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契約結婚のその後で、領地をもらって自由に生きることにしました  作者: 奏多


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103 街道の攻防戦 2

 破壊音に、私は慌てて目を覚ました。

 でもどこかふわふわしている。

 しかもまだ戸惑っているのに、私の体が勝手にどこかへ走る。


 ――この感覚ってことは、私、夢の中にいるんだ。

 そう気づいた。


 そんな私は、近くにいたニルスに声をかけていた。



「今の音の原因は!?」


「わかりません!」


 その時の私は、困惑と同時に『みんなの無事を確認したい』と考えていた。

 特に、アダン達三人。

 彼らを後退させないと。


 そう思った私だったが、ニルスが街道ではない方向を見ていると気づいた。

 ここでようやく、私は勘違いをしていると知る。


「街道の方の壁じゃない……」


 破壊音の元は、城だ。

 見れば外郭に、岩がめり込んでいる。

 呆然としてしまいそうになりながら、私はなんとか冷静に考えようとした。


 外郭が攻撃されたけど、そこは石のスライムを張り付かせていた部分だった。

 おかげで、完全に崩れていない。

 あのぽよんとした石が衝撃を受け止めてくれたのか、ちょっと周囲が崩れたくらいで済んでる。

 だから、中の人は無事だと思う。

 

「でも私は外にいる。あの時見た未来とは違ってるけど、なぜ城が……」


 外に私がいるなら、まだ街道の壁は突破されていないはずなのに。

 どうしてと見回し、遠く、裏道の方からベルナード軍の魔物達がやってくるのが見えた。

 たいていの魔物が、二本足の獣のような様相だ。

 熊や狼に、兎のような魔物。その後ろから、蔓を四方に伸ばす植物の魔物までいる。


 あれだけの魔物を、見張りの兵士が見逃すわけがない。


(近づいてから、人を魔物に変えたんだ……)


 もう一つ、嫌なことを想像する。

 すでに、兵士のふりをして入り込んでいた可能性だ。

 それなら魔物にさせる人間も、裏門の方にいる兵士の目をひきつけて、ひそかに引き入れることができる。


 とにかく今は、彼らの進軍を止める必要がある。

 この小さな領地を通る山間の街道は使えない。

 そう思ってもらえれば、私の勝利だ。


 だけどこれは、現実ではない。

 私が、自分の意思通りに行動できないから。

 これは間違いなく、未来を夢に見ているのだと思う。


 未来の光景の中の私は、必死に走った。

 城へ向かって。

 一番兵力がないのは城の方だ。

 そこで、せめて籠城の態勢を整えられれば……と思っているのがわかる。


 しかし岩の投石が行われて、城の外壁が何度も何度も衝撃を受ける。

 ようやく接近してみると、蔓植物を固めたような魔物が当たりの岩を無差別に投げているのがわかった。


 城だけではなく町の方へも、今まで来た道の方へも岩が飛んでいく。

 裏門の方からなだれ込み、城を包囲しょうとしているベルナード軍にも、被害が出ている気がする。

 それも、魔物を操るリスクだと思って受け止めているんだろうか?


(意外と魔物を統制はできていないのね)


 攻撃する方向を、指示まではできないのだろう。

 でも攻城兵器の正体もわかった。

 対策しても、城を攻撃されてしまう理由も。


「でも、間に合う……?」


 正直、もう入り込まれているかもしれない。

 だったら……。


『街道側の方から兵を連れて来るしかないのぅ』


 カールさんの声がした。

 未来を見ている主体がカールさんなんだから、当たり前だ。


「でも、間に合うでしょうか? そして街道の方をおろそかにして、あちら側から入り込まれたら……」


『街道側は燃やしておけば、しばらくは大丈夫じゃ。幸い、石の魔物は死んでも石としてそこにあり続けるから、容易に壁は壊れん。その間に、城の方へ移動して仕切り直すしかないじゃろう。ただしその前に、敵の戦力を削る』


「それしかないですよね」


 敵戦力が少なくなれば、最初の夢のような終わり方はしなくなるだろう。

 その後はわからないけど……。

 私はカールさんにうんとうなずき、目を覚ました。


 ※※※


 辺りはまだ静かなようだ。

 暗くて、夜が明けていないのがわかる。


「今なら、まだ間に合いますかね?」


『いけるかもしれん』


 カールさんの声に励まされて、私は起きてテントの外へ出た。

 見張りをしてくれていた兵士が、びっくりしたようにこちらを見る。


「今は何時?」


「まだ三時の鐘が鳴ったばかりです」


 時刻がわかるように、町の鐘を夜中も鳴らしてもらっていた。

 城の中にひどく響くほどの音ではないので、城内の町の人達の眠りをさまたげないうえに、外に出ている私達は時間がわかりやすいだろうと思ってのことだ。

 おかげで、夜明けまで間もないのがわかる。


「馬を用意してもらっていい?」


「はい、ニルス様も呼んできます」


 ニルスは私の付き添いだから、同時に動けるように眠っていたのだろう。

 申し訳ないが、ニルスにも行動してもらう。


「お目覚めでしたか」


 まもなく馬と一緒にやってきたニルスは、少し後ろ髪が寝ぐせではねている程度で、しゃっきりとしていた。

 兵士としても寝起きがいいのは最適だ。

 けど、執事向きでもあるなと感じる。

 無事に乗り切れたら、衛兵兼執事見習いとして、館内で仕事をしないかさそってみようか。


「今すぐ街道の方へ行きたいの。テオドールに話があって」


「承知いたしました」


 ニルスは理由を尋ねることもなく、私を同乗させて馬を走らせてくれた。


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