜………おい!坊主、何もんだ?」
「…………闇……」
さっきまで沈黙を保っていた少年が答えたのには少々驚いたが、少年が答えた答えが気になった。
「闇?何だそりゃ?なあ銀、お前闇って知ってる?」
「闇か………確か前に、傭兵仲間に聞いたことが有るような気がする……って!お前、一緒に聞いてたんだから覚えてないのか!?」
「ん〜〜〜………わかんね〜。全然覚えてない」
「はぁ………全く。」
相棒がこんなにも物覚えが悪いことに呆れ、ため息をつきつつ。
自分が覚えてる事を話すとする。
「確か、闇ってのはどっかの組織が使ってる殺し屋の隠語だった気がする。どこの組織だったかは思い出せ無いが……」
「…だとしたらこいつが殺し屋か?こんなガキが?おかしくね?もしも、それが本当だとしたら。何でこいつは、俺らがこんなにも隙を見せて喋ってるのに殺さないで待ってくれてるんだ?」
さっき一言つぶやいただけでまた黙り込んでしまった少年を、指差しながら斎藤は、微かな違和感を感じていた。
それは様々な戦場を経験した事によって身についた、ある種の第六感とでも言うべきもので。微かにだが空気の流れが変わった事を感じ取っていた。
どうやら水瀬も同じようでAK‐47‐カラシニコフを構えながら少年を観察する。まるでどんな些細な動きをも、見逃さないように。
敵の元傭兵二人の何かを探るような目線の中。少年は少し、警察が聞いたら速攻で止めてきそうな事を考えていた。
(はぁ……少しめんどくさいな……人質無視して展望室ごと吹き飛ばしちゃえば良いのに)
(何で、爆薬で展望室爆破!とか、魔術でタワー事消滅!とか、特殊部隊一斉突撃!とか、やらないんだろう?その方が楽なのに。やってくれればお昼ご飯我慢してこんな所に僕が来なくとも良かったのにな)
(しかも、今回の仕事は給料無し。武器弾薬実費って本当にケチだな〜。せっかく出来たって喜んでた彼女の誕生日に、金が勿体ないなんて言ってケーキもプレゼントも買わないから
『この守銭奴!!』
なんて言われて振られるんだよ。全く、振られた次の日に俺は金をバンバン使うぞ〜!!なんて叫んでた癖に使わないで貯め込むから、守銭奴って呼ばれるのに。そこんところを理解してくれないとね。まあ、僕は銃を使わないから出費はしないけど。その点、信さんとか神楽さんとか大変そうだな。銃弾バンバン使うし、やっぱりそうゆう所が似てるんだよな〜。やっぱ双子だからかな?)
自分の組織のトップに対して随分と心の中でぼろくそに言い放ちながらも、同じ職場の個性的な双子の事を頭に描きながら、敵の事を観察する。
(う〜ん、こんなの相手にしてもつまらないし。とっとと終わらせて帰ろうかな)
いい加減、動かないのに焦れたのか斎藤が銃を構え直し、引き金に指をかけた。
(武器はやっぱり……)
そこまで考えたところで、斎藤が引き金を引いた。
ズダダダダダダダダダ!!
いきなりのフルオート射撃。少年は避けられる筈もなく。
その次の瞬間には銃弾で身体をえぐられ、己の血で身体を真っ赤に染め上げた少年が倒れて………………
いなかった。
少年を貫き真っ赤に染める筈だった銃弾は、少年に当たる以前に銃から放たれていなかった。
否、放てなかった。
引き金を引いた瞬間。目に見えない斬撃が放たれて、銃や弾薬、銃を構えていた腕までもが綺麗に細切れにされた。
「………なっ!?大丈夫か!?斎藤!!………有り得ねぇ!?何しやがった!?」
予測不可能な事態にショックを受けながらも、水瀬が仲間に確認を取る
「ぐっ!ぐあぁぁあぁぁぁあぁぁ!!!」
斎藤は返事どころでは無いらしく、斬られた右腕を押さえ歯を食いしばりながら、痛みに耐えていた。
そんな中、少年はたかが腕一本失っただけでパニックになる二人を見ていたが、見るのに飽きたらしく。
「…早めに終わらせてあげるよ。……なに、すぐに楽になるよ」
少年に尋常じゃない恐怖を感じた水瀬は
「何なんだよ!?お前は!?この化け物!?」
水瀬に面と向かって化け物扱いをされたが、たいして気にしていないらしく。
「いいでしょう。僕が何物か、どうせ死ぬ貴方達だ、その質問にはお答えしましょう」
言い放ちながら、ゆっくりと二人に背を向け
「僕は、殺し屋派遣組織【克無】所属の二つ名持ち」
そのままエレベーターのボタンを押し
「神咲終。二つ名は、殲奪者。」
エレベーターの扉が開き、乗り込む。
「世界を滅ぼす者。故に君達の命を奪う者。……さようなら、弱き者よ」
エレベーターの扉が閉まり始め。徐々に徐々に少年が見えなくなっていく。そして扉は、閉められた。
「何なんだ、今のは?………俺達は、助かったのか?……助かったんだな?……やった、助かった………」
「……助かった!!やっ………」
それが水瀬銀次と斎藤武が最後に発した言葉だった。
生き残った歓喜から。瞳から涙を流しながら生きている事を喜んでいる時
次の瞬間。二人を襲ったのは、再びの見えない斬撃だった。二人は不可視の刃に細かく寸断され、何故死ぬのかわからない内に自らの血に沈みながら、絶命した。
後に警察の鑑識は、悩むことになる。
二人は何故死んだのか?また、二人は何によって細切れにされたのか?
それは、誰にもわからなかった。
ただ、三つだけわかるのは。
一つ、これをやったのは、あの少年だと言う事だ。
二つ、あの少年は魔術を使わなかったらしく、実際のとこはわからないが少なくとも、少年の力は最低限Aランク以上である。
三つ、克無所属の殺し屋は、とてつもなく恐ろしいので、絶対に敵対してはいけないとゆうこと。
ちなみに皆に忘れられていた人質の少女は、一度眼を覚ましたのだが、細切れにされた犯人を見る事になってしまい再び気絶してしまった。その後警察にきちんと保護されるまで気絶していた。
少女は記憶を、魔術で消してもらうまで肉料理を食べられなかったらしい。
一方帰った少年の方は
(今日のご飯何にしようかな?食堂で焼肉定食か、すき焼き定食のどっちかだな。)
と、悩んでいたらしい。