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46 火竜への対策はどうする?

「それはそうと、あれ、火竜じゃないんですか!? カールさん!」


 あんな感じのトカゲっぽい魔物とか、私が想像できるのは火竜ぐらいしかない。

 見たことないけど……。

 本でそれらしい描写だった魔物が、火竜ぐらいしかなかったんだけど……。

 でもカールさんなら火竜を見たことがあるのでは? と思って聞いたのだけど。


「たしかにあれは火竜だな」


「それじゃ、倒すなんて夢のまた夢……」


 絶望しそうだった。

 錬金術を始めたばかりの、コーン爆弾ぐらいしか作れない私じゃ、倒せるわけがない。


「もう、ベルナード王国軍が来た時に、わざと火竜をぶつけるぐらいしかないかしら」


 方法を探して、思いつきを口走ったら、カールさんに笑われた。


「ほっほっほ。最後の最後にはそういう手段もあるかもしれんな。だが、あの火竜の出現場所はどこじゃろうな」


「考えられるのは……火山じゃないでしょうか?」


 火竜は火を食べるという。

 だから火山に住むことが多いと書かれていることが多い。


「であれば、もしベルナード王国軍にぶつけたくとも、途中に町がある場合も、町が近い場合も、火竜によって破壊されるであろう」


「そうでした……」


 火竜がひとたび炎を吐けば、山一つが焼かれて黒く焦げる。

 本にもそう書いてあった。

 実際に、どれぐらいの被害が出るのかはわからないので、そんな情報から推測するしかないのが困る。


『とにかく、いつ出て来るのかを調べるしかないの。火山といえば、例の捧げ物とやらに効果がないのかとか、そういうのを調べるべきじゃな。それで『いつ』起こるのかが予想がつけられるかもしれない』


「わかりました」


 その日、私は朝の支度にやってきたミカを質問攻めにした。


「そういえば、火山に火ネズミが出るって話を聞いたんだけど、ミカは知っている?」


 顔を洗うための水を持ってきたミカは、目をぱちぱちと瞬いてから答えてくれた。


「はい、そうみたいです。私は実際に見たことはないんですけど。亡くなったおばあちゃんが、捧げ物の採取に行ったとか聞かせてくれました」


 おお、例の雨キノコの場所も、ミカから情報が聞けるかもしれない。

 私は嬉しさをおさえて尋ねる。


「捧げ物をする日って決まってるのかしら?」


「たしか満月の日に……。火山の裾野にある祭壇に置くんです。祭壇っていっても、大きな平らの岩があって、そこにキノコをどっさり置くんですけれど」


 水の入った洗面器やタオルを置いてくれたので、私は顔を洗う。

 拭いている間にカートに載せて来たお茶を入れてくれているミカが、続きを話してくれた。


「捧げ物は昼間のうちに置いて、きちんと受け取りに来るかを近くの木立から見守るそうです」


「木立っていうと……森の近くに祭壇があるの?」


「はい。森の横にある小道から山へ登っていくと、祭壇があると聞きました。私は行ったことないんですけど……。あそこは魔物が出るっていうので」


「ほうほう。山道はどれくらい登るのかしら?」


「三十分ぐらいでしょうか。火山の方は膝丈ぐらいまでの低木しか生えていないですし、祭壇周辺は石ころだらけのガレ場なので、下からも見えるんですよ」


「それで、捧げ物をした後で遠く離れてもわかるのね」


 祭壇の場所と森、湖の位置。

 そこからすると、森の火山に近い部分まで馬で三時間ぐらい。

 さらに山を登って一時間ほどで祭壇には到着できそうだ。


 急いで確認に行きたいところだが、一応武器らしい物ぐらいは手に持っておきたい。

 対策を立てるにしても、できれば自分で見たいのだ。

 じゃないとどうも感覚がつかめないし、夢で見たあの場所が火山のどの部分なのかも推測できたら嬉しいし。


 そのためには、何かしら私用の武器がないと。


 朝のお茶を飲んで、一息ついたところで着替え。

 いつも通りの簡素なワンピースドレスにエプロンを身に着ける。


「これから調合をなさるんですか?」


「そうよ。作って置く物があるから。それがないと、たぶんテオドールに外出を止められてしまうもの」


 今日作るのは、新しい領地へ行ったら作ろうと思った物の一つ。

 夏にあると嬉しい物だ。

 

 まずは腹ごしらえの朝食を済ませてから、いざ工房へ。


「お手伝いしますか?」


 とミカが言ってくれたので、補佐を頼むことにする。


「まずは水ね」


 ミカに、量を計っておけるように瓶を沢山出してそれに水を入れていってもらう。


「秘蔵のこれ」


 私は透明な石を取り出す。

 中に沢山の白い花のような模様が閉じ込められている。


「初めて見る石です」


 目をキラキラさせて見ているミカに説明した。


「グラキエスという石よ。ちょっと特殊なの」


 私はガラスの漏斗を出し、石を一番下に入れる。

 漏斗を差し込んだのは中くらいの水瓶だ。


「ひと瓶ずつ、中に水を注いでもらえる?」


 ガラスの漏斗に、私は触れながら魔力を込める。

 その間に、ミカが少しずつ水を漏斗に入れていく。


 漏斗に触れている石が、少しずつ白く、そして木の枝を生やすように成長していった。


「え、すごい」


 驚きながらも、ミカは手を休めることはなかった。

 そうして瓶を30本分ほどの水を注いだところで止める。


「うん、これぐらいかな。けっこう水を使ったのは、私の魔力が弱いからかな……」


 錬金術の本に書いてあったよりも、予定していた成長を得られるまでに水を沢山使った。

 それは私の能力の少なさのせいなんだろう。

 ちょっと悲しいが、無事に目的の物はできた。

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