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契約結婚のその後で、領地をもらって自由に生きることにしました  作者: 奏多


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108 籠城戦 1

 幸い全員が無事に城へ戻れたようだ。

 中へ入ると、待機組が迎えてくれて、すぐに門を閉じる。

 そして避難通路の出口が中庭にあり、見張り塔の横の扉から、次々に出てきていた。


「いやぁ、危なかった」


 そんな中に、フレッドがいた。

 街道からこっち、沢山の兵士がいたのでよくわからなかったが、歩兵の中に入っていたようだ。

 戦闘もしたようで、服があちこち煤けていたり(たぶん、爆弾の余波)、服が一部引き裂かれている。


「フレッド、生きててよかった」


 本当に心配したのだ。

 石のスライムを育てるのにはまってしまって、街道の壁から離れなかったから。

 ちゃんと避難してきて良かった。


「あなたの大事な石スライムは、きっと普通の石になってしまったかもしれないけど……」


「あ、大丈夫ですよ」


 フレッドはニカッと笑って、革鎧の上に着ている、かぎ裂きだらけのサーコートの下から何かを取り出す。


 ぷよん。


 白っぽい固めのプリンみたいな板。

 それは間違いなく、石スライムの一部だ。


「こいつを、お腹に隠していたんで、魔物の爪も刺さりませんでしたよ」


 はっはっはと笑うあたり、豪胆というか。

 そんな目に遭って笑えるのだから、兵士という職に向いていると思うべきなのか。


「そ、そう。役立って良かった」


「あ、俺も真似して……」


「俺も!」


 と、他の兵士達もみんなお腹のあたりから石スライムを取り出す。


「薄くしたおかげで、さほど重くなかったし、腕は怪我したけど内臓無事で良かったわー」


「分裂した直後に伸ばしたら、平べったくなったのは良かったよな」


 なんて話し出す。

 どうやら壁建設をしつつ、フレッド達は色々と石スライムで試して遊んでいたらしい。

 おかげで怪我が減ったようだし、命拾いもしたのでいいのだけど。


「とにかく一度休んで。すぐ敵兵が城まで来るだろうけど、最初は城に詰めていた兵士で多少は対応できると思うから」


 声をかけて、私はテオドールとロージーが話しているところへ向かうことにした。

 ニルスは城内なら安心だからと、馬を厩舎へと連れて行く。


「テオドール、ロージーも、怪我は?」


 そう声をかけると、先にロージーが答えた。


「あの程度で怪我なんかしてたら、傭兵なんて名乗ってらんないって領主ちゃん! 爆弾やらのおかげで、まともに乱戦してたわけじゃないからさー。それよりなーんで領主ちゃんがあんなとこにいたのさ?」


「あー、その」


 夢の状況を変えられたのか確認したかった、というのが一番の理由だ。

 あと、魔物が敵軍に混じっての戦闘が、どんな物か確認しておきたかった。

 どう説明しようかと思っていたら、テオドールが言う。


「あれだけの敵兵がいたんだ。遊撃部隊が他の場所へ移動していて、そちらに見つかってはマズイ。兵数が少ない中、数人だけで領主様を移動させるのは危険だ。それより、敵はどこから侵入したんだ?」


 質問され、ロージーは頭をかきながら答える。


「領主ちゃんから伝言受け取って、飛んできた物を拾わないようにしてたんだけどさー。ほら、矢は拾っておきたいじゃん?」


「ま、まぁな」


 テオドールがうなずく。

 矢は消耗品。でも作るのも買うのも時間やお金がかかるので、なるべく拾うことになる。

 狩人だって、木に刺さったりした矢は回収して歩くのだ。

 もちろん戦場で余裕があれば……。


(あったわね。壁の向こう側から矢を射られる分には、こっちは安全なところまで引いて、攻撃が止んだら拾えばいいのよね)


「矢を拾いながら、おかしな物を拾ってたやつがいたんだと思うんだ……。はぁ」


 ロージーはため息をつく。


「街道側の方が騒がしくなってから、壁際まで走って行くやつがいて、警戒はしてたんだ。ほら、恐怖でおかしな行動をするやつってさ、いるじゃん?」


「そうね」


「そういうのだと思って止めてたんだー。けど、何回目かに拾ってたんだろうなぁ。突然何か飲み込んで、壁に向かって走り出して……って感じで、途中で魔物に変化して壁を壊しちまったんだよねー」


 やはり、内通者がいたようだ。

 魔物になれば死んだも同然なのに……。脅されてのことか、金に目がくらんでしまったのか、しがらみがあったから従ったのだろうか?

 なんにせよ、止めきれる物ではなかったみたいだ。


「全て完璧になんてわけにはいかないわよね。人数も多いことだし。今まで保ってただけでも良かったわ」


「ありがとー領主ちゃん」


 ロージーがすがるように抱き着いてくる。

 怒られると思ったのだろうか?

 とはいえロージーも体格がいいので、小さな私はぎゅうぎゅうとされると窒息しそうだ。


「そこまでだ」


「いって!」


 テオドールがロージーの顔を掴み、引きはがす。


「では、今後のことですが……」


 そのまま、何事もなかったかのようにテオドールが話し出した。

 ロージーもやや不満そうながらも、続きを待つ。

 この二人、けっこう仲が良いのだろうか?


「現在、怪我人が十数人いる程度で、それも領主様の薬ですぐに治癒可能かと思います。食料もありますので籠城は可能ですが、壁周辺にいた兵士以外に、どれだけの兵員が控えているのかわからない状況ではあります」


「問題はそこよね」


 壁の向こうにいるのが、合計でも四千人ぐらいと聞いてほっとしていたのだけど……。

 そのさらに西から、後続の兵が来ないとは思えない。

 道は狭いながら、駆け抜けるのならたいして抵抗しそうな領地も、城もないルートなのだ。

 王都へ攻め上るのなら、ここを通り抜けたいと思うだろう。


「大きな兵力は北や南に振り分けるでしょう。そうだとしても、一万ぐらい来てもおかしくはないのよね……。そのうちの四千を目撃したのだとして、二千人はたぶん、火竜にやられていると思うけど」


「残り八千人を千人ちょっとで、か……。きっびしー」


 ロージーが肩をすくめる。

 彼でもさすがに不可能だと思うのだろう。


「何人魔物に変えられるかわからないからなぁ。人間だけの攻城より、魔物の方が圧倒的にヤバい」


「籠城には向かないのよね。敵に魔物がいると」


 私は夢で見た光景を思い出す。

 魔物による投石は、人が投石機を使ったよりも強いみたいだった。

 あれに対抗するために、石のスライムを外壁に張り付けているけど、どこまで持つかわからないし。


「とりあえずは、領民を避難させたいわね」


 私の言葉に、テオドールもうなずく。


「食料を必要とする人数は、減らせるのならその方がいいでしょう」


「ただ、今はまだ無理ね。籠城して引き付けて、それから逃がすしかないわ」


 さもなければ敵が広範囲にいて、逃げた先で見つかってしまう。

 一人二人なら隠れられるけど、町単位の人数になると無理だ。

 アダン達も一緒に逃がすし、みんなを守る力にはなってくれるけど。軍が潜んでいたら難しいだろう。


「籠城している間に、もう少し減らしたいし、敵の人数をはっきり知りたいわね」


「何人いるのかわからないと、目途が立ちにくいですからね」

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