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第49章

第49章

次の日も来たリルルに、ターリィから男性だと言われた旨を説明し、その上でカイルは疑問をぶつけていた。


「魔王領が源泉のお湯に触れた時、確かに体が女性になったんです。心当たりはありますか?」


「うーん…」


リルルはカイルが人間との混血、それであるが故に両性ではない事を踏まえて推測する。


「多分、女性化にはなってないよ。魔王領の魔力に夢魔の血が反応して、ちょっとした幻覚が起きたんじゃないかな?」


「幻覚…?」


カイルは古代遺跡で体験した幻覚を思い出す。

あの時、封印の再封印をしたが、なにか関係があったのだろうか?


「身体の変化はそれっきりだよね?」


リルルが確認するように問うと、カイルは頷く。


「温泉にもそれ以来入ってないんだよね?」


カイルは頷いた。


「じゃあ、温泉行こーっ♪もしかしたら一回ポッキリのラッキーデーだった可能性もあるし!」


「え!?意味不明なんですが!」


そんなこんなで、何故か叔父と二人でカイルは温泉に浸かっている。


が、カイルには変化がない。


「一回ポッキリのラッキーデーだったかぁ。残念!」


「ラッキーデーってなんですか…」


「それは!ラッキースケベってことだよぉ!」


男女別に仕切っている温泉の塀の上から、ミナが堂々とこちらを覗いていた。


「うわぁっ!ミナ!!」


「そっち行っていい?」


「来んなっ!男湯だぞ!」


そんなやりとりを無視し、リルルは両手を広げている。


「おいで〜」


「わーい!」


ミナは塀を蹴ると、リルルの腕の中にダイブした。

リルルが颯爽と受け止める…と思いきや、ミナに押し倒されて湯船の中で息を吐いた。


「わぁっ!リルルさんっ!」


カイルは慌ててお湯からリルルを引っ張り出すと、リルルは青い顔をして言う。


「僕はこれまでだ…。ラルルの後を追うよ…。僕の可愛いカイル、ちゅーしてくれたら生還できるかも…」


「元気じゃないですか」


カイルの冷ややかな視線に、リルルは一人で悶絶している。


「アルヴィスくんに向けられる眼差しが僕にもっ!もっと罵って♡」


「………え、なにこの人」


この変態が自分の叔父だと思うと、カイルは少し頭痛がした。

しかし、顔はそっくりなのだから、血の繋がりがあるのは真実だ。


「ねぇー、剣士くんの裸体はどう?筋肉質だけど細身でしなやかで、女装似合うと思わない?」


ミナはリルルと背中合わせにくつろいでいる。


「確かに似合いそうだねぇ。僕的には脚がすんごくセクシィ〜」


「でしょー?」


意気投合している。

嫌な予感がする。


「女装じゃなくて普通にズボンでお願いします…」


「わかったよ〜。網タイツでいい?」


「……………」


分かってねぇな、こいつ。デザイナー変えてもらおうかな。と、密かに思ったカイルであった。



その頃、護衛を連れず大司祭を背負ったアルヴィスが辺境の町にやってきた。


「おいおい、てめぇもう冒険者じゃねぇんだぞ。つか、誰だよその爺さん」


レオはアルヴィスの奇行ぶりに笑いながら出迎えた。


「我に護衛などは無用。我を護れるは我が剣のみ!」


詳細を聞くと、王城の使用人やら騎士やらは全て解雇してしまったらしい。


「この白き光には、王都などという鳥籠では狭すぎるようで…。特定の都なんていらないとおっしゃいます…」


大司祭の話では、あろうことかアルヴィスは城と神殿を破壊してきたと言うのだ。


「城や神殿などいらぬ!城は我がいる所!神殿は本来は世界樹である水晶宮だろう?」


アルヴィスはそう断言し、自分はティントルテン邸へ行かずにレオの家へ。

大司祭は一時的に辺境の町の教会に身を寄せる事になった。


「おい、伯爵が準備してたんだぞ?伯爵の屋敷行けよ、王様だろ」


レオは呆れて言うが、アルヴィスは断固として拒否する。


「父様、私の家は父様の家だ。そしてそれは、カイルも変わらない」


そう言い放ったアルヴィスの目には、確信めいた強い輝きがあった。

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