2021/01/23
1111.
「みずき」
「ん?」
「私さ・・・小説を書いてみようと思うんだ」
「・・・は?」
1112.
「いやいや、何言ってんの。美々香なんかには無理だって」
「やってみなきゃ分からないだろん? ろん?」
「この作者だってねえ、思い付きで舞台設定作って、キャラ作って、クズい行動を取らせることによって話を・・・美々香でもできそうな気がしてきたわ」
「だろん?」
1113.
「できたぞ! この私の、この私による、この私のための小説が!」
「そんなもの自分の中だけにとどめておきなさいよ」
「まあ聞けよ。ためになるんだから」
「美々香のためにはなっても私のためにはならないんでしょ?」
1114.
「どのみち読み上げるから聞くことになるけどな」
「帰ってもいい?」
「あと5分で兄がコンビニから帰って来るぞ」
「暇だから聞いてあげるわ」
1115.
「私、佐藤祐子はこの春から高校生! 素敵な高校生活が、きっと私を待ってるんだ♪」
「なんで少女漫画風なのよ」
「少女が作ったからに決まってるだろう?」
「美々香が少女? 笑わせないで」
1116.
「いや女子高生なんだから少女でいいだろ。何言ってんだよ」
「それで、続きは?」
「いいだろう。では・・・あっ、もうこんな時間! 初日から遅刻だよ~! 食パン咥えて、行ってきま~す!」
「典型的すぎない?」
1117.
「これだから素人は。王者というのはな、王道を極めた者だけが到達するものなんだよ」
「それはベストセラーを作ってから言って?」
「ベストセラーは作るものではない。作ったものがベストセラーになるのだ」
「ワケわかんないこと言ってないで脳内お花畑ストーリーをどうぞ?」
1118.
「いたっ! 走ってたら人にぶつかっちゃった~! 大丈夫かい? あ、はい! (す、凄いイケメン! もしかして、これが運命の出会い・・・!?)」
「本当にお花畑にしてるんじゃないわよ」
「王者は花を愛すると聞くだろう?」
「聞いたことないわよそんなの」
1119.
「なんとか間に合ったぁ~。あ、さっきの人、まさか隣の席!? 本当に運命だ!」
「もう面倒だから早く結婚してくれないかしら」
「やあ。まさか隣の席だなんてね。 はっ、はい! ふつつか者ですがよろしくお願いします!」
「マジで結婚するみたいな挨拶してるんじゃないわよ」
1120.
「佐藤さん、何の部活に入るか決めた? わっ、私のことは祐子って呼んでください!」
「質問に答えなさいよ」
「それじゃあ祐子ちゃん、君は部活決めた? あっ、わっ、私はっ、あなたのファンクラブに入りたいです!」
「何言ってんのよこいつ」
1121.
「はっははは。けど僕は、たくさんのファンができるより君1人に愛されたいな」
「こいつも何言ってんのよ」
「えっ、えぇぇっ!? はっ、はいっ! もう、私の愛は無限大です!!」
「さっさと爆発して?」
1122.
「それじゃあもう、結婚を前提としたお付き合い、ということで良いのかな? はっ、はい! もちろんです!!」
「これ出会って何秒のできごとなの?」
「凄い! 入学初日にプロポーズされちゃった! 高校生活凄い!」
「いや凄いのはアンタたちだからね?」
1123.
「あのっ、わたしっ、あなたのためなら何でもできます!」
「マジでもう好きにしなさいよ」
「じゃあ早速だけど、君の家の財産でうちの借金を返済してくれないかな? ガ~~ン! 金目当てだったなんてショック~~~!!」
「お金って、人を現実に引き戻す力を持ってるわよね」