2021/01/17
1102.
「リフォームの間は、制度だけはホワイトな父さん会社の社宅で暮らすことになるよ」
「フッ、さすがは大手のひ孫会社の社畜だな」
「それは“さすが”なのか?」
「2人ともさっさと行くよ。まずは荷解きからだね」
1103.
「うっへぇ~~。結構キレイなもんだな」
「バブル時代に建てられたものだからね。年季は入ってきてるけどデザインにも金かけてる上等なもんだよ」
「ふーん。私も時代に恵まれたかったもんだね」
「時代に恵まれたからこそ大手は制度だけでもホワイトなんだよ。喜びな」
1104.
「部屋の中もキレイじゃん。あのボロアパートと同じ築35年とは思えないね」
「生まれて16年そこらしか経ってないお前がその有り様なのにな」
「あ?」
「2人とも何やってんだい。くだらないこと言ってないで荷解き始めるよ」
1105.
「えーこれ全部? 家具は用意されてるし2ヶ月でリフォーム終わるんだから最低限でよくない?」
「何がどこにあるか分からないじゃないか」
「拾い集めるのも大変だったんだぞ? この際だから全部新調すりゃよかったのに」
「そんな金ウチにはないよ。使えるものは使い続けな」
1106.
「でも家賃据え置きのままリフォームされるんだからたまには贅沢しようぜ?」
「リフォームってかほぼ建て直しに近いレベルだったけどな」
「アンタらの仕業だってバレてりゃ孫の代まで借金生活だったよ」
「でぇじょうぶだ。猫が地震起こしたなんて正直に言っても誰も信じねぇさ」
1107.
「あー、にしても荷解き面倒だな。みずきでも呼ぶか」
【もしもし? 引越しが終わって暇にでもなった?】
「そうなんだよ。引越し祝いパーティーやるから来ないか?」
【作業が全部終わってから呼んで頂戴】
1108.
「うげっ! まだ終わってないのバレてる!」
「当たり前だろ。クリスマスんとき騙して大掃除に巻き込んだの忘れたのかよ」
「それでもさぁ! 友達の引越しの手伝いぐらいするだろ!?」
「自分の日頃の行いを見直せよ」
1109.
「ふい~~っ、やっと終わったぜ」
「さすがに疲れたね。確かに贅沢したい気分だから晩ご飯はちょっと奮発しようかね」
「イヤッフーー! そうこなくっちゃな!」
「今日も晩飯が終わる頃に帰って来る親父が不憫だな」
1110.
「美々香、みずきちゃんを呼んでおきな」
「え、何で?」
「するんじゃないのかい。引越し祝いパーティー」
「あんなの作業に呼び出すための口実に決まってるだろ?」