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番外編『盟約衣の刻む運命』

番外編『盟約衣の刻む運命』


「聞いてくれっ、我が下僕よ…」


アルヴィスは持参したワイン瓶から直接ガブ飲みし、ヤケ酒していた。


雑多とした部屋に光が射し込むと、埃がふよふよ浮いているのが目につく。

そんな部屋に怪しい瓶やら薬草やらを棚に並べて商売している錬金術師、ヒューイは困ったようにアルヴィスを見下ろした。


「あっしはいつからあんたさんの下僕になったんで?」


「今からだっ!我の愚痴を聞くのだっ!」


なんちゅー酔っ払いだろうか…。

こう言う時、アルヴィスが王家の血筋だと言うのを再確認させられる。


「傲慢でワガママ。エドワード殿下にそっくりっすね」


「なんだと!?我が剣を虐める奴と一緒にするなっ!」


盲目的な執着。

エドワードは過剰だが、血は争えないような気がする…。


「で、どうしたんで?」


仕方なしにヒューイは薬品を混ぜながら聞いた。

アルヴィスは空になった瓶をテーブルにドンっと置くと、真っ赤な顔で涙を浮かべる。


「め、盟約衣が…!」


「あー、あのカイルさんに贈ったスカートですかい」


「そうだ、私とお揃いのフリフリスカートだっ!」


アルヴィスはショックが大きいのだろう。

中二言語すら忘れている。


「カイルに拒否られたーーー!!!」


うわーん、と、テーブルに突っ伏して泣きじゃくる。


「ま、そうでしょうなぁ」


ヒューイは聞き流しながら、混ぜた薬品を布に染み込ませた。


「それはいいんだ!カイルは照れ屋だから!恥ずかしいのは知っているんだ!」


突っ伏しながらテーブルをバンバン拳で叩く。


「いいんですかい。なら、なにがご不満で?」


ヒューイは薬品に浸した布を、平台にシワを伸ばしながら丁寧に貼り付けていく。


「その盟約衣をティントルテンに渡した…。しかも、ティントルテンはアルゼンに渡すつもりだ…」


「はぁ…。それはさぞかしショックでしょうなぁ…」


ヒューイは淡々と作業を続けていく。

棚の瓶を物色し、ひとつ手に取ると薬草を一枚取り出した。


「このままではっ!アルゼンとお揃いになってしまうっ!」


悔しそうに顔を上げたアルヴィスは、自分とテーブルを繋ぐ鼻水を袖で拭った。


「アルヴィスさん、ばっちぃっすわ。これ使ってくだせぇ」


ため息をつきつつ、ヒューイはティッシュ箱を押し付ける。


「すまない…」


アルヴィスは受け取ると、盛大に鼻をかんだ。


「ま、でも問題ないんじゃないすか?あのスカート、普通のスカートでしたし…。特殊付与いらない依頼なんて初めてっしたわ。これからは普通の服屋に行ってくんなせぇ」


「そうじゃないんだ…。このマントを作ってくれたお前にこそ、作って貰いたかったのだ…!」


毎日着ているせいか、カイルから贈られた自慢のマントは金の刺繍が所々ほつれてきている。


「そんなに気に入ってくれるとは、職人として嬉しい限りですなぁ」


ヒューイは照れ隠しだろうか。

すでにボサボサの髪をガシガシかいて、さらにボサボサにした。


「……ってところで、あんたさんのスカートはどうしてるんで?」


ふと、ヒューイは気になった。

お揃いで作ったのだから、スカートは二つある。

カイルに贈るハズだったスカートと、アルヴィス本人用のスカートが。


「もちろん履いている」


「……それ、意味あるんすか?」


アルヴィスの漆黒のマントは長く、端から先はブーツしか見えない。

中に何を着ているのか、傍目からではわからないのだ。


「意味はある!外から見えなくとも、羞恥心が我を苛むのだぁ!」


「うわぁ…。それ、コートの中は全裸的な変質者でねぇっすか。捕まってもあっしは知りやせんぜ?」


「全裸っ!?なにを考えているのだっ!ヒューイのえっち!」


アルヴィスは己を護るように両腕で自分の体を抱こうと勢いよく立ち上がり、棚に頭をぶつけて倒れ込む。


「あだっ…!いたいぃ…いたいよぉ…」


さめざめと泣き出すアルヴィスに、ヒューイはヤレヤレと肩をすくめた。


「あんたさん、飲みすぎでさぁ。仕事の邪魔なんで、出てってくだせぇ」


そのままヒューイにアルヴィスは追い出されてしまった。


「やー!いれてぇー!びえぇーーーん!」


その日、ヒューイは仕事に集中できなかったと言う。

そして、その日を境にヒューイの店のドアにはこんな貼り紙が。


『酔っ払いは容赦なく追い出します』

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