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69 というわけで、改めて火山に採取へ行こうとしたら

「雨が上がって良かった」


 翌日、夜からの雨が上がったので、私は火山へ採取へ行くことにした。

 十分休んだし。

 三か月という見通しがついた分、立ち止まっている方が怖い。


 昨日も錬金術の本を見ながら考えて、三か月でどうにか作れそうな物のうち、武器になりそうな品を見つけたのだ。

 絶対に実験して、実用段階にこぎつけたい。


「目指せ爆弾」


 コーンで作ったポンLV2が、かなり強かった。私の予想以上に。

 だから普通の爆弾を作ったら、もっとすごかろうと考えたのだ。

 カールさんも賛成してくれた。


『兵を派遣するとあの小僧が言っておったが、それでも主戦力になるほどは出せないであろう。だから爆弾は沢山あるべきだな』


 そして付け加える。


『大量に作って、周辺領地などにも売れば大儲けできるのではないか?』


「あははは。そうなればいいですけど……。でも大量に作るのが大変なんですよね。籠城に必要な分は、何がなんでもやりますけど」


 籠城中から、どうやってもここは攻略できないと思わせたい。

 爆弾が沢山あればそれができるかもしれない。

 そうすると元々ハルスタット領は見るべきものがある土地ではないのだし、損害を出したくないからと、敵には寄ってこなくなるだろう。


『先日のように、メイド達に手伝わせてはどうだ?』


 私は首を横に振る。


「最初の触媒作りが、けっこう繊細で。まず魔力をやみくもにやると悪臭が漂って素材もダメにしてしまうし。あとは多少なりと勉強が必要になるんですよね。速習してもらうとして、一日中没頭してもらえば一週間でなんとか……」


『それならいっそ、錬金術師の弟子をとるのはどうなのだ? 沢山いれば作れるのではないのか?』


「うーん、一つ問題が」


『なんじゃ?』


「錬金術師の勉強を一週間やってもらうとして、それができる時間がある人を探すのって、意外と難しいんですよ」


『む……そうであった』


 生きている以上、みんな何かしら仕事をしている。

 貴族の子供でもなければ、小さいうちから家の手伝いをするのが普通なので、暇な子供は本当に小さい子達しかいないだろう。


 しかも農業等は人手がほしい仕事なので、こちらが雇用すると言ったところで、人手を手放したくはないはず。

 そもそも、町の人の中に、本をすいすい読めてしまう人がどれくらいいるのか? という問題も横たわっている。


 そして文字が読めるだろう人は、たぶんみんな忙しい。

 ハルスタット領の未来のためだと言って錬金術の方に引っ張ると、今度は領地運営や館を保ったりする仕事が回らなくなるだろう。


『ままならんもんだな』


「そうなんですよね……。とりあえず採取だけは、他の人に手伝ってもらって、私が調合をするだけの状態にできればなんとか、と思っていますけど」


『また採取に行くのか?』


 カールさんに言われてうなずく。


「はいもちろん。代理の人に採取してもらう時に、何が欲しいのかも教えておくために、今日も採取に行くつもりです」


 そして私は準備する。

 しっかりと石だらけの斜面も登れるブーツに、採取物を入れる袋を用意。

 小さなシャベルに手袋、万が一にも火ネズミに攻撃された時のため、爆発物も携帯。

 あとは水や万が一のための食料になる焼き菓子を持って、部屋を出た。


 そして館の外に出てみると……。


「あれ」


 今日はリュシアンも同行すると言っていた。

 地形のことはテオドールに任せているし、必要な連絡は手紙を書き終わったから大丈夫だと。

 他に、私の採取に付き添いなれているフレッドとニルスの二人も指名していたのだし、リュシアンが行くのなら彼の騎士や兵士も数人ついてくるのはわかるけど。


 彼らの他に、保護した子二人が一緒にいたのだ。


「この子達も連れて行くの?」


 問いに答えたのは、リュシアンだ。


「出かけようとしているところにね、この子達と会って。今は私や配下の者もいる分だけ館の人間が忙しいだろう? それで働きたいけど、ついて学ぶ時間が誰もとれないらしいから。それなら運動がてら連れて行こうかと思ったんだ」


「運動がてら……になるかな?」


 そこはちょっと不安だ。

 元気になったとは聞いていたけど、長くひもじい生活を送り、さらには最低でも二週間は


「山までは馬車に乗るし、厳しそうな様子があれば、うちの部下が馬車に戻らせるよ」


 リュシアンはそう言う。


「なんにせよ、動かないとどんどん体力がなくなるしね」


 体力は大事だ。

 三か月後、さらに他の場所への移住をするにせよ残って頑張るにせよ、長く走り続けられる持久力とか、体力が必要になってくるから。

 まぁリュシアンのことなので、無理はさせないだろうし。


「うんわかったわ」


 うなずいたとたんに、リュシアンがとんでもないことを言う。


「よし、これで役に立てたら弟子にしてもらえるよ」


「わーやったぁ!」


「ありがとう閣下!」


 子供たちは喜んで飛び跳ねる。


「え、弟子ってちょっと、聞いてな……」


 困惑するも、喜んでいる子供の気持ちに水を差したくないので、リュシアンの腕を引っ張って耳打ちする。


「どういうこと? 弟子ってなに?」


「昨日、なんでかあのカール氏がやってきて。弟子にできそうな心当たりがあったらよろしくって」


「カールさんが出張してたの!?」


 弟子の話はしていたけど、まさか他の人の所に行って頼み事をするなんて。

 今までそんなことしたことなかったんだけど……。

 同じ魔術師同士だから、気安く頼めると思ったのかな?


「採取の手伝いをしたら、錬金術に興味が持てるかわかるだろう? 面白がれないと続けられないし身が入らないって、錬金術の師匠も言っていたし」


「そこを判断基準にするのはいいけど……」


「あと、この子達は文字が読めるらしいよ」


「え!?」


 ここが一番驚いた。


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