第2章
第2章
ギルドに戻った三人は、討伐報告と素材の納品を終えた。
カウンター越しの受付嬢が、ぴしっと背筋を伸ばす。
「ご苦労様です。……ですが、追加の任務が入りました。王都の上空に飛龍が出現しました。各地の高ランク冒険者に出動命令が出ています」
その言葉にカイルとアルヴィスは怪訝そうな顔をする。
「うわ、王都か……」
「え?なになに?二人の出身地でしょ?」
何故ミナがその事を知っているのか…?
「推しの情報はちゃんとぜーんぶ調べてるからっ」
自信満々に胸を逸らす。
「プリンス様が家出王子様なのも知ってるしぃ?だから王都に行きたくないのかなー?」
したり顔で迫られて、アルヴィスは何とかはぐらかそうとする。
「お、王家は代々光属性だろう。我は闇に堕ちたる奈落のプリンス…。王家とは真逆の存在だ」
「あ、光属性って王族だけか」
アルヴィスの魔法を見れば光属性なのは一目瞭然である。
「なっ…!では、我の高貴なるオーラのせいで昔から皆に正体はバレて…!」
「だな。バカだな、お前」
カイルは笑いながら言ったが、ミナがどこまで情報を掴んでいるのか、ふと不安になった。
しかし一行は、そんな不安はよそに、王都へ向かう。
王都につくなり、アルヴィスはそっと眼鏡をかけた。
「え?眼鏡?お前目悪くないだろ…って、なんだよそれ!??」
カイルは思いっ切りアルヴィスを指差す。
「失礼だぞ、カイル。人に向かって指を差すな」
鋭い眼差しでカイルを見たアルヴィスの顔には…
「ぶっ…!は、鼻眼鏡…!」
「……!!そ、そうか、そんなに似合うか。この闇の秘宝を使ってしても、我の美貌は隠しきれぬか…」
何を勘違いしたのか、アルヴィスは手を高々と上げ嬉しそうにポーズを取る。
カイルはツボって腹を抱えて苦しそうに笑っている。
「やだー、こんな所でイチャイチャしちゃってー♡」
ミナはそんな二人を見ながら姿をスケッチする。
すると突然、王都の通りがざわめき始めた。
衛兵たちの整列、道を開ける人々。そして現れたのは…
「……エドワード……」
金の髪と鋭い瞳、完璧な姿勢で騎士団を率いる青年。アルヴィスの弟、第二王子であり現在の王太子エドワードだった。
「兄上!」
その姿を見つけたエドワードは、まるで吸い寄せられるように歩み寄る。
「やはり……その麗しいお姿、まさしく兄上……!」
「麗しい鼻眼鏡…」
再びカイルが吹き出す。
「帰ってきてくださったのですね……!」
エドワードは膝を折り、アルヴィスの前で深く頭を垂れた。
「兄上さえ戻ってくだされば、王都は……いえ、私は……!」
「……エドワード」
アルヴィスは微かに眉をひそめ、視線を逸らす。
彼はかつて、城を出たときに兄弟の縁も切った。
そして今はカイルの隣で旅をしている。
腹を抱えて笑いを堪えているカイルに、エドワードが気付くと冷たく言い放つ。
「……愚民、まだ兄上を振り回しているのか」
「は?振り回してねぇし」
「卑しいお前がどんな存在か、私は知っている。兄上を惑わせて私から兄上を奪うのはやめろ!」
声を荒らげるエドワードを、アルヴィスが威圧的に制止する。
「……エドワード、貴様、カイルを愚弄する気か」
静かな、だが明確な拒絶の声。
「アル……?」
カイルが目を丸くした。
長年の付き合いだが、アルヴィスのそんな冷たい目を見るのは初めてだ。
「愚弄などとっ!実際にそうではないですか!兄上は国の宝です。そんな兄上がこんな卑しい奴と一緒にいてはなりません!」
エドワードは嬉々としてアルヴィスに縋る。
「全ては兄上のためなのです!」
アルヴィスは、ため息をつく。
「え?なにこれ?ヤンデレ弟が超絶ブラコンでお兄ちゃん大好き♡恋人なんか認めないんだから!って拗ねちゃって執着心丸出しの三角関係〜!?♡」
ミナはスケッチブックに走り書きを始める。
「でもこの様子だとプリンス様はやっぱり剣士くん一筋っぽいし、殿下に勝ち目なくない?やだぁ、殿下悪役ポジじゃん!萌える展開キターーー」
しかしその瞬間……
「警戒態勢を!飛龍、接近中ッ!!」
衛兵の叫びが空を裂いた。
巨大な飛影が、王都上空を横切る。
「チッ、よりによってこんな時に……!」
エドワードが剣を抜こうとしたその時――
「誰だァァァァァァァ!!!!!!いっっちばんいいとこ邪魔した奴はァァァァァァ!!」
萌えシーンを邪魔され、怒り心頭のミナが高く飛び上がり、大斧で空を裂いた。
グォォォォォ!!!
飛龍は吠えるような悲鳴を上げ、真っ二つに体が割れる。
地面に倒れた飛龍の残骸を見下ろしながら、ミナはにっこりと振り返り言った。
「はい♡続きどーぞ♪」
先程とは裏腹に、静寂が当たりを包み込む。
☆ミナの推し観察日記☆
プリンス様の鼻眼鏡、美形とボケのギャップエモ♡
それにツボっちゃう剣士くんってば超かわいい♡
エドワード殿下があんなに愛が重いなんて知らなかったけど、これはかなりいいんじゃない?
ライバルキャラ確定☆
でも、プリ剣の愛は負けないんだから!
むふーん♡




