2020/11/14
873.
「兄よ!」
「妹よ!」
「・・・せーのっ」
「「エビフライ!」」
874.
「エビフライ。それは、エビのフライ」
「当然のこと言うなよ」
「人はなぜ、それをエビフライと呼んだのか」
「エビのフライだからだろ」
875.
「最近さぁ、フリッターって言葉聞くじゃん?」
「昔から聞くけどな」
「あれってフライとどう違うんだ?」
「困った時のネット検索だろう」
876.
「フリッター、洋風天ぷらとも呼ばれる、は、油で作る料理の一種」
「“洋風天ぷら”ってのがそれっぽい感じするな」
「具にリンゴとかバナナを使うこともあるのと、衣に牛乳を混ぜるらしい」
「あ~・・・言われてみればマイルド感あるよな、フリッター」
877.
「砂糖を混ぜたり、バターで揚げることもあるってよ」
「そこまでくるとほとんどお菓子だな。フルーツ使ってる時点でそうだが」
「ま、具材によりけりっしょ」
「だな」
878.
「ちなみにあんたは、エビフライとフリッターどっち派?」
「俺か? 慣れ親しんでるし、エビフライかな」
「じゃあ今晩はフリッターにしてもらうぞ!」
「何のために聞いたんだよ」
879.
「母さーん」
「なんだい」
「まだ晩メシ決まってないっしょ? エビのフリッターにしてよ」
「フリッター? なんだいそれは」
880.
「衣に牛乳を混ぜたエビフライだ! あとパン粉は使わない」
「なんだいそれは。普通の天ぷらじゃダメなのかい?」
「ダメだ! 今日は猛烈に、フリッターを食べたいんだ!」
「うーん・・・やだね」
881.
「なぜだ! 可愛い娘の頼みが聞けないのか!」
「可愛くないから聞く必要なんてないね」
「なんだと! 自分の娘を可愛くないだと! それでも親か!」
「あんたの親だってことを、自分でも信じられないよ」
882.
「わかった! こうしよう! 今日フリッターを作ってくれたら可愛くなってやろう!」
「食べ物1つでどうやって可愛くなるのさ」
「可愛いは、作れる!」
「ワケのわからないことを言うんじゃないよ。だいたい、揚げ物なんて食べたら太っちまうじゃないか」
883.
「太らない! フリッターなら!」
「なんでそう言い切れるんだい」
「それは・・・ぎゅ、牛乳が入ってるからだ!」
「牛乳飲んで痩せるんなら苦労しないよ」
884.
「だが、今の私を見ろ! 太ってなどいないだろう!」
「細いだけじゃないか。もうちょっと肉付きをよくしたらどうだい」
「だったらフリッターを作ってくれよ!」
「牛乳で痩せちまうんなら、フリッターにはできないね」
885.
「なぜこうもフリッターに消極的なんだ!」
「牛乳がないからだよ。あんたが買って来るなら話は別だけどね」
「面倒だ! この際フツーの天ぷらでもいい!」
「猛烈にフリッターを食べたいんじゃなかったのかい」
886.
「というワケで、今日はエビの天ぷらだな!」
「それも無理だよ」
「なぜだ!!」
「エビもないからね。あんた、買い物行くのも面倒なんだろう? あるもので適当に作るから大人しく待ってるんだね」