第23章
第23章
「アル、いいのか?てめぇに城に戻れってことじゃねぇか」
レオは我が子の身を案じていた。
しかし、アルヴィスは不敵に笑う。
「いいとも!全て抱えて奈落に堕ちよう!堕ちた先こそ、我が王城なり」
レオは頭をガシガシ掻きむしる。
「つまり…どう言うことだ?」
カイルをチラッと見るが、カイルも首を捻っていた。
「とりあえず、アルのことは置いといて…」
カイルがそう言うと、アルヴィスはあからさまに寂しそうに涙を流した。
「我が剣!我を無視するなー!かまってー!」
「でたよ、かまってちゃん…」
抱きつこうとしてくるアルヴィスを押し退けながら、カイルはミナに向き直る。
「『色なき者』とかってなんなんだ?ミナのこと教えてくれ」
「あたしのことを知りたいなんて…剣士くんのえっちぃ♡」
「なんで!??」
ミナからの返しに、カイルは固まる。
「肉食系剣士くん、いいかもー♡誘い受けとか…リバもいっちゃう?」
鼻息荒く話し出すミナに、カイルは距離を置く。
「アル並に呪文言ってくるな…」
「誘い受け…!リバ…!それは甘味なる禁断の果実…。我が剣がいいのなら、我は共に堕ちようぞ…」
アルヴィスはチラチラ顔を赤らめながらカイルを見る。
そんなアルヴィスに、カイルは疑問符を並べた。
気を取り直し、ミナのことを教えて貰うように頼むと、ミナはめんどくさそうに手をひらひらさせた。
「細かいことはいいじゃん〜。三章と四章の間の番外編読んどいて〜!」
「は?意味わかんねぇし」
カイルが眉を寄せると、司祭の一人が静かに前へ出る。
「ミナ様は、神殿の前に捨てられた日より、既に“兆し”を持っておりました」
「またまた大げさなんだから〜」
ミナがため息をつくが、司祭は淡々と説明を続ける。
「通常、魔力の色は『白』が勇者の血、『赤』が人の血、『黒』が魔族の血を示します。しかし、ミナ様はそのいずれにも染まらぬ『透明』な魔力…、即ち『色なき者』」
司祭の目が真剣な光を帯びた。
「真の『色なき者』は、魔力そのものが世界の理から外れ、測定器には映らず、神器すら欺く存在…」
カイルが驚いたように目を見開く。
「なんだよ、その設定…」
「世界の均衡を変える存在。伝承にある『裂かれし翼』を繋ぐ鍵なのです」
「鍵だって!18禁の匂いがプンプンするね!」
ミナはなんの妄想をしているのか、ぐへへと笑い、プリ剣本を掲げた。
「でもあたしは、そんな鍵と鍵穴のR指定とかどうでもいいし!推し活が最優先!むしろ、推しが世界!」
「どこをどうツッコんでいいか…」
カイルが呆れる横で、アルヴィスはうっとりと呟く。
「推し活…それは我が剣と我の、聖なる儀式…」
「なんで推し活が儀式なんだよ…」
ミナは恍惚な表情で言う。
「そして、あたしは推しの言葉なら全部わかる!プリンス様は、自分のいる場所が城になるって言ったんだよ〜。剣士くんの隣が国の中心…尊い…♡」
辺境の町が、アルヴィスの存在を持ってして王族の血脈が闇の民を支持したとの報せを受けたエドワードは、書類を机に叩きつけた。
「兄上は…兄上は、あの卑しい奴に誑かされているだけだ…!」
震える声に、アルゼンは冷静に返す。
「ですが、あの町は厄介です。ギルドが一致団結し、神殿までが町側についたとか…」
アルゼン自身、その報せが意味するものを理解していた。もう王族の権威は揺らぎ、勝算は薄い。
(こちらに残されたカードは、せいぜい騎士団くらいか…見切りをつけて、寝返った方が得策…)
そんな算段を巡らせていると、エドワードの口から予想外の提案が飛び出す。
「魔王領に協力を仰ごう」
アルゼンは盛大に咳き込んだ。
「ま、魔王領、ですか…?殿下、それは…」
その提案は、矛盾を孕んだ危険なものだ。だが、エドワードの瞳は妙に確信に満ちていた。
「魔王領は、かつての戦争で敗れた。であるからには、奴らは勝者である我々に尽くす義務があるはずだ。全てが終わった暁には、魔王領は『協力できて光栄だ』と泣いて感謝するだろう!」
(するわけねぇだろ、そんなこと…)
心の中で毒を吐きつつ、アルゼンは表情を崩さず応じる。
「では、私が使者として同行しましょう。安心してください、殿下」
そう言いながら、別の土地への逃亡計画を、着実に頭の中で描き始めていた。
☆ミナの推し観察日記☆
推しとは!?
推しは全て!
推しは世界!
推しの幸せがあたしの幸せ…♡
プリンス様の、剣士くんの隣が自分のお城発言はもうプロポーズでしょ♡
尊い…♡




