2020/09/20
714.
「兄よ!」
「妹よ!」
「せーのっ」
「「かいわれ大根!」」
715.
「今日のキャベツの千切り、かいわれ大根入ってなかった?」
「あったな。母さんがそういうタイプのやつを買って来たらしいぞ。普段あんまり食べないからって」
「ま、キャベツだけなら普通に単体で買った方が安いからな」
「お前はザク切りしかできないけどな」
716.
「別にいいだろ、無理して自力で千切りにせんでも」
「まあな。手間や金をかけてでも千切りにする必要はないわな」
「ぶつ切りキャベツをゴマ油で食うとウマいんだよ」
「オッサンかお前は」
717.
「いや、だって、親父だってやってんじゃん?」
「だからオッサンなんだろうが。ちなみに俺はお酢派だ」
「お前もオッサンじゃんか」
「ウチはみんなオッサンだったんだよ。最後の砦は母さんだな」
718.
「てか、かいわれ大根はどうした」
「結局キャベツが主役になっちまったな」
「構わんさ。彼らもまた、忘れられた過去をお持ちなのだから・・・」
「だな。それに、いつもいつも料理の付け合わせのようにされて、決して主役にはなれないキャベツたち・・・」
719.
「ああ、キャベツよ、どうして君たちはキャベツなのか!」
「俺たちが“キャベツ”って呼んでるからだろ」
「あぁ! 可哀想なキャベツたち! 今日だけは、その身を私が愛すると誓おう!」
「今日だけかよ」
720.
「さすがに毎日キャベツだけってのはキツいだろ」
「お前の愛もその程度だってことだな。ま、今日1日だけでも頑張るこったな」
「いや、その・・・ちょっとぐらい肉を・・・」
「キャベツへの誓いはどうした」