2020/10/11
771.
「兄よ!」
「妹よ!」
「・・・せーのっ」
「「マッサージ!」」
772.
「駅前とかにマッサージってあるじゃん?」
「あるが、それがどうした」
「いや、あれって何なんだろーと思って」
「マッサージ屋はマッサージ屋だろ。気になるなら行ってみろよ」
773.
「え? でも私ら高校生だぞ? ハードル高くね?」
「まあな。てかなんで“私ら”なんだよ。俺には尚更ハードル高いだろ」
「でもオッサンとかもいるくね?」
「まあな。サラリーマンってのは疲れるんだろ。親父もたまに自分で肩揉んでるしな」
774.
「しっかし、よくオッサンの肩とか揉んでられるよな。自分の親父でもムリだわ」
「嫌な人は女性客しか来ない店でしか働かんと思うが、俺なら30分も1時間も人の体揉み続けるって時点でムリだな」
「確かに。マッサージ師自身は疲れないんかね」
「実際に行って聞いてみたらどうだ?」
775.
「なんで私が。女子高生って時点で珍しがられるだろ。親父送り込もうぜ」
「やめとけ。こないだのことで母さんまだ怒ってんだよ。トラブルの温床だ」
「じゃあ男のスタッフ指名させればよくね?」
「それでも受付は女の人だったりするからなあ・・・運悪く母さんに見られたら厄介だ」
776.
「じゃあどんすんだよ?」
「無難なのは、整体か。店名に”整体”って入ってりゃ大丈夫だろ」
「なんか一気にハードル上がったな。そういや整体とマッサージって何が違うんだ?」
「整体は骨の歪みを治すって感じで、マッサージは筋肉をほぐすって感じだな。俺の中のイメージでは」
777.
「ラッキーセブン!」
「話の腰を折るな」
「よく分からんが、人の体もみ続けるのがどんな気分か聞ければいいんだし、整体でもいっか」
「んじゃ、親父をけしかけに行くか」
778.
「親父」
「どうした、2人して」
「整体に行って、スタッフに人の体もみ続けるのがどんな気分か聞いてくれないか?」
「無理だ。金がない」
779.
「こういう時はな、“いつもお疲れさま”と言って整体に行く金を渡すもんだぞ」
「甘いな。自分の子供がそんな殊勝なことをすると思ってるのか?」
「思っとらん。だから、人の体を揉む気分? は、お前たちが俺の肩を揉めばいい」
「こういうのはプロに聞いてこそ意味があるんだよ」
780.
「とにかく、諦めろ。将来自分の金で行くことだな」
「じゃあ小遣いちょうだい」
「ふざけるな。毎日お気楽に過ごしておきながら整体など、片腹痛い」
「ちぇっ、けち」
781.
「おや、なに話してんだい3人で」
「あ、母さん。それがさ、親父が美人がいるマッサージ屋に行きたいらしくて、私らで止めようとしてたトコなんだよ」
「おい美々香、でたらめなことを言…」
ザーーーーーーー。