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66 今後に必要な物は?

「地形? 一応地図があるはずだけど……」


 私は口を挟まないようにしていたけど、内心疑問に思っていたので聞いてみた。


「地図はほとんど、道に迷わないようにするための物だ。でも攻め込まれること、それを攻略しようと思うのなら、地形図が必要なんだ。何がどう使えるかわからないからね。君も、できるだけ攻め込まれそうな場所を塞がなくてはならないよ」


「塞ぐ……橋を落とすとか?」


 英雄譚で読んだことがある。

 谷にかかった橋を落として、難を逃れたりするシーンがあったから。


「そうだね。橋を落とせるよう準備しておくのもいい。通常時というか、それまでの間は、通行を阻害されると困るだろう? だけどあらかじめ備えておけば、橋を落とすのも早くなるから」


「そうね……。問題の時期が来るまでは、食料を買ったりとかしたいし。今はまだ橋もそのままにしておきたい」


「だろう? そういえば、食料なんかは大丈夫かい? それなりの数が必要になるけど……」


 うん、派兵してもらうのもそうだし、籠城するつもりならかなり必要になる。


「一応錬金術の品を売ったお金でと思っているんだけど。火竜のことがあったせいで、あんまり進んでいる気がしないというか」


 薬の材料はある程度揃えたので、よく効く薬を大量生産して売りさばきたいと思っていたのだけど、キノコを増やすのに時間をかけすぎてしまった。

 かといって、雨キノコはそうそう売れる品ではない。

 食べられなくはないけど、水で晒したり処理が面倒なのと、輸送に適してない。


「それで、君の仕事についてなんだけど、件の媒介はどんな感じだい?」


 リュシアンにも頼まれていたんだった。

 確か山賊狩りの時と、栄養剤の時に、余分に作った物がある。


「たぶん50くらいはあると思う」


「まずそれを私が買おう。そのお金で、先に食料の調達をしておくといいよ。依頼をして、運んでもらうんだ。その運んでくる間に薬を作っておいて、商人に売買の契約を持ち掛ければ、薬を持って帰った商人が、また対価の麦なりコーンなりを持ってくるよ」


「なるほど。今からすぐ、商人が行き来する用事をつくって、こちらから町までいちいち売りに行かなくても良い状態にするのね」


「そう。薬を売った分を、全部食料にして持ってこさせて、その時にまた作った他の品を売ればいい。近い町から往復させると一週間はかかるだろうから、その間にあれこれと君も調合できるし」


 私はうんうんとリュシアンの話を聞く。

 追いかけっこ状態だけれど、すぐに調達を始められるのは私の精神状態にもよさそうだ。


「薬の出来がよければ、他の商人も取引したがるだろう。そうしたら値段を上げることもできる。君は忙しいけれど、調合の方に専念して……。兵士を集めたり、配置を考えるのはテオドールがやるだろう」


「うん、任せようと思ってる。実際のそういう差配はよくわからないから」


 しょせん、私は本でちょっとだけ耳年増になっているだけの状態だ。

 誰もいなければやるしかないけど、知識がある人がいるのだったら任せて、万全の状態にしたい。


「できれば、調合の手伝いを誰かにさせて、攻撃手段になる物が作れるといいんだけど……。できそうかい?」


「うーん、火山で色々採取できそうだったら、もうちょっといい物が作れると思う。今の所はまだ、相手を脅かしてちょっと怪我させる程度の物しか作っていないの」


「へえ? これまでに作った物を教えて欲しいな」


 リュシアンが興味深そうに聞いてくるので、今までに作った物を思い出す。

 薬を作って、山賊対策にポンLV2を作った。

 その程度なのだけど、話しているうちにケーキを食べきった。

 するとリュシアンが満足そうにうなずく。


「よし、少し顔色も良くなったみたいだね」


「そ、そう?」


 ケーキ食べただけでどうにかなるのかな?

 首をかしげていた私は、それじゃ工房へ行こうかと思い立つ。


「じゃあさっそく……」


「まだ今日は休憩だよ、シエラ」


「でも昨日も休んだし、あと少ししか時間がないもの」


 抗議したけど、首を横に振られる。


「魔力って使った分は回復はするけどね? その魔力を回復させるために使った体力なんかは、戻るのに時間がかかるんだよ。魔術師だって無理をしたら、寿命前から寝込むはめになるんだ」


 諭すように言いながら、リュシアンは立ち上がり、私の横にやってくる。


「というわけで、お手をどうぞ? シエラ」


「え……なんか監視されてるような」


「こうでもしないと、すぐ逃げるだろう? 君」


 なんでバレた。

 こっそり部屋に戻る途中で、リュシアンと別れたらすぐに工房へと思っていたのに。


「休憩も仕事のうちだよ」


「でも、手はいいから。自分で歩けるもの」


 ……また太さ確認されそうだしと思っていると、リュシアンがにっこり微笑む。


「これはエスコートだけだよ。手の平だけなら問題ないだろう? マイレディー」


「うっ……」


 マイレディーと呼ばれた瞬間、ドキッとしてしまった。

 まったく……顔のいい男は恐ろしい。

 私が勘違いしたらどうする気なんだろう。

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