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第34章

第34章

「ねぇ、あたしお母さんに会えるの!?お父さんは…世界樹って木だよね?会えるの!?」


ミナは興奮気味にブンブンと腕を振り回した。


「残念ながら…」


イリューシアの紅水晶の瞳がふっと揺れる。


「姉は光に還られましたの…」


「ん?光??」


首を傾げるミナの肩に、アルヴィスはそっと手を置く。


「深淵たる奈落に堕ち、黒翼を身にまとい終焉たる眠りについたと言うことだ」


「余計意味わかんねーよ!」


カイルは即座にツッコむ。

が、ミナは意味が分かったらしくしゅんと俯いた。


そんなミナを励ますように、イリューシアは少し声を高めて言う。


「お父さまにはもう会われていますのよ」


「ん?」


ミナは小さく目線だけでイリューシアを見た。


「お父さまは、この水晶宮そのものですわ」


「そうなんだ…」


ミナは魔王城の大きい樹が自分に話しかけてきたのを思い出す。


「そうなんだ」


大きい樹は魔王城で、魔王城は水晶宮と呼ばれている。

つまり…


「そうなんだ!」


ミナが嬉しそうに顔を上げると、部屋のツタが優しくミナの頭を撫でた。


「……ミナ、よかったな」


少し羨ましそうに小声で呟くカイルに、アルヴィスは「我が剣よ」と肩をポンと叩く。


「我の存在を忘れるな。我らは共に堕ちゆく運命…」


「そう言う運命いらないから」


「釣れないことを言うな。我が剣は我と同じく闇の王となる器がある…それだけで運命は決まったも同然…」


「あ、そうだ」


アルヴィスの言葉を最後まで聞く気がないカイルは、イリューシアに話しかける。


「俺が世界樹に選ばれたから、魔王の資質があるって話でしたけど…」


イリューシアは白銀の髪を揺らしながら、カイルに近付くと、優しい声で言った。


「魔王になるには、名乗りをあげて、民意を問いますの。民の半数が賛成すると、魔王になりますわ。でも、世界樹に選ばれたからと言っても、必ず名乗りをあげる必要もありませんことよ」


ミナはキラキラした瞳で言う。


「剣士くん、魔王になっちゃいなよ!」


「え…そんな簡単に…」


カイルは戸惑いを隠せない。


「でね、プリンス様は王都に帰って王様になるの」


「それこそ簡単にはいかないだろう!」


ミナの無邪気な提案に、アルヴィスも困惑する。


「そうしたらね、プリンス様と剣士くんは結婚してー♡そうなると国が統合されてー♡」


うっとりと妄想するミナを眺めつつ、ティントルテンは呟く。


「平和的解決には、それもいいかもしれないな」


カイルと結婚と聞いて、困惑していた顔が一変。

アルヴィスは意気揚々と作戦に乗り始める。


「平和的解決!それは素晴らしいことだな!うん!我が剣と我がけ、けけけけ結婚………え、永遠の契約を交わせば…そう…や、やぶさかではないぞ!?」


声が裏返っている。


「は?アルと結婚とか…正気かよ。そう言うのはミナの本だけにしてくれ」


カイルの冷たい口調に、アルヴィスはその場で座り込んでしまった。


座り込んだアルヴィスを横目に、カイルはため息をつく。


「ったく…そういう冗談、ミナの影響受けすぎだろ」


「冗談ではない!我は至って真剣だ!」


「いやいや、毒されてるだけじゃん」


二人の言い合いを、ミナは楽しそうにスケッチブックを開きながら見ている。


「ふふ、やっぱり結婚式の衣装、描いとこ〜♡剣士くんがウエディングドレスね♡」


「やめろぉぉぉぉ!!」


カイルの声が、部屋に響いた。


ティントルテンが、ふと真顔に戻り、カイルに目を向ける。


「だが、本当にそのくらい大胆な手段でも取らねば、国同士の統合など夢物語だ」


「それなら、俺じゃなくったって…」


カイルはイリューシアに視線を送ると、


「あら、わたくしはいけませんわ」


イリューシアは静かに首を振った。


「だって、わたくし既婚者ですもの♡」


「な、なんだってぇ!?」


こんな美女を誰が射止めたと言うのか。

ティントルテンは思わず口に出してしまった。


「し、失礼した」


コホンと軽く咳払いをする。


その時、扉が開き、ミナを連れてきてくれた少年、ターリィと、全身が毛で覆われ、銀色の鎧を身に付けた二足歩行の獅子が入って来た。


「イリューシア、時間だ」


「あら、もうそんな時間?」


イリューシアは獅子の呼びかけに、近くへ駆け寄る。


「わたくし、これからお務めですの。明日わたくしの馬車で町までお送り致しますわ。ターリィに案内させますので、観光でもしてらして」


そう言うと、イリューシアはミナとカイルの額に口付けする。


「ぬ……ああぁぁぁ!??」


アルヴィスが声ならぬ声で絶叫するが、気にせずイリューシアは言った。


「これで、みんなと同じように街や水晶宮が見えますわ。違うものが見えていたら不便でしょう?」


柔らかく笑うイリューシアに、カイルとミナの心が和む。


「では、また。ごきげんよう」


イリューシアは獅子の腕に絡みつくように寄り添う。


「行きましょ、ダーリン♡」


そう言いながら部屋をあとにする。


「おお…、確かにあんなにもふもふな伴侶ならば…」


ティントルテンは羨ましそうに二人を見送った。



☆ミナの推し観察日記☆

魔王剣士くん♡

王様プリンス様♡

二人は結婚して、国をひとつにするぅ♡

尊い…

タキシードのプリンス様…

ウエディングドレスの剣士くん…

誓いのキス〜♡のあとは〜!

夜の〜……

うひゃひゃ〜♡

これは描かなきゃ〜♡

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