2020/12/26
1019.
「聖なる夜に、光が降り注ぐ」
「もうクリスマス過ぎちまってるけどな」
「しょうがないだろ平日だったんだから。冬休みにも入ったしレッツパーリィーー!」
「何がレッツパーリーだよ」
1020.
「いいか、兄よ。なぜ、クリスマスはあると思う」
「んなもん、宗教上の理由によるものだろ」
「それは信仰している者たちにのみ当てはまるものだ。私たちがクリスマスを導入したのは、とにかく騒ぐ理由が欲しかったからさ」
「また勝手なこと言いやがって」
1021.
「いいじゃないか別に。こうして、どのみち暇になりがちな年末にイベントができたんだから」
「大掃除っちゅう面倒臭いやつがあるけどな」
「そんな習慣は我が家にはない!」
「じゃあクリスマスっちゅうイベントも我が家から取っ払おうかね」
1022.
「か、母さん!」
「ほれ、クリスマスが欲しけりゃ掃除するんだね。涼太もだよ」
「待て! 大掃除はクリパよりも後にやるものだろう!」
「爺さんたちには、大掃除やんなかったらお年玉あげなくていいって言ってるからね。正月は大掃除よりも後。わかってるね?」
1023.
「くっ・・・! お年玉を人質に取るとは、卑怯な!」
「ほれ、クレセント。ちゃんと見張ってるんだよ」
「にゃおーん!」
「あいつ! 今度はミルクで買収されやがった! そんな金あるならクリパに回しやがれ!」
1024.
「これは必要経費だよ。掃除代だって我が家の立派な運営費さ」
「監視に金使ってんじゃねぇよ!」
「あんたらは小遣いよりもペナルティで動くタイプだろう? だからこっちに使う方が掃除が進むんだよ」
「ち・・・チクショーーー!!」
1025.
「あーくっそテレビの裏ヒドいな・・・ぶえっくしょん! あーホコリうぜぇ。窓開けたら寒くてクシャミ出るしなぁ」
「にゃー! にゃにゃー!」
「あ? どうせクシャミ出るなら換気しろ? 猫のクセに知った風なクチ聞いてんじゃねえ!」
「おや美々香、監督に逆らうつもりかい」
1026.
「コイツが、監督、だと・・・!? 母上! 監督が掃除をしておりません!」
「監督とはそういう仕事さ」
「母さんも掃除してないじゃないか!」
「アタシは監督の雇い主。掃除なんて不要だね」
1027.
「ナメやがって! こんなもの、こんなもの・・・!」
「おや、お年玉は要らないのかい」
「くっ、くおおぉぉぉぉぉぉ!!」
「さあさあ、働いた働いた」
1028.
「兄のやつ、よくもまあ黙々とできるもんだぜ。よし、こうなったら・・・」
【もしもし? もう準備はできたの?】
「ああ! もうバッチリだ! もうすぐ始めるから早く来い! お前の兄も忘れずにな!」
【分かったわ】
1029.
「で、来てみれば大掃除の真っ最中だと」
「言ってなかったか? 大掃除の準備がバッチリだから来いって言ったのが」
「今日クリスマスパーティーやるって言ってたわよね?」
「ああ! 大掃除の後でな!」
1030.
「おや、みずきちゃんに崇君、手伝いに来てくれたのかい? こりゃあ、お年玉を弾ませなきゃいけないねえ」
「おい! 話が違うじゃないか!」
「話が違うのはこっちの方なんだけど? でも、お母さんの頼みともあれば断れませんね」
「てめぇカネに釣られやがってこの!」
1031.
「タダ働きさせようとしといて、よく言うわね」
「ま、おばちゃんからお年玉もらえるんなら結果オーライだけどな」
「そうだみずき! お前んちの大掃除も手伝わせろ!」
「嫌よ。だって美々香、役に立たなさそうだもの」
1032.
「何だと! それが友に対して言うことか!」
「現に今、手が止まってるじゃないの」
「そ、それはお前も・・・何ッ!?」
「何やってんだい美々香。サボってるのはアンタだけだよ」
1033.
「ふい~っ、やっと終わったな」
「それはこっちのセリフよ。やっと、ここに来た本来の目的が始まるのね」
「よーしチキン焼けたぞー」
「私たちのクリスマスはこれからだ!」