2020/10/17
782.
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだ~れだっ」
「高校生にもなって何やってんのよ」
「キレイを保つおまじないさ」
「ツッコミが2つ浮かんだけどどっちを言ったらいい?」
783.
「両方とも言ってみろ! この完璧な理論を覆すことができるのならな!」
「ツッコミどころを増やさないで?」
「ならば私なんかと話さなければいいだろう!」
「ホントそうよね?」
784.
「では、出て来たツッコミどころに関して、1つ1つ検討していこうではないか」
「もはや今のセリフにさえツッコミを入れたいんだけど」
「キリがないだろう、諦めろ」
「そうするわ」
785.
「まず1つ目、言ってみろ」
「一番美しいのが誰かを鏡に聞くだけでキレイを保てるんなら、みんな苦労しないわよ」
「うむ、いかにもその通りだ。次」
「流すの早くない?」
786.
「とにかく、次だ。適当に発言してるから掘り下げなどできん」
「・・・次ね。美々香あんたさっき“キレイを保つため”って言ったけど、自分がキレイだとでも思ってるの?」
「それもごもっともな意見だ。だが、これには反論させてもらおう」
「ふーん? 言ってごらんなさいよ」
787.
「確かに、私は自分を美人だと思っちゃあいない」
「思ってたら凄いわよ」
「だが、キレイ度ゼロという訳でもないだろう」
「キレイ度って何なのよ・・・言わんとしてることは分かるけど」
788.
「つまりだ、絶世の美女をキレイ度100とした場合、私らにも1か2か、あわよくば10ぐらいはあるってこった」
「で、それが下がらないようにするのが“キレイを保つ”なのね」
「いかにも。だが、鏡に聞くだけで保てるもんじゃないのはさっき論破された通りだ」
「じゃあ意味ないじゃん」
789.
「そして最後のツッコミどころ、今しがた崩されたものを“完璧な理論”と言ったことについてだな」
「これこそ議論の余地ナシでしょ。とっくに崩れてるわよ」
「という訳で原点回帰だ。私がなぜ、一番美しいのは誰かを鏡に聞いたのか」
「何でなのよ」
790.
「いや、こーすれば鏡に命吹き込めるかなーって」
「できる訳ないでしょ。それこそどんな理論なのよ」
「こういう理論だ。鏡よ鏡! お前は生きている! だからもっと気合いを入れて、その魂を呼び覚ましてみろーー!!」
「根性論じゃん!」
791.
「おい! 鏡! 元気か! 返事をしろ!」
「ホント高校生にもなって何やってんの・・・」
「くっ・・・これならどうだ! 私の! 命を! お前に! 授ける! 受け取れぇぇぇぇっぇい!!!」
「もう、1人でやってなさいよ・・・」
792.
シーーン。
「・・・美々香?」
バタリ。
「・・・・・・え?」
793.
「え、ちょっ・・・美々香? って、私を驚かすための演技か」
シーーーーーン。
「1人でやってなさい、ホントに」
「・・・・・・ひゃっはー!」
794.
「飽きるの早くない? ・・・って、え!?」
「ん? どうしたみず・・・あれ、体が動かないんだが」
「何? 今度は腹話術? それとも鏡にスピーカーでも仕込んだ?」
「いや、みずき何言って・・・ってマジ天井しか見えねえ!」
795.
「はぁ? もう鏡になったフリなんていいから起きなさいよね」
「だからさっきから何言ってんだよ。まるで私が鏡になったみたいに」
「あなたこそ何言ってるのよ。いつまでそうしてるつもり?」
「は? だから・・・・・・え?」
796.
「・・・なあ、鏡を取って私の方に向けてくれないか?」
「はぁ? 別にいいけど」
「うおっ! みずきの顔ドアップ! きっつ!」
「ちょっと黙ってて?」
797.
「はい、これでどう? キレイが保てそうな気でもしてきた?」
「マジ、かよ・・・」
「・・・美々香?」
「鏡になっちまったーーーーー!!!」