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第45章

第45章

エドワードが投獄されたと知り、王妃は自ら寝室の窓から身を投げた。


侍女のシーシャは王都に戻り、アルヴィスと対面する。


「も、申し訳ありません…。王妃様をお守りできず…」


さめざめと涙を流す彼女の優しさに触れ、アルヴィスはいたたまれない気持ちになった。


「王妃様が書き残した遺書です…。エドワード殿下をお許しを…。どうか、お許しを…」


遺書を受け取ると、アルヴィスは広げて読んだ。


内容は、エドワードの解放を。この一文だけだ。


「はぁ…」


アルヴィスは頭を抱えた。

エドワードは現在も地下牢で偽物を殺すなどと喚いている。


「そうだ」


シーシャは元はエドワードの侍女だ。

彼女と会えば何か変わるかもしれない。


「しかし…」


しかし、エドワードが彼女さえも認識しなかったら?


「ふぅ…」


アルヴィスは再び頭を抱える。


こういう時、カイルならどうするだろう?

ミナなら?レオやタルタルなら?


アルヴィスが悩んでいると、ハトの獣人が窓を叩いた。

窓を開けると、一通の手紙を取り出す。


「はじめまして!ハトのトリムネです」


「と、鶏ムネ…!?」


アルヴィスは思わず吹き出してしまった。


「はい!トリムネです。よろしくです」


シーシャはトリムネを見て、青ざめ後ずさり、壁に激突してしまう。

長らく忘れていた、魔族に相対した普通の人間の反応だ。


「……………。魔族が怖いか?」


アルヴィスが聞くと、シーシャは涙目になって聞き返した。


「殿下っ…いいえ、陛下は怖くないのですか?」


この時、シーシャは思い出していた。

しきりにエドワードがアルヴィスの事を「あの夢魔に魅了されて気がおかしくなっている」と。

あまり信じていなかったが…、今、アルヴィスが魔族に対してあまりにも平気な顔をしているのを見て………、


「エドワード殿下は本当の事を…?」


すると、とたんにアルヴィスまでもが怖く見えてくる。


ガタガタと震えるシーシャを見て、アルヴィスは小さく息をついた。


「……すまない。恐れさせるつもりはなかった」


落ち着いた声でそう言うと、彼女の肩にそっと手を伸ばしかけて、だが思い直して引っ込めた。


「……トリムネ、お前は先に下がってくれ」


「え?でも、手紙が……」


「後で読む。今は……彼女が休める場所を」


「あっ、はいです!」


トリムネはぴょんと飛びのき、部屋を出ていった。


アルヴィスは扉の前まで歩くと、控えていた侍女に声をかける。


「彼女を別室へ案内してくれ。疲れているようだ」


「か、かしこまりました」


シーシャを支えるように、侍女がそっと脇に寄る。 アルヴィスはそれを確認してから、シーシャに静かに頭を下げた。


シーシャも無言でただ頷き、侍女に導かれてその場を後にした。


「エドワードの解放を…か…」


アルヴィスは椅子に深く腰掛けると、天井を仰ぎ呟いた。


「そうだな…。地位の剥奪…そして、知り合いのいない田舎にでも、シーシャと二人で…」


自分が甘いのは分かっている。

しかし、この時なぜかカイルの顔が浮かんで離れなかった。


「エドワードは…本当は絞首刑にでも…と思っていたが、それではやってる事がエドワードと同じになってしまう」


この湖面に落ちた雫の波紋を止めるには、エドワードは殺してはならない。

やがて、消えるのを待つしかない。


それでも、エドワード自身の傷は癒えることはないであろうが……。

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