第11章
第11章
ギルドで報告を終えたアルヴィスが建物から出て来た。
「ごめん、全部任せて」
カイルは申し訳なさそうに言った。
「気にするな。愚弟のせいで気まずかろう」
報告はアルヴィスに任せて、カイルとミナは外で待っていたのだ。
「彼氏感!頼れるプリンス様もう旦那様!」
「旦那様か…。我が剣の為ならば、やぶさかではないな!」
アルヴィスはどこか満足げに、両腕を大きく広げてみせた。
何かを期待するようにチラチラとカイルを見る。
いつもならここでツッコミが入るはずなのだが…、
「…ん…。ありがと」
と、ひと言だけ言って歩き出す。
アルヴィスは慌ててカイルを追い、王都の門を出るが…、カイルは一度も振り返らなかった。
様子がいつもと違うことに不安を覚えたアルヴィスは、心配そうに先回りしてカイルの前に立つ。
「我が剣よ、具合でも悪いのか?」
「あ、へーきへーき」
そう言いながらも、カイルの頬はうっすら紅潮し、瞳は潤み、視線はどこか宙を彷徨っている。
「なにその顔!えっろ♡もしかして、プリンス様への想いを自覚しちゃったとか?」
「っ!!そ、そんなっ!し、しかし!魂の契約を果たさんとするならば…歓迎しても…」
アルヴィスが顔を赤くしながら言いかけた、その瞬間。
カイルはふらりと体勢を崩し、アルヴィスの胸にもたれかかる。
「あ、悪い。ぼーっとしてた」
らしくない仕草に、アルヴィスは肩を貸しながら木陰まで連れて行く。
「カイル、触るぞ」
そう告げてから、アルヴィスはカイルの額にそっと手を当てた。
……熱い。
額をさらされ、角があらわになると、カイルはわずかに首を振って、力なく抵抗した。
「やめろって…へーきだから…」
ミナも心配そうに顔を覗き込む。
「剣士くん、角の色、濃くなってない?」
遺跡の封印を解いた頃には、根元だけが薄紅に染まっていたカイルの角。
だが今では、その色が半分以上にまで広がっていた。
アルヴィスは額に手を添えたまま、慎重に魔力の流れを探る。
「魔力が乱れている」
おそらくは、今まで眠っていた夢魔の力が、古代遺跡で触れ動き出した副作用だろう。
ミナが地図を広げて道を確認する。
「ちょっと遠いけど、宿があるよ。安静にした方がいいんじゃない?」
アルヴィスは頷く。
「そうだな、帰る前に休んで行こう」
カイルを背に負い、アルヴィスは歩き出す。
「……萌えシチュ…♡ありがとう、世界…♡」
その様子に、ミナはヨダレを垂らした。
数分後…、とある温泉宿にたどり着く。
小さい外観だが、異国情緒溢れる古風な造りに、宿主のこだわりが見て取れる。
「すまない。三人なんだが部屋はあるか?」
迎えた女将は、グッタリしたカイルを見て、あっと声を上げた。
「これは大変!すぐご用意しますね」
部屋に案内されて、ミナはスケッチを始めた。
「これは和風だねぇ。浴衣とかあるのかな?温泉で火照った二人が急接近とかぁ?ありかもぉ?」
アルヴィスはと言うと、カイルを布団に寝かせて心配そうに髪に触れている。
「お連れ様は私が見ていますから、温泉に浸かって疲れを癒してはいかがですか?」
女将は静かに提案する。
が、アルヴィスは首を振って断った。
カイルを見る女将の目が、やけに熱っぽく見えたからだ。
「提案はありがたいが、仲間のことは仲間でなんとかする」
「そうですか。では、ごゆっくり…」
名残惜しそうにカイルを横目で見ながら、女将は去って行った。
「……また女が剣士くんに色目使うし…」
不服そうにミナが呟くと、アルヴィスはため息をつく。
「こいつは昔から人を惹きつける…。しかし、今は昔より危険かもしれない」
「やっぱ、夢魔の力?」
ミナの鋭い指摘に、思わずミナの顔をじっと見つめた。
「ふふーん。ミナさんには分かっちゃうのだー。剣士くんの溢れ出る色気!古代遺跡の霧と似た甘ーいかおり♡」
「あの霧は無臭だったが…?」
アルヴィスは首を捻る。
「甘かったよぉ♡むふふー♡」
ミナはあの時に見た幻を思い出して、にやにや笑った。
☆ミナの推し観察日記☆
剣士くんの色気がダダ漏れでヤバイ〜!
プリンス様、めちゃくちゃ我慢してんじゃね?
剣士くんのこと『こいつ』とか言っちゃって、いつもの中二が出てないしー!
このまま看病イチャイチャライフ確定かも?




