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第8章

第8章

紫がかった霧が立ち込める。

そこで三人は、それぞれに揺らめく影を見ていた。


ひとりは、顔も知らない両親。

ひとりは、大好きな二人。

そしてもうひとりは…、


アルヴィスは眉を寄せて顔を歪ませた。


「カイル、どうしたんだ!」


アルヴィスが見ていたのは、小さい頃

、出会った頃にそっくりな目をしたカイルだった。


「白い光が闇のプリンスとかバカバカしいんだよ。もうウンザリだ。どうせお前も、本当は俺の事が恐いんだろ」


そう言い放つカイルの瞳は氷のようだ。


「……っ!カイル、私はそんな事は思ってない…」


胸の奥がチクチク痛む。


(冷静になるんだっ、状況を把握しろ!周りは霧だらけ…。これは魔法?いや、精神系…?)


カイルが何か言っていたが、アルヴィスは耳を塞いで頭を振る。


(これは幻だ。古代兵器の封印が漏れているんだろう…)


ふと顔を上げると、カイルと目が合った。

胸がズキンと傷んだが、とある違和感を感じた。


(所詮は幻か)


不敵にニヤリと笑みが零れる。


「本物に似せても、その深淵までには深く潜れないようだな、偽物よ!」


アルヴィスは片手を胸に当て、片手に握り拳を作って自信満々に語り出す。


「本物のカイルは、深い谷底の如く漆黒に溶けし奈落の闇深さをたたえた憎悪の化身のよう…。だが、我の魔眼にはそこに一欠片の繊細な浄化の聖なる光を見出し………」


云々かんぬん…。


幻のカイルは、言葉を発さずに無表情で見守っている。


「やはりな。本物はな、我の魂に共鳴してツッコミという名の絆を即座に提示してくるのだ!貴様がカイルに成れるハズは微塵たりともない!!」


アルヴィスが否定した事で、幻は霧に霧散した。


「ふんっ、他愛もない。それより、カイルが心配だ…」


ミナの事はどうでもいいと言わんばかりに、カイルとの合流を目指す。



アルヴィスがカイルの幻と対峙している時、ミナは推しの二人…、

アルヴィスとカイルの幻と相対していた。


椅子にアルヴィスが座り、その膝にカイルが座っている。


「なに、このシチュ!?尊っっ!!」


ミナは急いでスケッチブックを取り出す。


「ひゃあ!プリンス様が剣士くんの耳たぶ甘噛み♡に剣士くんなにその顔〜♡えっろー!最高にえっろ〜♡」


鼻息が荒くなり、スケッチする手が速くなる。

幻覚の二人は更にエスカレート。


「ダメだよぉ♡それ以上はR指定だからぁ♡でも見たぁーい!やっちゃえやっちゃえ〜!」


絶叫しながらスケッチブックがどんどん埋まっていく。

…と、その時…、


「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「え?剣士くんの声?」


それは紛れもない、苦痛に苛まれ苦しむカイルの叫び声だった。

ミナは、初めて聞くカイルの叫び声に、霧の向こう側を見つめる。


「本物が苦しんでる…」


ミナはすっくと立ち上がると、幻覚の推しを通り過ぎて走り出した。


「本物が苦しんでるのに、幻で萌えてる場合じゃないっ!あたしは、本物のプリ剣しか勝たんのだーーー!!!」


霧を振り払い、カイルの元へ急ぐ。


アルヴィスとミナは、光の射す方へ自然と足を向けていた。

カイルが戦っているであろう場所を目指して。

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