2020/09/26
721.
「兄よ!」
「妹よ!」
「せーのっ」
「「ポニーテール!」」
722.
「ん? なんだそのゲーム?」
「見ての通り、ポニテのアラビアンガールを操作するアクションゲームだ」
「あんたポニテ好きだったっけ?」
「髪型で選んでんじゃねぇよ。ツインテールとかゆるふわウェーブで同じゲームがあっても買ってるわ」
723.
「やってみるか?」
「いいだろう。ポニテの先導者と言われたこの私の力を見せてやろう」
「そのセリフはポニテにしてから言ってくれ」
「しょうがないだろ、あんたが今日そのゲームをやってるなんて知らなかったんだから」
724.
「うおっ、ポニテで刺して攻撃すんのかよ。エグいな」
「ゲームにそんなツッコミを入れても仕方ないだろう」
「おらっ、おらっ! 食らえっ! これがポニテの力だ!」
「実際、こんなめった刺しにされたらトラウマなってポニテ見れなくなりそうだな」
725.
「ダンスで変身! さすがポニテだぜ!」
「ポニテはみんなダンスで変身できるみたいな言い方をするな。その子は魔法が使えるっていう設定だ」
「魔法なのか! さすがポニテだぜ!」
「だからポニテなら魔法が使えるみたいな言い方はやめろ」
726.
「うおっ、ちょっ、ボスの攻撃エグっ!」
「回復しろ。さっき大量に買ったろ」
「イヤッフーー! やっぱポニテは最強だぜ!」
「回復してて何言ってんだよ」
727.
「いよっしゃー! ボス死んだー!」
「なんとか勝ったな」
「フッ、どんな敵が立ち塞がろうとも、ポニテを前には無力よ。ポニテは神なり。神こそがポニテなり。あんたがポニテのゲームをやってる理由が、分かった気がするよ」
「だから髪型で選んだ訳じゃねぇって言ってるだろ」
728.
「友よ!」
「何?」
「兄が、ポニテが好みだって言ってたぞ。ポニテが主人公のゲームをやってるぐらいだ!」
「そう? じゃあまずは、そのゲームからやってみようかしら。教えてちょうだい」
729.
「近頃はダウンロードで簡単に買えるから、簡単だな」
「2人してゲームか、珍しいな」
「ウチの兄と共通の話題のためらしい。このことは黙っていてくれ」
「別にいいけど」
730.
「よし、やってみろ!」
「へえ、確かに可愛いわね。でも胸も結構ある・・・やっぱりお兄さんもこっちか」
「甘いな。そんなものは素人向けのテコ入れに過ぎない。いいか、このゲームは、ポニテであることが全てだ。ポニテが正義なんだ」
「あなたのそのポニテへのこだわりは何なの」
731.
「んっ、ちょっ、かなり難しいわね、これ」
「まぁみずきはゲーム自体あんまりしないからな」
「おいみずき、ポニテのキャラを動かしといて死ぬんじゃないぞ」
「そもそもポニテ以外のキャラ動かせないでしょうこのゲーム」
732.
「ハァ、ハァ・・・やっと遺跡の入口ね」
「おい何バテてんだ。それでもポニテか?」
「私はポニテじゃないんだけど」
「美々香ちゃんの中でポニテが神格化されてるようだな」
733.
「へえ、ダンスで変身するのね。凝ってるわね」
「だろ? それはまほ・・・ポニテの力なんだぜ?」
「いま魔法って言おうとしたでしょ」
「違う! 全てはポニテの力だ! ポニテじゃなきゃその子は変身できないんだ!!」
734.
「わー! やられちゃった!」
「おい! 何やってんだ! ポニテにしておいて死ぬなど言語道断!」
「だからポニテ以外できないでしょう」
「それとこれとは別問題! ポニテに敗北の2文字はない!」
735.
「うおっと、電話だ。ん? 涼太?」
「あ、お兄さんなのね。ちょうど良かったわ。コツを教えてもらおうかしら」
「とりあえず出てみるか。・・・もしもし。あ? 美々香ちゃん? ああ、来てるぞ」
「なんだ? おつかいのパシリか?」
736.
「スピーカーにしろって? ほらよ」
【やっぱりそこにいたか。言っておくが、ポニテだから選んだ訳じゃないぞ。あとゲームのトークなどもせん。じゃあな】
「・・・美々香。私はどこにモチベーションを見出せばいいのかしら」
「そりゃあもう全てを、ゆらゆら揺れるポニーテールに」