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愛しき姫君へ

「……だそうですよ。物騒なお話ですね」


 わたしはすっと絹糸のように美しくまっすぐ伸びるシルヴィアーナ様の銀色の髪の毛をブラシで丁寧に梳かしながら、先ほど耳にしたお話をできるだけ明るく努めて言ってみる。


 一本一本がキラキラと光っていて、本当に夜空を流れる星のように瞬いて見える。


「ですが、星夜祭を目前としたこの季節の街の手芸用品専門店へはぜひ行ってみたいものですね」


 きっとたくさんの品物ネタであふれているのでしょうね、とわたしは密かな願望を込めてぽつりと漏らす。


 それでもいつもと同様にシルヴィアーナ様は何も言わない。


 ただじっと一点を見つめ、口を閉ざしている。


 いつものことだ。


 その姿はまるで、よくできた作り物のお人形のようにも思える。


 それならばあまりにも繊細で美しすぎる造りだ。惚れ惚れしてしまう。


「ねぇ、シルヴィアーナ様……」


 何色が盗まれたのかは言わない。


 シルヴィアーナ様もなにか作るんですか?とも聞くことはない。


 きっとこの引きこもり姫様は、ここにいる限りはどんどん心を閉ざしていくのだろう。


 わたしは外の世界の話を繰り返す。


 すべて聞いたことがある程度のお話なのだけど。


 だけど、言いたいことは同じだ。


 あなたの世界はここだけじゃないのだと。


 そしていつかまた、彼女が心の底から笑ってくれる日が来ますようにと、願いを込めて。

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