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第五話『クラン入団!?』

 

「はい止まってー。規則ですんで確認させてもらいますよ〜。

 ……まぁ星の知恵なら大丈夫でしょうけど」


 どこまでも続くような巨大な城壁に備え付けられた大きな門。


 そこそこの数のバス……この世界でいう"キャラバン"が並んで停車しているその場所で、ようやく目的の街にたどり着いた俺たちは絶賛足止めを食らっている最中だった。


「おう、手短に頼むぜ?

 私のキャラバンちゃんを整備してもらわねぇといけねぇからよォ!」


 どうやら異世界にも関所のような所があるらしく、麻薬等の危険物がないか調べるようになってるらしい。


 ここがしっかりしているのか、それとも他もこんな感じなのか……どうなんだろうな?

 そういえば街の名前すら知らないなぁ。


「きっぺいくんどうしたのー?

 なにか気になることでもあった?」


「……へ?

 あぁ、テルラさん!いや、そういえば街の名前知らないなぁーって今更思いまして……」


「この街の名前?この街はねー、ガルガンドって言うんだよー」


 俺がキャラバンの外を眺めながらボーとしていると、テルラさんが寄ってきて俺の疑問に答えてくれた。


 しかし、ガルガンドか。

 やっぱり聞いたことの無い名前だな。


 それに……


「ガルガンドって……何処の国なんだ?」


 そんな風に、俺はおもわず考えていた事を口走ってしまう。


 自分の口から出たその言葉を聞いて、とんでもない世間知らずだと思われてしまうのでは?と今更ながらに思い至りはっと顔を上げた。


「んー、えっとねー。フィーデルト合衆国っていう国の首都でね?

 様々な種族や集落が寄り集まって出来たところなんだ!」


 だけど、それは杞憂だったみたいだ。


 テルラさんの純新無垢な笑顔を見て、俺もにこにことしながら会話を続けていく。


「はぁー、首都だったんですね。

 道理でこんなに城壁が堅牢なわけだ」


「うんうん、この城壁ね!これはこの国の名所でね〜?

 "ガルガンドの堅牢壁"って呼ばれてるよ」


「へぇ〜、かっこいいですね?」


「そうだね〜?

 ここは、私たち冒険者をしっかりと評価してくれる国だから通称冒険者の国とも呼ばれてるんだよ〜」


 へぇー……やっぱり自分たちのクランがある街だからか詳しいなぁ?


 だが、それにしても様々な種族や集落……

 きっと異世界チックな種族が沢山なんだろうな!ワクワクだな!


「はい。確認終わりましたんでどうぞ。お仕事お疲れ様です星の知恵の皆さん」


「あぁ。ありがとな。そっちもおつかれさま」


「あざっす」


 門番さんに覚えられてるとか、やっぱ有名なんだな星の知恵?

 あれかな?地域密着型の組織とかなのかな?


 俺はそんなことを考えながら、見たことの無い異国の景色を見ようと窓に目線を向ける。


「よっしゃあ!じゃあ拠点の場所まで行くぞ!飛ばすぜぇええ!」


 しかし、ねここさんがそういった瞬間、アクセル全開で動き出すキャラバン。

 窓から見える門の先には賑やかな市場やレンガ造りの住宅街が広がっていて、明らかにこの速度では危ないだろう事が伺えた。


「えっちょっこれ大丈夫なんですか?」


「あーだいじょうぶだいじょうぶ。いつものことだからね〜」


『おい!星の知恵のお帰りだ!道あけろぉ!死ぬぞ!』


 どこからともなく大音量の怒声が響いてくる。


 その声を聞いた瞬間、さながらモーゼの十戒のように人が左右に割れた。小さな子供でさえも訓練された兵士の様に動いている。


 なんというか……驚きだなぁ……


 本当にいつもどうりなんだなぁって……


「いやーこれを見ると帰ってきたって感じがするでござるねー」


「そうだねー帰ってきたねー」


 うん、景色が綺麗でいいなぁ……





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あれから体感で5分くらいがたった。

 あの後キャラバンは何事もなく順調に進み、一行は星の知恵クランの拠点の前まで来ていた。


「おめぇらおりろー。

 私はキャラバンおいてから組合でクエスト報告してくるからよォ」


「はーい」

「よろしくでござる」


「おう任せな」


 ねここさんはクエスト報告に行くのか……俺も……


 いや、まぁとりあえずはみんなと降りるか。


「久しぶりにみんなと会うの楽しみだねー!」


「そうでござるなー、みんな元気してると……いや、冷静に考えてみれば別にそこまで時間たってなかったでござる」


「ははは〜!そのくらい楽しみってことだよー!」


「……」


 ふむどうしよう。街に着いた訳だが……


 ここからとりあえずギルドに行くだろ?

 そして、そこで冒険者か魔法使い?になるわけだな?


 ……で、そっからどうしよう。


 冒険者になったとして、俺はちゃんと冒険者としてやっていけるのか?

 戦い方も知らなければ魔法も使えないし、唯一使えた最初のバリア(仮)も出てこないし。


 それに、何よりこの世界の常識を全く知らない……


 この世界に来て1週間も経っていないのに、俺は既に何度も死にかけた。


 空中からの落下、未知の動植物、有り得ないほどに強い敵性生物。

 もりもりくまさんとであった時なんか、多分あと数秒でもねここさんが来るのが遅かったら死んでいたはずだ。


 ならば、どうする?


 強くならなければ、死ぬ?


 ……せめてもりもりくまさんぐらいの強さは持たないと、この世界で安心して生きて行けない気がする。


 とすれば、俺を導いてくれるものが必要?


 ───なら、それはきっと


「きっぺいくんどうしたの?そんな所で立ち止まって……?」


「テルラさん……俺を……」


「うん?な〜に?」


「俺を……




 このクランに入れてもらうことって出来ますか!」


「!?……それは……」


 俺がその言葉を口にした瞬間、空気が変わった。

 周りの者皆が俺を探るような、品定めをする様な鋭い視線を感じた。


 まりあちゃんはそんなに変わってなかったけど……


「だめ……ですか?」


 俺はその空気感を推し量って、少しだけ悲しくなり俯きながらも言葉を続ける。

 ここで引いてしまうと、きっと俺は後悔する気がしたからだ。


 すると、テルラさんがそんな俺を見て、神妙な面持ちでゆっくりと口を開いた。


「……きっぺいくん。うちはね、割と古参のクランなんだ」


「はい。聞きました。長年やってるクランだって」


「でもね、団員数は20人もいないの。

 なんでかわかる?」


「えっと……入団試験が難しいとかですか?」


 古参のクランってことは、おそらく街でも最高峰のクランとかなんだろう。

 たぶん、入団したい人が多すぎて逆に人数を抑えてるとか……?


「そうね……それもあるわ。

 でもね1番の理由はね。このクランの評判にあるのよ……」


「評判……?それってどうゆうーー」


 どうゆうことですか。


 そう言おうとした時、ダダっと数人の子供達が駆け寄ってきた。

 元気そうな5人くらいの子供で、皆一様に希望に満ちた綺麗な目をしている。


 その目線の先は星の知恵の皆に向けられていて、尊敬の念というかなんというか……

 子供たちの目には、そんな憧れのような感情が籠っているのを俺は感じ取った。


 そんな純粋無垢そうな子供が、星の知恵のみんなに近づいていき。


 そして……


「こんにちはー『イカれた星々』のみなさーんw笑みウザ男も久しぶりぃ!」


「『猪突猛進野郎(バカ)』だ〜!近寄ったら殺されるぞ~!気をつけろーwwww」


「やっぱ『変態の溜まり場』だな!気持ち悪っ!」


 目の前でそんなことを叫んで、ギャハギャハと嗤い星の知恵を取り囲んだ。


 ……前言撤回糞ガキだったみたいだ。


 しかし、星の知恵は何故こんなことを言われてるんだ?


 古参のクランなのに、子供たちに……

 というか何となく気になってはいたが、何故街にいる大人達からもひそひそと陰口を言われているんだ?


 うわぁ、ていうか星の知恵のみんなめっちゃ青筋たってる怖い……

 ……おっと?ここでミツルくんが動き出したな?


「き、君たちあまり大人をからかっちゃダメでござるよ〜?さぁ、あっちで遊びーー」


「うるせー!ドMマゾ変態!近寄んな!」


「……」


 あぁ……唯一子供たちとの仲をとりなそうとしてくれたミツルくんが、明後日の方を向いて黄昏てしまった……


 体がプルプルと震えてるよ、可哀想に……


 お……それを見かねたのか団長が動き出したぞ!

 これはガツンと言ってくれるか?


「君たちなぁ!

 そんなことを言ってはダメと親に習わなかったのか?だいたい」


「なんだよ笑みウザ男!」


「笑みウザッ……!なんだとこのガキ!?

 そんなこと言ってるとかっこいい大人になれないぞ!いいのか?」


「うるせーなぁ!置物団長は黙ってろよ!」


「グハァッ?!……置物……!?」


 クリーンヒットしたァ!置物というワードが確実に刺さったァ!

 なんということだ、一瞬にして2人もやられてしまった……!


 こんなにも心を抉ることが言えるなんてこの子供……もしかして悪魔か……?!


 ……ん?

 テルラさんが子供たちの後ろからゆっくりと近づいて行ってるな?一体何をするのだろう?


「ねぇ……君たちーーー」


「うわぁぁぁぁあああ!虐殺器官(ギャクサツキカン)だ!逃げろぉ!」


「あの殺戮者に捕まったら食われるぞ!」


「死にたくなぁいッ!助けてぇッ!」


「くそっ!まだ巨乳の魔女と話せてないのに……!殺戮者め……!」


 そう言って、嵐のようにクソガキ達は走り去って行った……

 残されたのは、満身創痍になった星の知恵メンバー。


「……ぐすん。いいもん。

 どうせ私は虐殺器官を持った殺戮者だもん……」


「ドMマゾ変態か……ははっ」


「置物……置物……」


 どうしよう?回復にしばらくかかりそうだなぁ?

 クラン入団の話とか、どうなるのかな……?


 ……あっ、そうだ。唯一無事っぽいまりあちゃんに聞いてみるか!


「まりあちゃん」


「くくく……なに?」


「これはどうすればいいのかな?」


「立ち直るまで待つしかないわね……ひひひ」


「そっかぁ……世間話でもする?」


「喋らないでいいなら聞くわ」


「じゃあ、自分の故郷の話を……」


 こうして、時間は過ぎていった……

 ちなみに故郷の話は割と盛り上がったと言っておこう。まぁまりあちゃんは終始無言であったが……




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


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