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第二話『異世界って最高!』

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「くくく……光よ。私の言葉を聞き入れ、無垢なる子を救いたまえ!『ミドルヒール』!ひッヒッヒ……!」


 俺は体に暖かいものを感じ目が覚める。

 意識を集中すると、傷が徐々に癒えていることがわかった。

 まだ目はぼやけているが、少ししたら治るのだろう。


 助かった……助かったが……


 だが、なんだ……この呪われそうな呪文は……


 いや、呪文自体は凄いいいこと言ってるんだけど言い方がね?

 おどろおどろしいんだよね。

 まぁ効力は凄まじいし、治るなら言うことはないんだが……


 ていうか、やっぱり魔法あるんだな!きっとこれ回復魔法とかだろ?かっけぇ……


 おっ目が慣れてきた。

 助けてくれた方にお礼言わないとな!どれどれ……?


「ッ!?!!!!!??!?!」


 ……俺は、目を疑った!その光景に目を疑ったのだ!

 何故ならば、今、俺の目の前には巨大な山がそびえ立っているからだッ!

 その山は、男ならば誰でも夢見る神の頂き山!

 幾多の男達が追い求め、探し求めた未開の地ッ!

 その名も……おっ……!おっ……!いや、言うまでもないだろう……!


 凄い、すごい状況だ……!

 これは、おそらく膝枕をされてるのだろう!

 後頭部に感じる柔らかさ、やばい、癖になりそうだ……!


 そして目の前には大きなお山!

 多分紫のローブのような上下一体型の服を来ている為、正確には分からないが、それでもかなり大きいことがわかる!

 もう死んでもいい!今世界で1番幸せを感じているだろう!

 ありがとう異世界ッ!大好き異世界ッ!


「くくく……おわったわよ。体調はどうかしら?」


 自分の身がこの状況にあるという喜びを噛み締めていると、突然上から声がかかった。

 声からしてさっき助けてくれた女性とは違うな?

 取り敢えず礼を言わなければ。


「あぁ。ありがとうございます。最高です!」


 最高です。色々と!


「くくく……それなら良かった……

 良くなったのなら早く膝からどいてくれると嬉しいわ……?」


「え、……はい…わかりましたぁ……」


 あぁ。終わった……幸せは途絶えた。

 だが、悲しんでもいられない。

 俺の命を救ってくれた人にもちゃんとお礼を言っていないのだから。


 俺は頭をあげると、改めてお礼を言うため巨乳ちゃんを見た。


 黒髪で腰くらいのロングヘア、だと思われる。

 というのも、ローブのフードを被っていて全体は見えなくなっているからだ。

 そして、目は前髪で隠れていて見えないが、その中でも見えている肌は驚く程白く綺麗で無表情。

 身長は普通くらいで少々猫背、紫色のローブが大変よく似合っていた。そしていちばん重要なのが凄まじい巨乳である事だ!

 これは何としてもお近付きにならねばなるまい!


 俺はまず自己紹介から始める。


「いやぁ!助けてくれてありがとうございます。自分は吉平と言います。貴方は?」


「くくく……私はデス・マリアン。《星の知恵》の治療班を任されているわ……」


 ほうほう。デス・マリアンちゃんか……

 聖母が闇堕ちしたみたいな名前だな?

 取り敢えず心ではまりあちゃんと呼ぼう!


 ……いや、なんて呼べばいいか聞いてみよう!


「マリアさんとお呼びしても?」


「くくく……馴れ馴れしいわね。でも、いいわよ。好きによんで頂戴……?」


 よし、言質とった!


「そうですか!ではまりあちゃんとお呼びしますね!ところでここは何処でしょうか?

 あと、自分を助けてくれた方にもお礼を言いたいのですが、何処にいますかね?」


「まりあちゃん……まぁ、いいわ。くくく……

 ネココなら、その辺にいると思うわ……分からないことはネココにきいて……くくく」


「そうですか。ありがとうございます。ではまた!」


「くくく……えぇ、またね……」


 まりあちゃんと呼ぶことを許されたという事実に、馬鹿みたいにニヤニヤしながら周りを見渡す。

 見てみると、俺が寝かされていたのは草原に引かれた布のようだった。

 近くには大型のバスの様な乗り物があり、そのバスを拭いている女性の姿が見受けられた。

 異世界にバス……?いや、まぁいいや。そんなことは後回しでいい!


「あれかな?」


 俺はその女性に近づいて行った!?


「なん……だと!?」


 あれは……まさか……


 あの、頭部についている三角形は!?


「け、けもみみ、だ……と?!」


 ……!?


 !?!?!?!?


「けもみみ、だ……と?!」


 俺は大事なことなので2回言った!

 だが、それも仕方がない!

 目の前にあるふわふわで綺麗なふたつの三角形を拝む。

 これで喜ばない方がおかしいだろ!


 だってけもみみだぞ!?獣耳っ娘だぞ?!

 異世界に行ったら会いたい存在No.1だぞ!?

 俺がどれ程までにけもみみが好きかというと、好きすぎてもういっその事けもみみを作ろうという考えになって、高校、大学共に生物とか化学とか遺伝子とかの専門校に行ったくらいだぞ!


 ……ぁ?


 なにか忘れてるような気がする。なんだ……?


「あの〜。どうされました?」


「?!……あぁ!すみません!

 ちょっと考え事を……って、けもみみちゃん!?」


 深い思考からぱっと目が覚める。

 いきなり声をかけられて固まるように肩を揺らしてそちらを見る。

 すると驚いたことに、何故か目の前にいたのだ!


「へ……?え、えっと……」


 そう、気がつけばそこには、ショートの髪にぱっちりとした青の瞳、頭からぴょこんと狼の耳が生えている、ぴっしりとしたスーツ姿の全体的に清潔的な印象を受ける女性がいた!

 この子は狼の耳が生えてるから狼獣人か?それとも人狼?


 それにしても……俺がけもみみちゃんの接近に気がつかないなんて!なんという失態……!

 思わずけもみみちゃんと呼んでしまったじゃないか!


 あぁほら……けもみみちゃんがびっくりしてる。

 目をぱちぱちさせて驚いてるよ……可愛い。

 おっと!そうだ、そんなことより謝らないと……


「いやー……すみません急に叫んじゃって。

 自分の住んでいたところでは、けもみみ……獣人?の方を見なかったもので珍しくてつい……」


「あ、あぁ……そういう事だったんですね!

 ……もしかして、不快な思いをされましたか?」


 俺の言葉を聞くと、彼女はぽんと手を叩いたあと悲しそうな目をしながらそう聞いてきた。


 ……何を言ってるんだろうこの子?

 けもみみを見て不快になる人なんていないのに!

 仮にもしそんな奴がいたらボッコボコにしてやるよォ!


 ……言葉でな!


「いえいえ、そんなことないですよ!

 むしろかわいい……いや、神秘的ですよ!」


「えぇ?そ、そんな神秘的だなんて……」


「いや、素晴らしいですよけもみみは!

 ……ところで、どうしてそんなことを?」


「獣人を見たことがないって言ったので、シュペルト国の方かと思いまして……」


 シュペルト国?聞いた事ないな。

 まぁ……それも当然か、異世界に来てるんだしな!

 俺は心の中で1人納得すると、自己紹介がまだだったことを思い出した。


「すみません。申し遅れました。自分、田中 吉平(たなか きっぺい)と申します。末永くよろしくお願いします!」


「ご丁寧にありがとうございます。

 私は星の知恵の副団長、ネココといいます!

 え、えっと……す、すえながく?よろしくお願いします?」


「えぇそりゃもうよろしくお願いします!

 ところで、シュペルト国ってのがどうかされたんですか?」


 それを聞いた途端少し悲しそうな目をしたねここさん。

 ……質問マズったか?

 くそっ!俺としたことが、けもみみ様を悲しませてしまうなんて!謝ろう、今すぐ謝ろう!


「すみません、聞いたらダメなことでしたか?」


「い、いえそんなことはないです。

 ……シュペルト国っていうのは、テトラ・シュペルト国の略称で、人族至上主義の国でありまして……

 その、獣人の奴隷なんかが未だにある国なんです……」


「はぁ!?奴隷?!けもみみ様を?!そんな国最低……!」


 おもわず口をついた本心に驚き目を丸くする俺とねここさん。


 あっやべ……思いっきり声に出ちゃった……

 引いてないかな?この目は引いてる目なのかな……?違うよね?


 ていうか、奴隷制度とかクソだなシュペルト国!

 お前のせいでもしかしたら引かれてるかもしれないんだけど?!

 くそう……滅んでしまえ!

 なんかくそしょうもない理由で潰えろッ!シュペ……ナントカ国!


「……ふふっ、面白い方ですね。吉平さん」


「え?なんか言いました?」


「いえ、なんでも。所で、お身体はもう大丈夫なんですか?」


 少し微笑んだ様子のねここさんは、なんと俺のことを心配してくれた。

 良かった……心配してくれるってことは、どうやら引かれてないみたいだ!


「えぇ、大丈夫です。おかげでもう元気もりもりですよ!

 ……っとそうだ。自分の命の危機を救って頂きありがとうございます!」


 俺はそういえば助けてもらったお礼を言いに来たことを思い出して、頭が地につくぐらいの深いお辞儀を繰り出す。

 あの恐ろしいもりもりくまさんに1人で立ち向かってくれたんだ……なんて天使なんだろうか……?


「別に全然いいですよー!

 ……でも、これからはあの森には入っちゃダメですよ?

 あそこはA級危険区域なんですから!

 私がいなかったら、命が危なかったんですからね!わかりましたか?」


 そう言って口をふくらませて怒るねここさんの姿を心のフィルムに収めながら、神に対しての怒りが募っていくのを感じる。


 A級危険区域とか……どんな危険なところに送りやがったんだ!

 神様的な存在の何かこのやろー!

 もしお前のせいだとしたら許さないかんなッ!


 ……それより何故そんなところにねここさんが来てるんだろうか?


「すみません……でも、ネココさんはどうしてそんな危ない所へ?」


 俺が問いかけると、ねここさんは少し悩んだ素振りを見せる。


「それはですねぇ……あーまぁ話してもいいかな?」


 ねここさんはそう言うと、ぽつぽつと理由を話し始めた。


「私は星の知恵っていうクランの団員なんですけど、そのクランの皆さんと、このキャラバンで行ったククル村でのクエストが終わった帰りにこの森の近くを通ったんです」


「ほうほう……」


「そしたらクランの団長が、何かがこの森に落ちていくのを見たっ!て言って聞かないんですよ……」


「クラン……団長……クエスト……!」


 いい響きだ……!


「あまりにも話を聞いてくれないものですから、一応調査をして帰ろうという運びになりまして、あそこにいた次第なんです!

 そして、重症の吉平さんをこのキャラバンに運んで治してもらってたんです!どうですか?わかりましたか?」


 今も優しい手つきで拭いているバスのようなものを指さして、説明してくれるねここさん。

 キャラバンが出てくるところだけすごく強調してたから、きっとこの乗り物が好きなんだろうな。


 しかし、このバスを魔改造したみたいな乗り物は、キャラバンって言うのか!

 なんか前方向にごついトゲ着いてたりするし、これでもりもりくまさんみたいな奴らと戦うのかな?


 だがそれよりもだ……クラン!……クエスト!

 やはりさっきも思ったが、いい響きだ……

 やっぱり冒険者ギルド的な奴があるのだろうか?!


「すみませんネココさん。自分、学がないものでして。

 ……その、クランというのは?」


「あ、すみません!説明しますね!

 クランって言うのは、ギルドの……って、そうか……ギルドも分かりませんよね?」


「はい、すみません……!」


「いえ、大丈夫です。

 じゃあちょっと長いですが、説明しますよ?

 ギルドっていうのは商業互助会、魔術同好会、冒険者組合の3つの施設を総称したものです。

 商業互助会は商業関係のこと、魔術同好会は魔法の研究などが主な活動です」


「そして、最後に我らが冒険者組合!

 ここは、全国各地の冒険者組合施設に持ち込まれるFからB級そしてA級、特A級、S級、特S級の9段階で分けられたクエストという名のお仕事を斡旋してくれる施設です!

 クエストの内容は、迷子の猫探しから、ドラゴン討伐まで、難易度によって様々なものがあります!ですが……冒険者組合ってどこにでもあると思ってました……ないところなんてあるんですねぇ……」


 めちゃくちゃ早口で説明してくれた……これはねここさんに少しオタクみを感じざるおえないな……!


 と、そんなことより……やばいかもな。

 無いところの方が珍しいなんて……そんなメジャー的な施設だったのか!

 これは誤魔化した方がいいかも……!


 ……うん、誤魔化す方向で行こう!


「へ、へ〜!そんな所なんですね!たいへんべんきょうになりました!次、クランについてお願いします!」


 俺がそう言って誤魔化すと、ねここさんは一欠片の疑いも無い様子で次の説明を始める。


「あっ、そうですね!クランの説明がまだでしたね?

 クランと言うのはですねぇ……!

 ……簡単に言うと志を共にする仲間ですね!

 各クランによって目指すものは当然違いますけど、ひとつ言えるのはクランごとの結束は堅いことが多いってことぐらいですかね?……まぁ、命を預けてたらそれは堅くなります!

 因みにうちのクラン、"星の知恵"は割と有名なんですよ!」


「へぇ〜そうなんですね!勉強になります!」


 握りこぶしを作り、力説してくれるねここさん。可愛い……!


 しかし、いやぁいいね!異世界してるね!

 特にネココさんが可愛いところが最高だった!

 話してる最中ずっと尻尾が揺れてて、ほんとに萌え死にそうだったね!


 ……ていうかやっぱりあるのかギルド!


 これは絶対に行かなければ!

 ……いや、正確に言うと俺が特に行きたいのは魔術同好会と冒険者組合だな!

 やっぱり異世界に来た以上は冒険者っていう職業に就くのと、魔法を使う、このふたつは外せないだろ!


 あ、最初のバリア(仮)はノーカンの方向で頼むわ……


「いえいえ。こんなことならなんでも聞いてくれて構いませんよ〜」


 俺の言葉に対し、笑顔で答えてくれるねここさん。

 これは今のうちに色々聞いた方がいいかもしれないな。

 というわけで、まずは……


「ここから一番近い町ってどこにありますかね?」


 これは聞いておかなければなるまい!

 さすがに町までは連れてってもらえないだろうし、そもそも助けてもらった上に連れてってもらうのは虫が良すぎるし……


「ここからですとエレノー町が近いですねー」


「エレノー町……歩いてどのぐらいの距離になりますかね?」


「歩いてですと、四日程度ですかねぇ……あれ?きっぺいさん?どうしました?」


 4日???????????????????


「へ、へぇー……4日ですか!ま、まぁ余裕かなっ!」


「あ、あの?白目むいてますけど大丈夫ですか?」


 大丈夫じゃないよ?


「い、いやいやぜん、ぜ、全然余裕ですよ!」


 食糧とかなくね?死ぬよ?


「何も持ってないように見えますが……ほんとに大丈夫ですか?」


「……いや?だいじゃうぶ……だと」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……次の町までお送りしましょうか?」


「oh……myGod……!(まじですか!)」


 神だ……!けもみみの神様だ……!

 おもわず考えてることと口に出す言葉が逆になってしまうぐらいには、俺にとっての神であるのだ!


「おーまいごっど?」


 首を傾げるねここさんが可愛い……!

 こんなのが見れるなんて異世界って最高だな!

 にしても、いつまでも見ていたくなる可愛さ……


 ……!?そうか!そうだったのか!

 俺は目を閉じひとつ深呼吸をする。


 ……よし決めたぞ!


「俺は貴方に一生ついて行きます!」


 この方について行くことこそが、俺の運命だったんだ!

 俺は手をねここさんに向けながら運命の御方の言葉を待つ。

 きっと、きっと笑顔でOKしてくれるはずだ!


 きっと……!


「え?それはちょっと……」


 き、嫌われた?!

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