第4章
第4章
そこは町の製菓店。
ニーナに案内されて、カイルは興味深そうに焼き菓子を眺めている。
そんな二人を木の影から見守る小さい女の子の影。
「むむむ…!その位置はプリンス様の定位置だよ、バカ女!」
ニーナをアルヴィスに置き換えて妄想する。
『「我が剣よ、たまには息抜きが必要だろう。デザートでも食べて行かないか?」
プリンス様の髪が風になびき、そのプラチナブロンドの髪はめちゃくちゃいい匂いしそう♡
「ほら、あーん」
「アル、恥ずかしいよ」
ってイチャイチャするプリンス様と剣士くん。
「カイル、クリームが口元に…」
プリンス様が剣士くんの口元に付いたクリームを舐めっ………!!』
「と、尊いっ!!」
ミナはスケッチブックに今の妄想を書き殴る。
「……ん?ターゲットに変化あり!」
ニーナとカイルが人通りの少ない路地へ入っていくのが見え、後を追う。
-少し前-
アルヴィスとミナへのお土産にと、田舎では珍しい焼き菓子を買ったカイルは、ニーナにこう告げた。
「腕のいい錬金術師を探してるんだけど、知らないかな?」
「錬金術師…ですか?」
これからこの店に入り、ケーキでも一緒に食べようと思っていたニーナの顔が少し曇る。
が、そこは宿の看板娘。
すぐに可愛らしい笑顔に戻り、カイルの袖を引く。
「いい人居ますよ。ついて来てください」
案内されるままに、カイルはついて行く。
この時ニーナは思っていた。
錬金術師への用事はすぐに終わるだろう、と。
「こんにちは」
ニーナがとある路地裏の戸を開けると、そこは薄暗く少しカビ臭い臭いが鼻を突く怪しい店だった。
「ありゃりゃ。あんたさんは宿屋のニーナちゃんじゃあないですか」
店の奥からボサボサの髪に分厚い眼鏡を掛けた男性が現れる。
「ヒューイさん、お客様ですよ」
どうやら、この男性が錬金術師らしい。
カイルは頭を下げ軽く挨拶する。
「冒険者のカイルです」
そうして、ミナが討伐した飛龍の素材を見せて
「これで魔法使い用の防具作れませんか?」
「魔法使いですかい?あんたさんは剣士のようですけど?」
ヒューイはカイルを上から下までジロジロ見る。
その視線に粘っこい嫌な感じを覚えながらも、自分の要求を端的に伝える。
「俺じゃなくて、仲間の装備です。あいつ、放っておくとアクセサリーしか買わないから。それに、魔法使いの装備なら、防具屋より錬金術の方がいいって聞いたんで」
(仲間の魔法使いの装備…?)
ニーナはカイルの仲間を思い浮かべる。
確かに派手な魔法使いが居た。
……が、
(それ、女の子とのデート中に必要なくない…?)
カイルを見る目が少しずつ冷ややかになっていく。
そんなニーナには気付かずに、錬金術師とカイルは話に花を咲かせ始めた。
「なるほど、光属性なのに中二病で闇のプリンスと…って、それ、家出中の第一王子殿下のことですかい?」
「…あっ!こ、この話は内密に…」
光属性と言えば王族なのは常識だ。
「ひっひっひっひ。バラしたりなんてしやせんぜ?あたしゃキョーミありませんで。キョーミがあるのは…」
飛龍の素材をテーブルに広げて
「光属性に実用的に、しかし闇属性装備に見えるように如何に効率よく織り込めるか…ただそれだけですわ」
と言い切った。
ヒューイとカイルはあーだ、こーだと、こうだと中二っぽいだとか、金の紋章がどうだとかと話し合いながら装備を作り始めた。
「…………」
ニーナは突然立ち上がる。
「カイルさん、私お店の手伝いあるから帰ります」
「え?うん、案内してくれてありがとう」
走早にニーナは店を出ようとすると、カイルが慌てて呼び止め、買った焼き菓子の袋をひとつ渡す。
「本当に助かったよ、ありがとう」
ニーナは店を出ると、袋を見詰めた。
「仲間のお土産なのに、ひとつ多いなと思ってたら私へのお礼だったのね…」
「……バカ」とつぶやき、宿へ帰って行く。
「もういいもん。バカ!」
そんな様子を見ていたミナは、小さくガッツポーズを取る。
「剣士くんの鈍感力で女子場外!勝った!!やっぱり剣士くんの隣にはプリンスくんしか勝たーーん♡」
勝利の咆哮は青空に溶けて消えた。
☆ミナの推し観察日記☆
ビビったよー
女子の介入ビビったよー
でも、女子にも負けない剣士くん最高♡
顔には出さないけど、剣士くんもプリンス様好き好きだもんね☆
両想いじゃん!
はやく結婚しろー♡




