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第43章

第43章

ティントルテン伯爵に仕える、伝令係のハヤブサの獣人、キュロスは大忙しだった。


辺境の町の様子を王都にいるアルヴィスに届け、王都の様子を伝えるために辺境の町へ帰還し、王都と辺境の町の様子を魔王領にいるカイルに届け、また帰還し…。


「キュロスが過労死してしまう」


ティントルテンはそう言うと、新しい鳥の獣人を雇用しようと探し出す。


「私、飛べますよ。伝令役になりましょうか?」


タルタルがそう言うと、ギルド内の全員から首を振られた。


「おや?何故でしょう?」


理由はタルタルの性格にあったが…、あえてレオはこう言った。


「王都の連中はまだ魔族に慣れてねぇだろ。人間に近い見た目の獣人ならともかく、てめぇが擬態解くとやべぇだろ…。目は真っ黒、歯はギザギザ、口は裂けてる、やたらでっけぇコウモリみたいな翼。とにかく怖ぇんだよ」


「……そう言うものですか」


「そう言うもんだ」


タルタルは暗魔族であるため、擬態を解くと王都民に恐怖を与えかねない。


「しかし、それではカイルとアルヴィスが政略結婚をして国を統一しても、魔族差別があるかぎり、前途多難では?」


タルタルの言うことはもっともだったが、魔族を差別していた時代が長い人間領にとっては、少しずつ変えていく他ないのである。


「私、ミナちゃんの真似して同人誌書いてみようかな…。私、王都出身で魔族が怖かったけど、ミナちゃんの薄い本のお陰でちょっと分かったって言うか…」


受付嬢が呟くと、


「俺もやってみる!」


「私も!」


と、冒険者からも声が上がった。

それなら、と、ティントルテンが言った。


「魔王領は創作活動が盛んだったな。輸入して販売、図書館に寄贈しよう。発禁本だったプリ剣が広まったんだ。ジャンル的にも需要があるだろう」


魔王領へ行った時、プリ剣以外の創作本が多数あったのを思い出す。

それぞれの魔族の特徴をまとめた絵本なんかもあったはずだ。

そう言う知識が少しでも増えれば、魔族に苦手意識を持つ人が減るかもしれない。


すると、意外な声が扉の方から飛んできた。


「わ、私も描いていいでしょうか」


アルゼンが半開きの扉から、そっと顔を覗かせている。


「ああ、忘れていたよ」


ティントルテンはクスッと笑った。


「私の甥は、美術が得意なんだ。美術は貴族の嗜みでもあるしね」


「えっ!?アルゼン様ってお絵描きできるの!?」


受付嬢が目を輝かせると、アルゼンはバツが悪そうに帽子のつばを触った。


「……学園時代、成績が良かっただけです…」


「じゃあ、私の本の表紙描いてください!」


「えぇっ!?いきなりハードルが…!」


「大丈夫です!ミリアちゃんがぴょんぴょんしてる、可愛いイラスト描いてください!」


「ミリアか…。ミリアなら…、うん」


困惑しながらも、どこか嬉しそうに、アルゼンはそっと頷いた。


「おお、ミリアの本か。それなら予約していいかな?」


「もちろんです!」


ティントルテンの申し出に、受付嬢は嬉しそうに頷く。


「おいおい、ミリアちゃんって伯爵様のとこのウサギ族だろ?変な内容じゃないだろうな?」


レオが訝しむと、受付嬢は心外だとばかりに腰に手を当てる。


「ミリアちゃんの日常の可愛いお話ですっ!ミナちゃんみたいなのは書けません〜」


「ミナちゃんみたいなのは」と言う一言に、確かに!とギルド内の一同は共感するのであった。



☆ミナの推し観察日記☆

なになに?新しい萌え話?

ミリアちゃん?

ミリアちゃんなら、「クロックくん×ミリアちゃん」とか、「アルゼン坊ちゃん×ミリアちゃん」とか?


あたしなら〜……

「伯爵様×アルゼン坊ちゃん」か「クロックくん×アルゼン坊ちゃん」かなぁ?


でもでも、やっぱりプリ剣だよね〜♡

「アルゼン坊ちゃん×剣士くん」もいいかもぉ♡

それか、「プリンス様×アルゼン坊ちゃん」とか?

で、最終的にはプリンス様とアルゼン坊ちゃんで剣士くんサンド?

わー!

ヤーバーイー♡

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