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第42章

第42章

辺境の町にミナが帰ってきた。


「やっほー!」


元気よくギルドの扉が開かれる。


「あれ?剣士くんは?」


キョロキョロとカイルの姿を探すが、見当たらない。


「もしかして、ソロで討伐にでも行った?それか浮気かな?プリンス様がいなくて寂しい剣士くんを、誰が誑かしたんだぁ?」


両手で双眼鏡を覗き込む仕草をしながら、受付へ確認しに行く。


「カイルくんなら、魔王になるために魔王領に行ったわよ」


「えー!?そんなー!」


ミナはバタバタと執務室にノックもしないで入ると、書類に追われているレオとタルタルにこう告げる。


「あたし、魔王領に行ってくるねー!」


「はぁ?遠いぞ?どうやって行くんだ?」


レオいきなりの宣言に思わずインクを飛ばす。

魔王のペガサス馬車であれば、ひとっ飛びなのだが、もちろんミナにそんな迎えは来ていない。


「はい、書き直しです」


冷静にタルタルは新しい紙を用意する。


「走って行ってくる!ばいばーい」


ミナはそのまま走って出て行ってしまった。

窓の外を見ると、ミナが走った道には土埃が舞っていて、既に姿は見えない。


「相変わらずすげぇな、あのロリババァ…」


「ババァといいますが…」


タルタルは眼鏡を指先で直しながら言う。


「ミナは世界樹の子どもですからね。まだまだ幼いですよ」


「その世界樹の子どもってのが信じらんねぇ…」


ボヤきながら、レオは書類を書き直すのであった。



その頃、緊張した面持ちでカイルは魔王に名乗りをあげるため、ブティックに来ていた。


「え…?服…?」


「領民にお披露目するためですよ!みんな、美しいものが大好きなのは、魔族共通ですので!」


ターリィは細い尻尾をゆらゆら揺らし、カイルの服を選んでいる。


「カイル様なら…こちらはいかがでしょうか?」


店員がオススメしてきた服を見ると、カイルは首を捻る。


「……エプロン?」


「はい!裸エプロンです!」


「ぶふっ!」


カイルは思わず吹き出してしまう。

よく見ると、その店員は渦を巻く翡翠色の角を持った夢魔だった。


「ダメですよ!なんかこう…威厳あるっぽい男性服ください!」


ターリィに言われ、渋々店員は下がっていった。


「そう言えば…ターリィは何族なんだ?」


ターリィは背中のコウモリのような翼をパタパタさせて、細い尻尾を見せる。


「ボクは吸血鬼です。牙もちゃんとあります」


いーっと、両手で口を引っ張り、牙を見せてくれた。


「吸血鬼ってことは…やっぱ血吸ったり…?」


「しませんよ。ボク、生臭くて血は嫌いなんです」


吸血鬼なのに吸血しない吸血鬼…。

それってどうなんだろう?

血が生臭くて嫌いと言うことは、他の吸血鬼は血を吸うのだろうか。


そんな話をしていると、夢魔の店員が戻ってきた。


「お待たせしました!威厳たっぷり、凛々しく、そしてちょっぴり魅惑的なお衣装をご用意いたしました!」


店員が広げたのは、黒を基調としたミリタリー風のロングコートと、金の装飾が施された立ち襟のシャツ、タイトなパンツのセットだった。


「おお…なんかカッコいい…!」


カイルは素直に感心する。


だが、ターリィは眉をひそめた。


「……これ、裏地が妙に薄いですね」


「はい♡ 体温が上がると徐々に透ける仕様です♡ 魔族って、変化と刺激、大好きですのでぇ♡」


「透けるのかよ!!」


カイルが思わず叫ぶ。


「え?でも大丈夫ですよ!上にマントも付きますし!マントには風が当たるとめくれる魔法がかかってます♡」


「丸見えじゃん!マントの意味ねぇし!」


「だって、カイル様は今注目の魔王候補ですもん♡このお衣装で、民意満場一致ですよ♡」


「そんなことで民意欲しくない…!」


ターリィは笑いを堪えるように咳払いし、改めて店員に言った。


「すみません、人間にも優しい服でお願いします」


「かしこまりました〜。でも…人間基準は、地味って言われちゃうんですよねぇ…」


夢魔店員はくねくねと腰を振りながら、次の服を取りに行った。


「ちょっと待ったーーーー!!!」


勢いよく店のドアが開く。


荒い息をつきながら、店の中に土煙を巻き上げて飛び込んできたのは、赤髪を高い位置で三つ編みにした、狂戦士の少女だった。


「ミナ!?なんでここに!?どうやって来た!?」


「走ってきたに決まってんじゃん!あたしの脚力なめんなぁ!」


「いや、なめてないけども…!」


ミナは息を整えるのも忘れて、店員が手にした「透ける軍服セット」に目を止め、目を輝かせた。


「なにこれ最高じゃん!!剣士くんがこれ着たらヤバいじゃん!?透けるの!?風でマントが舞うの!?ちょーぜつ性癖直撃なんだけど!!!プリンス様に見せつけてぇ♡」


「そんな発想ねぇから!!」


店員がすかさず営業スマイルで乗っかる。


「ご試着、いかがなさいますか?」


「試着なんていらないよ!これください!即買い!爆買い!お買い上げぇぇぇ!!」


音も立てて、大量の金貨袋をカウンターにぶちまけたミナ。


「ご購入ありがとうございまーす♡」


「いや、待て!俺まだ着るって言ってない!!」


「着せてもらいなよ!プリンス様にっ♪」


ミナは満面の笑みで購入済みの袋を抱え、鼻息荒くカイルに詰め寄った。


「ふふふ…その服着て魔王即位式とか最高じゃない!?観客全員魅了間違いなし!あたしの薄い本も特別号で出すからね♡」


「まだ即位できるかわかんねぇし!てか着ないからな!?」


カイルの抗議も虚しく、透けて舞って羞恥に染まる未来が、じわじわと現実味を帯びてきていた……。


「あの…人間に優しい服は…」


「はーい。お持ちしまーす」


ターリィの言葉に、一気にテンションが下がった店員は人間に優しい魔法が施されていない、普通の礼服を持ってきてくれたのだった。



☆ミナの推し観察日記☆

魔王即位式がもう結婚式でよくない!?

ってなると、剣士くんのウエディングドレス姿は見れないけど…

代わりにこの透ける服で…


式が終わるまで待ちきれないプリンス様が、途中で剣士くんをつれてっちゃって、そのまま…♡


むふふ…♡

本がいつもより厚くなりそう〜!

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