2020/09/19
706.
「兄よ!」
「妹よ!」
「せーのっ」
「「スズメバチ!」」
707.
「夏の木々、晴天に舞う、」
「スズメバチ!」
「秋の風、布団に紛れる、」
「スズメバチ!」
708.
「昨日さぁ、干してた布団取り込もうとしたらスズメバチいてビビったわ」
「この時期はたまにあるわよね。アシナガさんが洋服の中にいるとかね」
「アシナガならまだしもスズメはな~、軽くトラウマなったぜ」
「種類によっては夜でも動くのもいるみたいだから、油断ならないわね」
709.
「向かいの家が植物育ててんのがなー。普通にサク越えてこっちまで来てっし」
「それもあるあるね。管理人さんに言ってみたら?」
「無駄無駄。動きゃぁしないし、向かいの家の奴だって応じるか怪しいね。“ハチなんて家に植物なくても出る”って言われてオシマイよ」
「悩みものねえ」
710.
「しっかし、植物育ててるトコは虫とか気にならんのかね」
「慣れてるんじゃないの? それか、自分たちだけはちゃっかり対策してるとか」
「それでこっちに飛んで来てたらいい迷惑なんだが」
「あなたも普段自分が周りにかけてる迷惑を考えたら?」
711.
「知るか。それとこれとは別問題だろう。私がスズメバチを呼んだワケじゃあるまいし」
「それはそうだけど、日頃の行いが悪いとどうしても、ね」
「全く。これだから物事の切り分けでできない連中は」
「あなたがそれを言うの・・・」
712.
「スズメバチの奴らも、私らなんかほっときゃいいのに何で突っかかって来るんかね」
「野生動物にそんなこと言っても仕方ないでしょ」
「私らは奴らを襲わない! そして奴らにとっても私らはメシにならない! 相互非干渉がベストではなかろうか!」
「だから動物に何言ってるのよ」
713.
「話が通じないとは、文字通り話にならんな」
「でも既に、人間によるハチの駆除だってやってるんだから、彼らからすれば私たちはもう天敵でしょ」
「違う! 奴らが私らを襲うから駆除する他ないのだ!」
「人間とハチが分かり合える未来は来ないわね、きっと」