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64 避難通路探し 2

 三人いるうちの上二人だ。

 もう一人いたが、その一番小さかった子は、昨日町の子供を引き取ってもいいという夫婦が見つかったので、対面と一緒に過ごせるかどうかを確認していると聞いていた。


 本人が望むなら養子に出していいだろうと決定されたのは、山賊の仲間にされていたボリスの身元が証明されたからだ。

 ボリスの身元と話が証明されたので、それと齟齬がない子供達の話も本当だろうと推測できた。

 本当に孤児なら、身元を探しても証明できる物が出てこないので、確認に時間がかかるしね……。

 

 残り二人は、もう13歳だという。

 この館で働きたいという気持ちが強いそうで、もう少し体調がよくなったら、少しずつ教えていくようだ。

 二人は無理な生活を続け、そのあげくに拉致されていたので、回復するまでに時間がかかるようだ。

 たぶん、部屋にいるのがつまらなくなって、外へ出ようとしているのだと思ったのだけど。


「ご領主様……」


 先日、私の質問に色々答えてくれた方の黒髪の男の子がぽそっとした声で言う。

 何か用事があるのかもしれない。


「どうしたの?」


 聞いてみると、子供二人は顔を見合わせて、ちょこちょこと私の前にやってきた。

 栄養の乏しい生活だったせいか、背が伸び悩んでいるので、私の肩ぐらいまでしかない二人に「まだまだ小さい子」という印象を持ってしまう。


「領主様、探し物?」


 もう一人の金髪の子が尋ねてきた。


「探し物というか、お城のことを詳しく知っておきたいのよ。通路を全部理解しているか、自信がなくってね」


 探し物は避難通路だとは言いにくい。なのでちょっとごまかしたのだ。

 でもそれを聞いた二人はぱっと顔を明るくした。


「毎日探検してるから、よく知ってるよ」

「秘密の道、教えてあげる!」


 二人は輝くような笑顔でそう言うと、私達を先導して駆け出す。

 もしかすると、役に立つところを見せたいのかもしれないな、と思いながら私は二人の子供にゆっくりついていくことにした。

 リュシアンも同じだったようだ。


「居場所を作るために、周りに気に入られようとがんばっているんだね」


 かすかな声だったので、かなり先に行ってしまった二人には聞こえなかったはず。

 私はうなずく。

 親しくなって、笑顔で話してくれる人が増えたら、そこにいると安心できるようになる。

 そのために二人は、周りの大人達と交流しようとしているんだろう。

 私達を手伝おうとするのも、その一環だ。


 そんな風にほほえましく思ってたけど、二人は想像以上にすごかった。


 二人が「ここ!」と教えてくれたのは、使用人の通路の横。

 屋上からの階段の途中にある、踊り場だ。

 物を置くのか? と不思議に思ってたへこんだ棚になっていた場所が壁にあるのだけど。


「えい」


 子供の一人が壁の角を蹴ると、棚のへこんだ分だけ、壁がずずずと後退していく。

 そして床に、下へ降りる階段が現れた。


「あった……」


 まさに探していた避難通路らしき物だった。

 リュシアンが感心したように言う。


「なるほど。この二人が魔力が強いのは本当だし、勘もいいみたいだね。本当に魔術師になれるかもしれない」


「え? どうしてわかるの?」


 魔術師は、本人が魔術を発動するまでなれないと聞いたのだけど。


「ほらここ」


 リュシアンが指さしたのは、さっき黒髪の子が蹴った踊り場の角。

 そこに小さな魔石があったようで、透明な輝きが見える。

 親指の爪ほどの大きさだったけど、暗いし角でわかりにくいので全く気付かなかった。


「魔石の魔力を感じたってことなのかな?」

「なんとなく、じゃないかな。そうだろう?」


 リュシアンに尋ねられた男の子はうなずく。


「ここのあたりがちょっと他と作りが違う気がして……。あちこち押したり蹴ったりしてたんです」


 本当に勘で避難通路を当ててしまったようだ。


「すごいわ、探していたのはこれなの。ありがとう」


 お礼を言うと、二人は照れたように微笑む。

 可愛いなぁ。


「それじゃ、中がどうなっているのか入ってみましょ……」


「シエラ」


 リュシアンに腕をつかまれて止められる。


「さすがに何年も使っていない避難通路だし、もしかしたら魔物が潜んでいるかしれないから。騎士や兵士達に確認を任せよう。君が入るのは、安全を確認してからだよ」


「う……はい」


 ほぼ戦闘ができない私では、対処できないことが起こるとまずいのはわかる。

 だから大人しくうなずいた。


 その後、子供達にも中には入らないように伝え、リュシアンと館の方に戻った。

 リュシアンはすぐにジークリード辺境伯家の騎士を呼び、避難通路の確認を任せた。

 彼らはそういうことも手慣れているようで、ちょっとの説明ですぐに行動をする。

 ついでに騎士を呼んでくれた執事にも、そのまま了解を取るという鮮やかさ。

 一応他所の領地の人間だから、領主である私が許可したことでも、執事まで話を通しておく必要があるのよね。


「じゃあ、君はこっちで私とお茶でもしよう」


 そうしてリュシアンに応接間に引っ張られて行き、彼はメイドのミカにお菓子とお茶の用意を頼んだのだった。

 あれ、まだほかにも話し合うことあったかな?


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