2020/12/27
1034.
「メリー、クリスマース!」
パーン! パパパーン!
「クラッカーなんて鳴らして、苦情来たりしないんでしょうね」
「心配ない。苦情なら月に1回ぐらいは来る」
1035.
「いやーやっぱ焼きたてのチキンはウマいな!」
「スーパーで買ったやつの再加熱だけどな。それも、25日を過ぎた売れ残りで3割引きになったやつ」
「やかましい! オーブンで焼いた以上は焼きたてなんだ! 売れ残りでも味は変わらん!」
「ポジティブというか、何というか・・・」
1036.
ガツ。ガツガツガツガツ。
「にしても、クレセントちゃんがガッツいてるわね」
「こいつにも野生としての本能があるんだよ、きっと」
「にゃおーん!」
1037.
「よしみずき、何か一発芸やれよ」
「はぁ? 何よその男子みたいなノリ?」
「女でも! ノリたい時はある!」
「じゃあ美々香がノリなさいよ」
1038.
「フーーーーッ!!」
ドン! ドンドン!
「あ、やっべ隣から壁ドンきた。今日ぐらい良いだろボケが!」
「今日、12月27日だけどね」
1039.
「壁ドンとは! イケメンにのみ許される行為! どこの馬の骨とも知らない隣の高橋がやって良いことではない!」
「名前知ってるんじゃないの」
「ちなみに、高橋家の長男は一浪で受験勉強の真っ最中だ!」
「そこまで知ってて邪魔するんじゃないわよ」
1040.
「いいか、みずき。世の中はな、誰かを引きずり降ろさなきゃ自分が底辺に落ちるんだよ。この私が生き残るため、高橋には犠牲になってもらう!」
「相変わらずタチ悪ぃな。我が妹ながら」
「ですが、お兄さんの安定した人生のためにも犠牲は必要・・・」
「おい!? 崇妹!?」
1041.
「ダメだこいつら、完全に妹モードに入ってやがる」
「おい涼太、それだと世界中の妹がクズみたいな言い方だぞ。残念ながら俺らの妹だけだ」
「マジで残念だな・・・」
「高橋、もし二浪したら妹を恨んでもいいぞ・・・」
1042.
「よーし、シャンパンを開けるぞー! フーーーーッ!!」
♪~、♪♪♪♪♪~~
「高橋のヤツ、音楽かけて対抗してきやがった! あんにゃろう、ナメてんのか!」
「お互い様だろそんなの。というか絶対こっちが先だったし」
1043.
「まあいい! ちょうどクリスマスソングだしBGMに使ってやろう!」
「年末に1人で受験勉強してる時にクリスマスソングって・・・」
「それ以上はよせ。この敗北感を乗り越えた先に、受験での勝利があるんだ」
「で、大学デビューに失敗してまたクリスマスを1人で過ごすのね・・・」
1044.
「みずき、やめてやるんだ。それぐらい、本人も分かっているさ・・・」
「尚のこと切ないわね・・・」
「しょうがないさ、それが高橋という男なんだ。そんなことよりも私たちはクリスマスを満喫するぞ!」
「美々香ちゃんも何年後かに高橋みたいになりそうだな」
1045.
「ふい~~っ、食った食った~。後は寝るだけだな」
「年末独特のこの暇さは、嫌いじゃないぜ」
「そうですね、お兄さん」
「んじゃ、シメるか」