表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブとして覚醒したからには 〜ヒロインはサポートキャラのようで何故か私が全ての出来事の中心にいる〜  作者: もーりんもも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/44

編入試験(入学できないと困るんです)

「コホン」


 カストさんが静かに咳払いをした。


 はっ!

 見惚れている場合じゃなかった。



「し、失礼しました。私はカッサンドラ・ウルビーノです。編入試験を受けにやって参りました。よろしくお願いします」


 カストさんは、「うんうん」と優しくうなずいてくれたけど、マヌエル君は、「けっ。お前みたいなのが何しに来やがった?」とでも言いたげに、露骨にブスッとしている。


 うん。第一印象が最悪なのは私のせいなので、そう思われるのも無理はありません。はい。



「マヌエル団長。先程は大変失礼いたしました。心からお詫びいたします」

「ふん」


 あ、マヌエル君が横向いちゃった。


「まあ。君ほどはっきり言葉にする者も珍しいが、よく間違われるのだ。今後、気をつけてくれればいい」


 うわあ。上役なのにフォローしてくれるなんて。カストさんは本当にいい人だなあ。人間ができているわ。

 顔良し。性格良し。言うことないなあ。もしかして攻略対象だったりする?


 あれ? でも、マヌエル君みたいな変わり種も攻略対象にいておかしくないよね。

 バラエティに富んでいるはずだもの。


 もうほんと、ちゃんと攻略対象の顔を思い出せないものかねー、私。



「ところで。少々妙な始まり方をしてしまったが、試験を始めてもよいかな?」


 カストさんの声はとっても心地いい。


「は、はいっ。よろしくお願いします」

「いや。そんな風に構えなくていいから。今回は珍しいケースだったので、本人に志望の確認とその動機を聞きたいと思ってね」


 し、志望動機!

 時間があったのに、体を鍛えることに夢中で試験対策はやっていなかった。

 馬鹿! 私の馬鹿!!

 でもここは熱意で押し切らねば!



「俺は反対だ! 見てみろコイツを。こんな貧弱なヤツが騎士になれると思うか?」


 私が口を開こうとしたら、先にマヌエル君がいきなり過激な発言をした。


 「反対」ですって?

 それはまあ、ドレス姿に大判ストールという出で立ちの私は、騎士を目指しているようには見えないかもですけど。


 でもでも!

 ここで言い負かされる訳にはいかない。



「私は――。私は、心の底からこの王立士官学園に入学したいと思っています。私が自分で考えて自分で決めたことなのです。士官学園の授業にもついていけるように自主的に練習もしました。そうだ。練習の成果を見ていただけますか?」


 なんか――なんかないかな。

 私が剣道の得意技を披露すれば、「おっ!」と見方を変えてくれるかもしれない。


 あー。特注した剣が出来上がっていればなー。


 見渡しても部屋には棒状の物がない。

 ――いや、あった!

 部屋の隅にモップが立てかけてある。


「すみません。これをお借りしますね」


 モップを手に取ってみると、ヘッド部分が重くて、ちょっと振りづらい。

 ここは、思い切ってヘッドを取って、長い柄だけを使わせてもらおう。

 壊しちゃうことになるけれど、これくらいは我が家でも弁償できるはず。


 思い切って、ブーツでヘッドの上を踏んづけた。

 想定では、バキッと折れるはずだったのに、ジーンと足が痛いだけに終わった。



「はん! モップを折ったぐらいで評価されると思ったのか? 出来もしなかったが」


 マヌエル君はそういうと、私からモップを奪って、チョンと蹴った。

 本当に、ヘッドの上をチョンと蹴っただけなのに、ポキンとヘッドが床に転がった。


「ふえぇー!」


 情けない声が出ちゃったけど、そう、それ!

 私もそれがしたかった。


 私の驚愕した様子に満足したのか、マヌエル君の機嫌は直ったみたいで、「ほら」と、細長い柄を私に向かって放った。


 こっからです。こっからなのですよ。


「で、では」


 うん。ちょっと太いけど、大丈夫。やれる。



 二人の試験官のちょうど真ん中あたりに立って、長い柄を頭上に持ち上げる。

 そして一気に正面に振り下ろすと、すかさず右横へ払って、仮想敵を想像しながら小手(こて)を決める。

 間を空けずに左の仮想敵の胴を打つ。


 ふふふ。決まった!

 どう? 結構やるでしょ?



「そんなんじゃ駄目だな」



 マヌエル君っ!!

 そんなっ。嘘でしょう!

 あれですよね。思った以上にすごくて驚いたから、それを隠すために、わざとそんな風にけなしているだけですよね?


「それでは、ここで手合わせ願えますか? 実技試験ということで」

「もちろんだ。本来ならばそういう選別をしているのだからな」


 私とマヌエル君が互いに睨み合って火花を散らしていると、カストさんから「待った」がかかった。


「まあまあ。二人とも落ち着いて。実技試験は平民が受けるものでしょう。君がこの学園に入りたい熱意は受け取りました。もう十分です。結果は三日後に通知します」



 ……へ? 何それ?

 結果って、まるで試験の合否を通知するみたいな言い方。


 え? ええっ!

 それって――不合格もあり得るっていうことですか!


 思わず膝から崩れ落ちた。



「こ、困ります。そんなの困ります!」


 私は、立ち上がるとストールを取って、二人に向き直った。



 一仕事終えたとばかりにお茶を飲んでいた二人は、揃って「ブーッ」とお茶を吹き出した。



「き、君!」

「お、おまっ、お前っ」


 いくらイケメンでも、私の命を脅かす行為は許さない。


「この通り、髪を結うという規則を守れないので、もう聖女学園には入学できません。私には士官学園に入学する道しか残されていないのです! これが私の決意です! どうか、どうか! 何卒貴校への入学をお認めください!」



 マヌエル君は目を剥いたまま、「あわわ」と言葉にならない何かを発していたけれど、カストさんはすぐに我に返って、「結果は三日後に通知します。本日はご苦労様でした」と締めくくった。






 嵐のような編入試験が終わり、生き地獄のような三日間が経った。


 私以上にソワソワする家族と共に、応接室で、今か今かと知らせを待っていた。



 その知らせは昼前に届いた。

 使用人が封書を両手で持ってきて、恭しく父親の前に置いた。

 

 父親は封を切ると、少し思案してから私の方へ封書をよこした。


「自分で開けてみなさい」

「は、はい」


 皆がゴクリと唾を飲み込む。

 中から書類を取り出し、目で文字を追う。



「ご、合格ですって!」


「よかったな」

「まあ!」

「おめでとうございます。お姉様!」


 合格! やったー! 合格だー!!




 これでダフネとは違う道を行ける。カッサンドラは本編から逸脱した。


 今日を境に、決定的に運命が分かれたんだ。

次話からいよいよ学園生活がスタートします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載を始めました‼︎
「名家の跡取り 〜2周目の人生は当主の座を取りにいきます〜」
異世界の侯爵令嬢マリレーンに転生するも、家を継いだ伯母夫婦に追放され、挙げ句の果てに事故死してしまった1周目の生き方を反省したマリレーンが、2周目では当主になることを決意して奮闘するお話しです。
ブクマ&☆☆☆☆☆評価よろしくお願いします‼︎

カドコミで『転生した私は幼い女伯爵』のコミカライズ連載中です‼︎
フォローよろしくお願いいたします‼︎

『転生した私は幼い女伯爵』コミック2巻巻発売中‼︎
お近くの書店またはamazon楽天紀伊國屋書店ヨドバシカメラ等でのご予約よろしくお願いします!
i1153128

『転生した私は幼い女伯爵』4巻発売中!
あらすじやイラストは詳細ページをご覧ください。
amazon 楽天紀伊國屋書店ヨドバシカメラなど
i1056363

『私が帰りたい場所は ~居場所をなくした令嬢が『溶けない氷像』と噂される領主様のもとで幸せになるまで~』
DREノベルスから2巻発売中!
購入はこちらから。amazon 楽天紀伊國屋書店ヨドバシカメラなど
i929017
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ