表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
契約結婚のその後で、領地をもらって自由に生きることにしました  作者: 奏多


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/118

112 戦には意外性がつきもの 1

 それからしばらく、私は外郭の中で少し休ませてもらった。

 丘の上で高い場所にあるおかげで、矢の心配はない。

 時どき爆発音が響くが、まぁ、こちらが抵抗出来てる証明なのでよし。


「沢山爆弾を作っておいてよかった」


「本当に、すごい量でしたよね」


 時々手伝っていたニルスが同意してくれる。

 薬を作った後は、ひたすら爆弾ばかり作っていた気がする。

 工房の二階は、ほぼ爆薬用の部屋になってしまったくらいだ。

 それでも、心もとない。

 材料はまだあるけど、いつかは尽きると思うと恐ろしい。


「生き残れるかな……」


 思わずつぶやいてしまう。


「これだけ努力したのです。城を守れなくとも、逃げることは成功できると信じています」


 ニルスはそんな言い方をする。

 大丈夫ですよ、なんて甘いことは言わないのが気に入った。

 信じてくれるなら、がんばろう。


 それに、援軍のことも言わないでいてくれるのもありがたい。


(援軍が来てくれないかなと思うと、逆に不安になってしまう……なんてね)


 間に合わないまま死ぬ未来を見てしまったから、希望にすがるのが怖いのだ。


 なにせ私は、元々は特別な人間じゃない。

 ずっと周りに翻弄されて、隙間を縫うように生きてきただけ。

 怖いから、誰かに頼らせてほしいという思いは、いつも心の中にある。


 今でも私は英雄でもないし、賢者でもない。

 ちょっと錬金術ができて、人のおかげで未来を垣間見ることができるだけ。

 普通の人よりは、だいぶんよさそうに見えるけど……これがただの令嬢の立場だったり、どこにでも逃げていける独り身の商人でもなく、私は代わりに責任を負ってしまっている。


(領民や兵士の命を全部背負うのって、なかなか重たい……)


 テオドールが、決定した責任を分け合ってくれているけど。

 それは兵の行動のみに関してだ。


 全体の方針を決めたのは私だ。

 みんなが死なない未来を目指して。

 少しでもマシになるように。


(あー。一番マシなのは、ベルナード軍を撃退して、侵入できなくさせることだけど。次点は、みんなで逃げおおせることかな)


 今は、撃退が絶対にできるという自信がないからこそ、次点を目指して行動している。

 逃げる隙を作れて、兵士も撤退させられたら私の勝ちでいい。


 そのためにも、あと半数。

 ベルナードの兵士を減らしたい。

 相手の兵士も人間だとか、そんなことは今考えられない。

 私が何もしていないのに大切な人達を殺そうとするのなら、それは魔物と一緒だと思うから。


 考えことをしていると、一度だけうとうととする。

 でも、もう夢は見ない。

 カールさんもまだ回復していないし、これ以上の未来は、これからの行動にかかっているだろうから。


 そして……。


「領主様、敵軍が動き始めました」


 ニルスの声で、目を開ける。


「起きられますか? もしそうでなければ、やり方はご指示いただいたので、私どもですすめますが」


 執事になりたかったニルスは、こういうところでも細やかな配慮をしてくれる。

 でも、正念場はここだ。

 そして自分の行動の成果を見たい。

 だめだったら、また違う手をすぐに考える必要があるから。


「ううん、行くわ」


 そして外壁の上に戻る。

 吹きさらしの中で、私の髪がなびく。

 テオドールが私を振り向いた。


「領主様、お加減はどうですか?」


「少し休ませてもらったから大丈夫。あなたは? テオドール」


「私はこれぐらいなら大丈夫です。あと、準備も終えています」


 テオドールの側には、袋があった。

 どれもやや大きめの袋状になっている。

 おあつらえむきに、風も強い。


「凧は飛びそうね。敵は……もう少しね」


 じわじわと、ベルナード軍は前進してきていた。

 先頭は、やっぱり魔物だ。

 でも岩を投げてくる、蔓を固めたような植物の魔物が多い気がする。

 そもそも魔物が多い。

 30匹はいるんじゃないだろうか。


「一気に壁を崩して突入してくるつもりかしら?」


「だと想像しております。そうすると、兵士が近づいてくるのは後になりそうです。作った紐から考えると、もっと近づいてほしいですね」


 ベルナードの兵士を減らしたいのに、遠くにいるとこの作戦が使えない。

 ……さっき思いついたことだから、元々紐なんて沢山用意してなくて、多めに仕入れていた布から作ったせいだ。

 テオドールがもっと近づいてほしいと言うのだから、100メートル以上にはならなかったはずだ。


「風は……」


 風向きを確認する。

 けっこう強い風が、背後から吹き付けている。


「多少なら遠くても、全体に飛んで行ってくれると思うわ」


「では、魔物が壁にとりついた時点で凧を上げます」


 テオドールの指示に、協力者である町の人達が配置につく。

 凧を飛ばすだけなので、剣を使う必要はないので協力を要請したようだ。

 凧とつながる太い紐は、床に差し込んだ複数の楔につないで、簡単には飛んでいかないようにしてあった。


 そして、外郭が振動し始める。

 魔物達がたどり着いて、外壁を攻撃しているんだろう。

 さらに、先ほどまでの攻撃でくずれた岩を利用しているのか、外壁の上部にも岩が飛んでくるようになった。


 一度、とんでもない轟音が響いて、揺れたせいで立つのが難しくなる。

 そして「崩れたぞ! 巻き込まれた人間は!?」という声が聞こえる。


 ああ、外壁が壊されたんだ。

 誰かが巻き込まれたかもしれないと思うと、ぞっとする。


「けが人を運べ! あとは大丈夫だ」


 そんな声が聞こえてしばらくすると、階下から上がって来た兵士がテオドールに報告した。


「騎士様、階下の壁が魔物の投げた岩で壊されまして、二人負傷。今運びまして、後方で治療をしています」


「わかった。どこも危険になるから、町民はなるべく避難させるように。破られた場合に備えて待機の兵は、外郭の壁際から少し離れることを通達」


「承知いたしました」


 報告した兵士が、現場へと走り去っていく。

 死人はいなかったようだ……。よかった。


「テオドール、始めましょう。風で飛んで届くと思います。そして凧を上げたら、意識が他には向きにくくなると思うので、領民には避難の指示をお願いします」


「わかりました」


 強い風が、人の三倍はありそうな高さの凧を高く空へ舞いあげる。

 紐が届く限りの上空へ舞い上がった凧は風に流され、ベルナード軍の兵士達の近くへと移動していく。

 これなら、きっと届く。


「射ろ!」


 テオドールの号令で、控えていた兵士達が火矢を放った。

 何本か外れたものの、十数個もある凧の全ての下、垂れ下がった布袋に矢は刺さり、そこから燃えながら砂が飛んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ