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願いはたった一つだけ

『わたしはね、その状態のことをゾーンに入っている状態だと思うのよ』


『なにそれ?』


 不思議そうにするロジオンにそう語ったことがある。


『楽しい楽しいと思って書いているとね、気づいたらどっぷりその世界観に入り込んでいるときがあるのよ。音や感覚はわかるの。でも、ずっと遠いところにあって、わたしだけが別空間にいるような』


『そんな感覚で書いてるってこと?』


『うーん、うまくいえないんだけど、極限の集中状態で書いているときがあるのいうか。時間を忘れてただその物語の世界に入っているのよ』


『へぇ、すごいなぁ~僕にはわからない感覚だよ』


『あら、体を動かす人にほど体感できるものなのだと聞いたことがあるわよ。剣を使っているときとか、ないの?』


『ないよ! いかに逃げおおせるか、それしか考えてないんだから』


『さ、最低ね……』


 ロジオンが笑って、わたしも笑った。


 ねぇ、ロジオン……わたしね……

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