第7章
第7章
古代遺跡の外観は、至って普通だった。
昔、戦争で使われた兵器が封印してあると言われる古代遺跡。
中の封印が漏れでないように補強してあり、『古代』と言うには些か違和感がある。
しかし、そんなのは当たり前だ。
常に補強しながら封印を守っているのだから。
問題は『中』だ。
「外は問題ないようだな」
外壁をコンコン叩きながら、アルヴィスが確認する。
「じゃあ、さっそく入ろー!きっと中ではプリ剣の二人に愛の試練が…むふふ♡」
「試練があるなら、お前も巻き込まれんだろ。変な妄想してないでシャキッとしろよ」
どんな妄想をしているのか、ミナの顔はゆがみきっている。
普段なら呆れる所だが、ギルドであんな事があった後のカイルには救いに思えた。
三人は遺跡へ足を踏み入れる。
と、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
外の暑さが嘘のように、内部は静まり返っている。
「……うわ、急に寒くなったな」
カイルが腕をさすりながら呟く。
「我の地獄の業火であたためてやろうか…?」
何故か顔を赤らめながらアルヴィスは言う。
「それ、死ぬヤツだろ」
そう返すと、アルヴィスは慌てた様子で手を振りながら弁解する。
「ち、違う!熱くはない!ぬるま湯のように心地よいぞ!」
「いや、ぬるま湯なら地獄の業火じゃなくね?」
ツッコミを入れながらも、カイルはどこか口元を緩めていた。
ミナはというと、すでに後ろでハァハァと息を荒らげながらスケッチを始めている。
「ふっ……ふふ……剣士くんがツッコんでくれる……最高……!」
そんな何気ないやり取りの中、三人はゆっくりと通路を進んでいく。
時折、風もないのに髪が揺れるような感覚が通り抜ける。
「おー……ここ、出そうだね。いろんなモノが。ラッキースケベ的なトラップとか」
ミナの目がランランと輝いている。
「ラッキースケベ的ってなんだよ…」
「んーとね、いきなり床が抜けて…」
『いきなり床が抜けて、剣士くんの上に倒れ込むプリンス様。
「っ……すまん、カイル。大丈夫か?」
「痛ぇよ……って、ちょっ、顔近ぇ!」
プリンス様の美形にドキドキしちゃう剣士くん♡
「仕方ないだろ、この体勢では……動けん……」
至近距離でのお互いの匂い…。
プリンス様の鎖骨がチラ見えしてぇ……、
「離れろっての!」
そう言いながら抱き合う二人はそのまま…』
「ちゅー…♡」
自分の体を抱きしめるように、ミナはうっとりと目を閉じ唇を尖らせた。
「破廉恥なっ!寄るなっ!我が剣が穢れるっ!」
アルヴィスは庇うようにカイルの前に出る。
「うへへぇ。ごめーん♡」
謝りながらも顔は緩みきっており、ミナの鼻から血が一筋が垂れた。
通路を抜けると広間に出る。
一歩足を踏み入れた瞬間、視界がぼやけた。
まるで深い霧の中に沈んでいくような、不思議な感覚。
紫がかった霧は足元から漂い、ゆっくりと肩のあたりまで満ちていく。
霧は冷たくもなく、湿ってもいない。ただ静かに、まるで呼吸をするように揺れていた。
「……っ、なんだ、この霧……」
カイルが眉をひそめるが、声はぼんやりとした空間に吸い込まれていった。
一方でミナはきょろきょろと辺りを見回し、何かを探すように落ち着かない。
アルヴィスは静かに霧を見つめ、思考を巡らせている。
だが、どこか様子がおかしい。
三人とも同じ場所にいるはずなのに、それぞれの目に映るものが違っているようだった。
そして、それぞれは、異なるものと対峙する。




