117 攻防戦のその後で 1
無事にジークリード辺境伯軍と合流し、その後城に戻った私はめでたく発熱した。
ストレスと、水の冷たさが悪かったのだろう。
三日ほど寝込んでいる間に、避難路へ入っていた領民のみんなは戻ってきて、町の自分の家に戻ったようだ。
そのあたりの采配を、どうやらほとんどセレナに任せることになってしまって申し訳ない。
ジークリード辺境伯軍も、かなり急いでここまで来たこともあり、怪我の治療もかねて城の無事だった部屋に収容したり、テントを張って滞在している。
そんなことを、ようやく身を起こしてご飯を食べられるようになった私は、セレナから聞いた。
私が気になっているだろうと報告を優先したセレナは、ごはんを私の口に運びながら言った。
「本当に、領主様が無事でよかったです。そして守ってくださってありがとうございます」
夢の中で亡くしてしまったセレナにそう言われて、私はようやく、未来の夢に関する試練を乗り越えたのだ、とほっとした。
それからまた一人になって、眠るために目を閉じる。
今度話しかけてきたのは、カールさんだ。
『本当にお前さんはよくやった。まさかここまでできるとは思わなんだ』
感心したように言われると、なんだか心がくすぐったくなる。
(運も良かったんですよ。火竜がちょっと暴走しましたけど、結果的に全滅させてくれたわけですし。リュシアンが間に合いましたし)
『あの小僧が間に合ったのは、どうやらお前さんが急いで送り付けた炎の魔石のおかげのようじゃな』
そこまで詳しく聞いていなかったので、カールさんにそのまま教えてもらう。
ジークリード辺境伯領も、だいぶん混乱したらしい。
敵を迎え撃つはずが、こちらの兵士の中に内通者がまぎれていたように、突然魔物化して暴れ出す者がいたんだとか。
対処に手間取ったけれど、直前に私からの連絡が早馬で来ていたこと。
そして魔物と戦うため、魔石を使ったおかげで、ジークリード辺境伯領の魔術師達も大幅に寿命を減らすことはなかったそうだ。
もしそれがなかったら、辺境伯軍内での被害が大きくて、とても今回のような日程でハルスタットまで来られなかったらしい。
(そうしたら、魔石を見つけて送ったおかげなんですね、リュシアンが間に合ったのは)
『左様。お前さんが未来を変えたんじゃ。誇るが良い』
カールさんに褒められて、私はふふふと笑ってしまう。
(うん、嬉しいです)
『ところでじゃが。今後はどうするんじゃ? まだ他の領地はベルナード王国が侵略中であろう』
ハルスタットと、ジークリード辺境伯がいる南は阻止できた。
でも北の領地は、備えができているかどうかわからないし、魔術師が沢山いないと、あんな魔物達に対処できる気がしない。
(リュシアンは、もしかすると行ってしまうかもしれません)
『いいのか?』
そう聞かれて、はっと気づく。
ずっとカールさんの石を持っていたから、リュシアンとの会話、聞かれてたんだ!!
(うあわあああああ! ちょっとそれ忘れてください!)
布団の中で身もだえしていると、カールさんに笑われる。
『まぁ、若いというのは良いことだのぉ』
※※※
その頃。
外では休息をとった兵士達や、傭兵達が後始末をしてくれていたらしい。
死んだ敵軍の兵をそのまま転がしていたら、臭いもあるし魔物も出るし、虫も湧くので大変だ。
火竜の一撃で炭になった方も、土を掘って埋める作業があるので大変だったようだ。
なにより……私がまき散らした鉄を吸収するスライム。
あれの始末をする必要がある。
鉄を食べて、ころんとした玉のようになって転がった無数のスライム。
一部、火竜の攻撃の余波でただの焼けた鉄になってしまった物も多いようだが、まだもちもちとした鉄スライムが転がっている。
放置しておくと、どこまで転がっていくかわからないし、人が転んだところにこれがあると、熱を持っているのでヤケドする。
これを集めて、水をかけて冷まし、ついでにあとでただの鉄に戻しておきたいところだ。
その作業を、ロージー達が担当してくれたらしい。
もちろん、私はまだ寝台から起き上がれない状態だったから、ロージー達の会話を聞くことはなかったのだけど……。
聞こえていたら、度肝を抜かれていただろう。




