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第3章

第3章

飛龍の討伐を終え、素材と報酬を手に入れた一行は、町の宿屋に立ち寄った。


「いらっしゃいませっ!」


ぱたぱたと駆け寄ってきたのは、エプロン姿の少女。

胸元に店名の刺繍が入った制服を着こなした、明るい髪色の看板娘だった。


「わぁ……お兄さん、剣士さんなんですか?すごい、カッコイイ……♡」


潤んだような瞳で見上げながら、彼女はカイルに小さく笑いかける。


「あっ、私、ニーナっていいます。あの……ご注文は、こちらのジビエ料理がおすすめです。狩りの後には、滋養が大事なので……」


やけに距離が近い。


ほんのりと香る甘い匂いと、恥じらいが混ざったような柔らかい声。

けれど、あざとさを感じさせないのは、その視線に一途な気配があったからかもしれない。


「えっと……ありがと。じゃあ、それをもらおうかな」


カイルが戸惑いつつも答えると、ニーナはぱっと笑顔を咲かせて、嬉しそうに頷いた。

その場を離れるニーナを見て、ミナは不機嫌そうに言った。


「…え?今剣士くんに色目使ったよね…?剣士くんにはプリンス様が居るのに…」


「色目?なんの事だ?」


カイルはキョトンとしている。


「カイル、貴様は我の剣なのだぞ。我以外の下で勇姿を振るうなんぞ許さないからな…」


「??ちょっとなに言ってんのか分かんないや」



次の日の朝…


カイルが日課の朝の素振りをしていると、ニーナが駆け寄ってきた。


「おはようございますっ、カイルさん!」


可愛らしいワンピースに身を包み、頬をほんのり赤らめている。


「えっと……どうしたの?」


「あの…王都の外からいらしたと聞いたので…町の案内、させてくださいっ!」


王都出身だったが、もう何年も来ていなかったため、町の雰囲気も少し変わったように感じたカイルは、案内を頼む事にした。


「ありがとう、ニーナ。着替えてくるから待ってて」


部屋に戻り、朝の訓練で流れた汗を拭おうと服を脱ぐと、小さい悲鳴が聞こえた。


「ちょっ!カイル!いきなり脱ぐなといつも言っているだろう!」


アルヴィスが顔を真っ赤にしてチラチラこちらを見ている。


「一緒に行水したりすんのに、着替えるのはダメなのかよ。いっつも意味わかんねぇ」


「お、お前という存在は、油断ならぬ…!まるで太陽のように無垢で、無防備で……っ!」


アルヴィスは顔を背けながらも、目の端でこちらを見据えて続けた。


「その無遠慮な光を受け止めるには、我の理性という結界がまだ未完成なのだ……! だから……不用意に脱ぐな、と言っているのだ!!」


その様子をミナは鼻息荒くスケッチブックに走り書きする。


「プリンス様マジ剣士くんガチ勢♡尊いぃぃぃ〜!ついでに剣士くんの裸体スケッチ♪しなやかな筋肉が色気ムンムンだぁ。こりゃプリンス様の理性ダムが崩壊して押し倒しに発展…」


何やら不穏な妄想でカイルは鳥肌が立つ。


「我のダムは奈落まで続く深淵だ!我が剣よ、安心するがいい!」


「アルまで乗るなよ…」


アルヴィスがミナのスケッチブックを横目で盗み見すると、ミナの妄想全開で刺激的すぎるスケッチと文章の羅列で思わずミナの腕を押さえる。


「貴様っ!我の闇をピンク色に上塗りするなぁ!」


「え?なになに?」


カイルも興味本位で覗き込もうとするが、


「穢れるっ!我が剣が穢れるっ!!」


と、カイルとの間に光の結界を貼って侵入不可にしまう。


「なんだよ、それ」


仲間外れにされて少し拗ねるように、カイルは着替えを済ませる。


「ちょっとニーナと出かけてくる」


と言って部屋を出て行った。


「え?ニーナってあの看板娘…?」


「カイルが女と出かける…?今までそんなことなかったのに…」


「あの女、なんか臭うよねぇ…。剣士くんの隣にはプリンス様って決まってるんだからっ!」


と言い残し、ミナは窓から飛び降りて部屋から出て行った。


「ミナ!?ここは三階だぞっ!我の黒翼なくしてその高さを渡るのはっ…」


アルヴィスが急いで窓を覗いたが、ミナの姿はすでになかった。

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