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モブとして覚醒したからには 〜ヒロインはサポートキャラのようで何故か私が全ての出来事の中心にいる〜  作者: もーりんもも


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湿っぽい展開はお断り

「やっとナタリアたちに追いついて、君を見つけたと思ったら、死体があるし――あ、いや。すまない」

「ううん。謝らないで。騙された私が馬鹿だった。まかり間違えば、私が転がっていたかもしれないんだし……」


 ずっと厳しい表情をして押し黙っていたロレンツォが口を開いた。


「それでいったい誰がやったんだ? お前の命の恩人はどこの誰なんだ?」


 その整った顔で詰問するような口調はやめてくれないかな。

 めちゃくちゃ心臓に堪えるんですけど。



「私もびっくりしたんだ。ちょうど運よく通りかかった方がいて。その方がすごい使い手で、もう驚いたのなんのって。うーん。いったいどこの誰なんだろう?」


「はあ?! 何だそれ! 名前を聞くとか、普通するだろ」


 ロレンツォだけじゃなく、シルヴァーノもナタリアちゃんも、同じように、呆れたような驚いたような顔をしている。


「あは。あははは」


 ……普通。普通かぁ。どうしよう。私、普通が苦手みたい。



「死んだ男の身元もそうだが、その偶然通りがかって君を助けたという人物の調査も、遅々として進んでいないらしい。上層部は焦っていると聞いた」


 シルヴァーノってば、本当にリーダーって感じ。

 そういう情報もちゃんと入手しているんだ。



「馬鹿みたいに『へえー』って顔をしているが、お前……。どうせすぐに、マヌエル団長に尋問されるんだぞ。そんなアホ面をしていると、手荒いやり方に変更されるかもしれないな」


 もうロレンツォ。脅かさないでよね。私、一応、襲われた被害者でもある訳だし。



「尋問? 手荒いやり方って……。そんな。生徒相手にまさか……」


 いや、あり得る。あり得るかも!

 あのマヌエル団長ならあり得る! 

 ヤバい。ヤバい。ヤバい。


 私が目を白黒させていると、シルヴァーノが思い出したように切り出した。


 

「それより、ニコレッタ先輩のことは聞いたか?」


 ナタリアちゃんが、チラッと私を見てから黙ったまま俯いた。

 みんな気遣ってくれているんだな。

 私は私なりに結論を出しているんだけど。



 あの手紙も――。

 ニコレッタ先輩から渡された手紙には、「塵一つ残すな」とだけ書かれていた。

 その手紙は、マヌエル団長から上層部へと渡っていることだろう。



 重たい話は、リーダーとしてシルヴァーノが請け負うらしい。



「おそらく、呪い袋を置いた犯人はニコレッタ先輩だ。それが証拠に、昨夜から姿が見えない。君に見つけられたから排除しようと目論んだのか、(はな)から君が狙いだったのか……。君の命を奪おうと計画したことから、君を狙って呪い袋を置いた可能性の方が高いと思う。君は――何か心当たりはないか?」


 ……ある。

 それに、あの男にはっきりと言われた。私が目撃してしまったからだと。

 あのブツは相当ヤバい物だったんだ。

 それを入手しているニコレッタ先輩を見ちゃったから。


 ああでも。その時のランニングの話はしたくないな。


 ――ってか、こういう湿っぽい展開は却下! 却下だ、却下!

 本編の圧力かもしれないけれど、私が力を発揮できるアナザーストーリーでもあるんだから、抗ってみようじゃないの!


 だいたい、女生徒があんなゴロツキと繋がっていて、口封じに下級生を亡き者にしようなんて、そんなサスペンスだかミステリーだかの要素を入れないでよね!

 シナリオライター出てこーい!!



 ……とにかく。

 ここでこれ以上、この事件を膨らませる訳にはいかない。

 私は心当たりについては言わないことに決めた。

 

 ニコレッタ先輩がこの後どう動くかわからないけれど、今後はセンサーで感知するもんね。

 だから辛気臭い話はやめて、乙女ゲームの世界らしく、「うふふふ」「あははは」のラブコメ展開を希望します。



「……お前。今、全然違うことを考えていただろ?」

「うぇええっ!」


 しまった。驚きすぎた。

 「はいそうです」と言ったようなものだ。

 ろ、ロレンツォ君。なぜわかった?



「それにしても。いくら先輩に言われたからって、まさか学園の外へ出るとはな……。お前は何を考えているんだ。どう考えてもおかしいだろ。そんなこと言われて、『はい。わかりました』って出ていくやつがあるか。普通は無理だって断るだろ」


 そうなんだー。そこまで常軌を逸した行動だとは思わなかったよ。  

 ロレンツォはイライラした様子で、非難がましい目つきで私を見ている。


「……お前。わかっているのか? 寮を抜け出すことと、学園を抜け出すこととは、処罰は処罰でも天と地ほどの差があるんだぞ」


 ギクッ。


「うぅ。本当にごめんなさい。みんなまで私のせいで」


「いや。処分のことは別にいい。嫌なら出ていかなければよかったんだからな。オレたちは自分の意思で君を追いかけたんだ。気にするな」

「そうよ。カッサンドラ」

「まあ。それはそうだ。それに俺たちの場合は、緊急事態に対処した訳だから、お前みたいに勝手に抜け出したのとは違う。寛大な処分が下されるはずだ」


 最後のロレンツォの言葉は回りくどいけど、要するに「心配するな」ってことだよね。


「み、みんなー」


 大好きだよっ。

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「つぎラノ」への投票ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
この後に及んでまだ隠し事するようん危機感低いままとか、さすが酔っ払って頭割って死んだだけのことはあるな
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