第七話『自己紹介!』
「お、ようやくでてきたみたいだねー?きっぺいくんこっちだよー」
「あ、はーい!今行きます!」
応接室の扉を開けて外に出ると、廊下の少し先の方に居るテルラさんに声をかけられた。
どうやら俺の事を待ってくれていたらしい。これは仮入団の喜びを噛み締めている場合じゃ無かったな!
早くついて行かねば!
「ようやく来たか。じゃあしっかり着いてこいよー」
ふむ……歩いている方向から察するに、これは別館に向かっているかな?
応接室に入る前、何故か全ての施設を案内されたから少しだけ"星の知恵"クラン内の構造がわかるようになった。
よくゲームとかでマップを丸暗記したり、頭の中で地図を作ったりするのが好きだったから、一度説明されると割と明確に覚えてられるんだよなー俺。
なので、大体の検討は着くのだが……
まぁでも、会話するというのは大事なことである!
コミュニケーションの一環として一応聞いてみようかな?
「あの、これは今どこに向かってるんですか?」
「これはな……別館に向かってるんだ」
俺がそう問いかけると、それに対してうざいしたり顔をした団長が口を開く。
てっきりテルラさんが答えてくれるものと思っていたから、正直意外だな?
「ふむふむ……別館ですか。
確か、クランメンバーの宿屋なんですよね?」
「そうだよー。厳密に言うと宿屋兼食堂だけどね?
だから、そこでクランの皆に新人紹介とか食事会をしようって思ってるんだー!」
食事会……ということはご飯が?!
「もしかして食事できるんですか!」
「そんなにご飯が食べたかったのか……
うーむ、突然の来客だからわからんが……まぁでもお前の分くらいあるだろ」
「やった!」
「ふふっ、よかったねぇきっぺいくん!」
お腹ペコペコだからすごく嬉しいぜ!
やはりキャラバンでの移動中に貰った干し肉だけでは、現代日本人男性である俺の胃袋を満足させる事は出来なかったからな!
いや、まぁ塩気が効いてて、美味しいは美味しいんだけどね?
さすがに干し肉単品じゃあねぇ……?
ちょっとだけ足りないかなーって思うよね……?
……しかし、今から向かう先にはまだ見ぬ異世界のご飯あるのだ!
きっと、もりもりの森で見たようなうねうねする植物とか、蠢く何かを使ったトンデモ料理とかがあるに違いない……!
今まで感じたことの無いような食感に、爆発的な味!
きっと、俺に絶大なる"文化的衝撃"を与えくれる……!
あーーーー!
俺、とても気になります……!
「……よし、着いたぞ。ここだ」
俺がそんなことを考えお腹を鳴らしていると、ひとつの扉の前で団長が立ち止まりそう言った。
どうやらこの先に、まだ見ぬトンデモ料理達が待ち構えているようだ……!
「……お前、食事のことだけじゃなくて、ちゃんと自己紹介考えとけよ?」
「わ、分かってます!大丈夫ですよ!」
「ならいいんだがなぁ?」
そんな話をしながら、団長が扉に手をかけた。
そして、ギィ……と音を立てて開いたその先、適度に広いその空間を俺はワクワクしながら凝視する。
そこは、なんというか、一言でいうなら林間学校みたいな……
修学旅行とかで連れていかれる、集合宿泊施設みたいな感じになっているようであった。
一階が食堂になっており、そこから吹き抜けとなって見えている二階部分に個別に分けられた部屋が複数。
おそらくあれが団員の部屋だろうな?
食堂の席にはまばらに人が座っていて、星の知恵団員たちの溜まり場になっているようだ。
はえー……利便性が抜群だぁ……!
異世界の食事処って、俺としては剣とか盾とかが沢山飾ってあるイメージだったから意外だなぁ?
そんなことを考えて、俺は食事処の構造なんかに感心し辺りを見渡す。
すると、隣に居たテルラさんがニコニコ笑顔で口を開いた。
「ただいまぁ〜!
みんなの大好きなテルラさんが帰ってきたぞ〜?集まれ〜!」
その声を聞いてかは分からないが、「おっ、テルラさんだ!」と言い、ぞろぞろと団員の人達が集まってきた。
うぉう……すごい個性的……
特に瓜二つの世紀末ヒャッハー三人組が印象に残るな……?
「おーいお前らー。
新人を紹介するから今いない団員全員呼び集めてこい」
「フッ。新人か……楽しくなりそうだ」
「そんなとこでカッコつけてないで呼んでこい!オメェが一番速いだろうが!」
そう言って、部屋の柱に寄りかかって腕を組んでいる仮面の男の頭を叩き、仮面をはぎ取ろうとする団長。
「おい!やめろ……!仮面を取ろうとするのはやめろ!」
「じゃあ早く行ってこい!」
「わかったわかった……全く、諜報員をなんだと思ってるんだ……」
やれやれと首を振ったあと、突然シュッと消える仮面の男。そして、その10秒後にまた、シュッとあられた。
テレポート……!?仮面の人テレポートしたぞおい!?
「伝えてきたぞ。あと十分もすれば来るはずだ」
「そうか……助かるよ」
「フッ……これも俺の役目だ……気にするな」
柱に寄りかかっている仮面の男が、仮面に手を当ててそう言葉を発する。
うむ。俺がたまにやるイケボ(仮)と同じ空気感を感じる……気が合いそうな人である。
しかし団長はそんな仮面の男をガンスルーし、三人の世紀末ヒャッハーに向けて口を開いた。
仮面の人、可哀想に……
「ザルザ、ゴルゴ、トビヒサ、ちょっといいか?」
え……?トビヒサだけ名前浮いてね?
「おう久々だな、団長。なんだ?」
赤色のモヒカンが団長に言葉を返す。
うぉ……ダンディーな感じの声!これはイケおじだ!
……髪型がモヒカンじゃなかったらだけどな!
「なぁんだよ団長!
俺らとお前の仲じゃねぇか!なぁぁんでも言ってくれよォ!」
黄色のモヒカンは甲高い声で、一般世紀末ヒャッハーと……
「俺ぁ……団長の言うことを聞くだけでさぁ……」
そして、緑色のモヒカンは職人気質みたいな感じか。
うむ……個性の塊みたいな奴らだ!
これはきっとトンデモ戦闘員……
「いや、この新人がお腹空いてるらしいから、料理してやってくれ」
料理してやれ?
……
……
……え?この人達料理人?!
マジで?!戦闘員じゃなくて?!
人は見かけによらないと言うが、ほんとに見かけによらないな!?
いや……待てよ?
もしかして俺を料理してやれという意味か……?
そういう意味ならすごい納得できるな……?
「おぉ……!そういう事なら任せな!俺が絶品の料理を出してやるぜ!」
「ヒャッハァー!腕が鳴るぜェ!!!今日は宴会にするか!?」
「おぉ、いいな宴会。この際だから新人歓迎会も一緒にやるか!」
「これは大変な仕事になるな!急いで仕込みだおめぇら!」
「まぁ、いつもどうりに作るだけだな……簡単だ」
「宴会楽しみだぜェ!!!」
そういうと、ヒャッハーさん達は厨房に向かっていった。
どうやら今日は宴会をする事が決定したようで、張り切って仕込みをしている。
ガタイのいい男三人が並んで料理してるのすごい違和感があるけど、懇切丁寧な仕事っぷりだ……
俺も少しは自炊するから料理はできるんだけど、彼らにはとてもかないそうにない。
非の打ち所なんてひとつもない手際の良さである!
「じゃあ、料理ができたらこっちに来てくれ。お前らも紹介しなきゃいけないからな」
「「「了解っす」」」
そんなこんなで時間が流れ、ぞろぞろと残りの団員がやってきた。
ギルドにクエストを報告しに行ったねここさんも呼ばれたらしく、帰ってきたねここさんに俺が星の知恵に入ると言ったらすごく驚いていた。しっぽがぴんってなってて可愛かったなぁ……!
「……みんな集まったみたいだな」
団長は、各々好きなテーブル席に着いた団員を見渡しそう言った。
現在俺は団長と共に団員達の前に立たされており、全員の視線が俺に集まっているのを感じている只中である。
うん……目立つのがあまり得意ではない俺にとってはすごく辛いよ?
ていうか、みんなの前で自己紹介とか好きな人なんているのだろうか……?
いや、やはり伝説の種族"陽キャ"の奴らは喜んでやるんだろうか?!
そう考えると、俺と陽キャとの間に圧倒的な差を感じざるおえないな……
うーむ……陽キャ、なんとも恐ろしい種族だぁ……!
「今回みんなに紹介するのは、新たにうちの星の知恵に仮入団することになった新人だ。……ほら挨拶」
団長に背中を押されて、一歩前に出る。
変なことを考えていた俺は、突然の衝撃に倒れそうになりながらもピシッと姿勢を正した。
やっぱり第一印象がいちばん大事と言われる世の中、挨拶がどんなに嫌でもしっかりしないと……!
俺はゆっくりと呼吸をし心を落ち着かせ、スっと大きく息を吸い込み……
そして、口を開いた。
「えーこんにちは!
新たに星の知恵に仮入団させていただきます、田中吉平といいます!以後よろしくお願いします!」




