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レディ・カモミールの手記
彼女はお姫様だった
たくさんのお花に囲まれて
妖精たちに愛されて
そんな彼女はいつも輝いて見えた。
体が弱くてすぐに倒れてしまう僕は
どこにいても厄介がられる存在だった
そんな僕に
唯一笑いかけてくれてくれたのは
彼女だった。
お城を抜け出して
美味しいスコーンや
お茶を持ってきてくれる。
あいつには近づくな
絶対そう言われていたであろうのに
いつも元気を運んでくれた。
早く良くなりますように
そう共に祈ってくれる。
きっとこの笑顔がそばにあれば
僕は強くなれると信じていた。
『大好きだ』
その笑顔も笑い声も。
『大好きだ』
優しく僕の名を呼ぶ彼女も。
ふわりと香るカモミールの甘い香りも。
『大好きだ』
僕のお姫様。
『大好きだよ、愛しのシルヴィ』
そう言うと
いつも彼女は笑ってくれたんだ。




